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急性緑内障発作 (527)

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Efficacy of medical therapy in the initial management of acute primary angle closure in Asians Ramli N, Chai SM, Tan GS, et al. Singapore National Eye Centre and Singapore Eye Research Institute, Singapore
Eye 2010, 24: 1599-1602.


非常に興味深い論文をみつけました。折角なので、18ドル払って原文をダウンロードしました。高いなあ・・・何故、興味深いのか・・・
1、対象患者の90%以上が中国人。つまり、これを日本人の場合に置き換えて考えやすい。
2、普通の緑内障急性発作眼(APAC)をよく134例も集めたもの。2年で134例ということは、毎月5例ほど。毎週一人以上の急性発作が受診されている・・・。なんか凄いような、凄くないような。
3、ここがポイントですが保存的治療で、寛解に持ち込めるまでの詳細がわかる。


 どうやら、この論文の背景には、APACに前房穿刺laser iridoplastyが推奨されていることがあるのでしょうが、それらは安全な治療とは言い難い上に、しばしば研修医しかいない病院の時間外に飛び込みでやってくるAPAC患者に、先ず最初に行える治療ではない。だから、先ず最初に誰でもおこなえるこの first-line treatment についての詳細な検討は非常に有益だと思われます。

First-line treatment for acute angle-closure glaucoma 
1 アセタゾラミド500mg静脈内投与
2 アセタゾラミド250mgを4回/日内服
3 4%ピロカルピン点眼 4回/日,0.5%チモロール点眼2回/日
4 ステロイド(ベタメサゾンor プレドニゾロン)の3時間毎点眼
※2時間で寛解に持ち込めなければ、マニトール点滴、グリセオール内服、ラタノプロスト、ブリモニジン点眼などを追加。



結果:
平均年齢:63.7±9.6歳、眼圧は58±12.7mmHg、症状持続期間は2.8±3.2日

前述の薬物療法によるAPAC発作寛解率は,
・3 時間以内が28例(21.5%)
・6時間以内が58例(44.6%)
・12時間以内が99例(76.2%)
・24時間以内が116例(89.2%)
・24時間経過して、寛解に持ち込めていないのは、18例(10.8%)。
・最終的に寛解に持ち込めなかったのは、たった3例(2.2%)。
・48時間以内に寛解に持ち込めたのは131例(97.8%)

(APACは、週末・時間外・・・など、不都合な時間帯にやってきます。first-line treatmentは、我々が行う一般的な初期治療と殆ど同じです。最初の数時間で寛解に持ち込めないと焦ってしまいます。確かに3時間では約20%なので、この時点では80%は寛解していない。臨床現場での印象としてはこんなものだと思います。ただ、12時間、つまり一晩経過すれば76%が寛解している。これも実感してます。ただ、この時点でも4分の1の症例が寛解していない・・。日本なら、緊急手術(周辺虹彩切除術)の準備をしているか、既に行われていると可能性があります。ただ、24時間待てば、残りの35例中17例が寛解に、48時間で17例中14例が寛解になる。ただ、本当にこんなに待ってていいのか・・?最終的な視神経のダメージはどの程度なのか・・若干疑問が残りますが。)

 寛解に持ち込めなかった3例中2例は、受診まで症状が48時間続いていた?が、1例はたった3時間。眼圧は43~68。角膜濁っていて、レーザー虹彩切開術できず。72時間以内に緊急手術。また、この3眼は僚眼がIOL眼。
 また、寛解に持ち込むのに12時間以上かかった32例と12時間以内の99例を分析しているが、性別・年令が関係ないのは理解できますが、眼圧も症状が継続していた期間も関係なかった・・(筆者も驚いていましたが)。このあたりは、少し分析の仕方に問題はないのでしょうか・・。短期間に寛解に持ち込める症例というのは、発作が生じてから時間が経過していなくて、その為に虹彩のダメージが軽度で、虹彩括約筋のピロカルピンによる反応が残っているとか、周辺部虹彩前癒着も癒着というよりは接着に近い状態であるとか・・・と推定していましたが、その推定の根拠のなるようなデータは提示されていませんでした。
※他の論文でも受診が遅れたからと言って、寛解後の慢性期に眼圧上昇を来たすリスクは高くないと報告があるようです。

⇒とりあえず、眼圧を下げてピロカルピンを働かせる。これがAPACを寛解させるに必要な全て。
余力があれば、関連論文で面白そうなものがあればまた紹介します。

追伸
  眼球の大きさに比べて水晶体が大きいというアンバランスがAPAC発症の基本的な要因なのでしょうが、その中でも、少し水晶体厚が大きい、少しチン小帯が緩い、少しプラトー虹彩形状(虹彩根部の付着部形態・毛様突起の形状・・)など最終的に瞳孔ブロック・隅角閉塞を形成するに至った要因は、同じAPACでも微妙に異なっていて、それが、治療開始までの症状継続時間よりも、発作が寛解するかどうか、或いは寛解するのに要する時間を決める一番大きな要因ではないでしょうか。一番怪しいのは、チン小体の緩みだと睨んでますが・・・。ただ、このチン小体の緩みは測定困難?瞳孔ブロックの強さに変動がある・前房深度の左右差が大きいなどがヒントかも。
by takeuchi-ganka | 2011-04-03 11:31 | 緑内障 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka