マイボーム腺機能不全:眼科医が見ているものシリーズ その3 (511)
2011年 01月 23日
健康なマイボーム腺というのは、瞼を軽く押す(或いは押さなくても)と、瞼縁の開口部から透明なサラっとした液が流れてきます。このマイボーム腺機能が落ちてくることがありますが、長い間、この事についてあまり深く考える事はありませんでした。古典的な涙液膜の三層構造の最表層に油層があり、これが涙液の蒸発を防いでいて、その脂を分泌しているのがマイボーム腺・・・って認識だけでしたが、現在はドライアイの原因のひとつとしても注目されています。
マイボーム腺から分泌される脂質(それ以外のものも含むでしょうが・・)は、meibumと呼ばれています。先ず、このmeibumの状態でマイボーム腺開口部の状態がスコア化されています。(島崎分類)
グレード0:軽く押すと透明なmeibumがでてくるもの。
グレード1:軽く押すと出てくるが、濁ったmeibumが出てくる。
グレード2:中等度以上の強さで押せば、濁ったmeibumがでてくる
グレード3:強く押しても出てこない。
※グレード2以上が異常
このマイボーム腺は、眼瞼縁の皮膚粘膜移行部(MCJ)に開口しています。MGDが強くなれば、この部分に様々な異常所見が見られます。
①マイボーム腺開口部閉塞所見
1)capping :黄色い固まった脂質が帽子のようになっている所見

2)pouting / plugging :開口部の中に白っぽい固まった脂質(本当は脂質じゃなくて、角化組織?)が詰まっている所見
3)ridge : pluggingの間をつなぐような分泌物?
※最初は脂質の融点の上昇の結果cappingが見られるぐらいだが、進行すると脂質が減り、角化組織が増えて、meibumは練り歯磨き状の硬いものに変わっていく。ただ、必ずしもこれらの所見が高度だから、角膜上皮障害強いとは限らないのが気になるところ・・。
②マイボーム腺開口部周囲異常所見
1)眼瞼縁の血管拡張
2)粘膜皮膚移行部の前方(または後方移動?)

※私の乏しい観察によれば、上眼瞼縁では、マイボーム腺開口部はMCJより前方の皮膚側にあり、下眼瞼縁では、MCJとほぼ同じ位置に見られるが、MGDでは、MCJが前方移動し、マイボーム腺の開口部は瞼結膜上に位置している。特にその初期においては鼻側や耳側でその傾向が強い・・
※このMCJはマイボラインと呼ばれていて、マイボーム腺開口部との関連でグレード分類されている

グレード0:MCJが開口部より結膜側
グレード1:MCJの一部が開口部にかかっている
グレード2:MCJが開口部上にあり蛇行。
グレード3:MCJが開口部より皮膚側
このグレードはMGDの重症度と強い相関あり。
3)眼瞼縁不整
新しいMGDの診断基準では、不快感・異物感・乾燥感などの自覚症状があり、マイボーム腺開口部に脂が詰まったような所見があり、押しても簡単に出てこなくて、開口部付近に上記異常所見があれば、分泌減少型MGDと診断されます。ただ、中高年の患者さんを沢山診察していますと、このような所見があるものの、自覚症状に乏しい患者さんを数多くみかけます。マイボーム腺は高齢になれば、その機能は低下し、多少なりとも上記所見は加齢性変化の範囲内では・・とも考えています。所見が乏しいのに、愁訴が強い症例とその逆の症例があるのは何故?そのあたりの解明が待たれます。
MGDが愁訴と密接につながっている場合、当然治療が必要になります。
1)マイボーム腺閉塞の解除
※これについては、霰粒腫の時にも書きましたが、要するに温めること。温罨法なき現在は、ホットアイマスクかホットタオルで・・
2)瞼縁の清拭( Lid hygiene )
※これも霰粒腫の時に書きました。 参照:http://takeganka.exblog.jp/15336993/
アマゾンで、『PIPBABY 清浄綿 2枚入×50包』を見つけました。成分/日本薬局方脱脂綿、およびグルコン酸クロルヘキシジン0.02%溶液含有・・とあります。例えばこんなもので、眼に入らないようにして瞼縁を拭けばどうでしょう・・・。現時点では、責任もてませんが。
3)ドライアイ治療
そして、通常のドライアイ治療も行う。