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細菌性結膜炎:眼科医が見ているものシリーズ その5 (529)

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前回、ウイルス性結膜炎でしたので、次は細菌性結膜炎の話です。
1、ウイルス性結膜炎との違い
2、ライフステージと結膜炎
3、耐性菌について
以上の3点に分けて述べてみます。

1、ウイルス性結膜炎は治療薬がない代わりに、通常セルフリミテッドで、自然治癒します。ただ、伝染力は強く、患者さん一人一人はセルフリミテッドでも、感染拡大の危険があります。細菌性結膜炎も伝染力はあるものの、ウイルスほど強くない。ただ、一旦感染するとなかなか自然治癒せず、再燃・再発も多い。高齢者に多い眼瞼結膜炎のように何週間も続く場合もあります。ただ、ウイルスと異なり、抗菌剤点眼が奏功します。充血・浮腫が著明で濾胞や乳頭が見られないカタル性結膜炎に粘液膿性眼脂を伴う状態が細菌性結膜炎の典型例でしょうか。

2、結膜炎と言っても、子供と成人・老人では起炎菌が異なります。子供の場合は、鼻咽頭に常在するインフルエンザ菌・肺炎球菌がメインで、これらは感冒に伴って発症する事が多いので、実態は小児科や内科・耳鼻科で半数以上が治療されているのかもしれません。BLNARと呼ばれるベータラクタマーゼ非産生性アンピシリン耐性インフルエンザ菌による重症例の報告もあるようですが、全体的には、通常の使用する抗菌剤が有効で、耐性菌に悩まされる事はあまりないようです。
 成人の結膜炎ではコリネ・表皮ブ菌・レンサ・アクネ・黄色ブ菌などが主役となります。やがて多剤耐性コリネが問題になるかもしれませんが、現時点では、あまり治療に困る結膜炎はありません。
 高齢者の結膜炎では、黄色ブ菌・表皮ブ菌・レンサ球菌が主役で、ブ菌の半数以上が耐性菌です。子供の結膜炎と違って、慢性に経過し、自然治癒しません。高い確率で眼瞼炎を伴い、内・外眼角部に膿性眼脂を伴っているのが特徴です。ありふれた疾患ですが、意外と手強いのです。

眼瞼結膜炎
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 印象としては、約半数は通常のニューキノロン(NQ)点眼で治り、残り半数はなかなか治らないもの・時間がかかるが治るもの・クロラムフェニコールなどの点眼が奏功するもの・何も効かなくて、ミノサイクリン・アルベカシン・バンコマイシンなどが必要になるもの・・など様々です。ただ、現時点では(開業医レベルだから?)、ニューキノロン、セフメノキシム、+クロラムフェニコールで殆ど何とかなっています。耐性菌の問題もあり、あまり長期間点眼は続けたくないのですが、早めに中止すると必ず再発しますし、結構長期に使ったつもりでもしばしば再発はあります。また、時に涙小管炎・涙嚢炎を伴っている事もあるので、注意が必要です。

3、耐性菌については、既に触れましたが、BLNAR、コリネ、MRSA/Eなどがありますが、BLNARは、まだNQが効くようですし、これから問題になるかもしれないコリネも、NQはダメですが、ベストロンやエコリシンが有効だと聞いています。やはり、問題は、MRSAですが、前述の如く、NQ、CPの点眼がダメなら、自家調整薬となりますがミノマイ・アルベカシン・バンコマイシン点眼などが有効とされています。或いはもっと簡便で有効な方法として、洗眼があります。人工涙液を頻回点眼したり、通院ではやりにくいですが0.025%ヒビテン硼酸水20ml洗眼×2/日が有効と言われています。

※点眼は他の薬剤の投与方法(内服・点滴)と異なり、結膜・角膜表面において非常に高濃度の薬剤濃度を実現できます。頻回に点眼すれば、更にその効果は高まり、通常の薬剤感受性検査で耐性と判断される場合でも、点眼が有効な場合がしばしばあります。眼科医はこの点が救いでしょうし、今後更に高濃度(0.5⇒1.5%)のクラビット点眼が発売されるという話も聞きましたので、当分は、現行の抗菌剤の点眼(時に頻回点眼)と生食やヒビテンの洗眼による物理的な洗浄などを駆使すれば、何とか戦えそうな気がしています。結膜炎の話ですが・・・

興味深い論文をひとつ。
星最智ら:急性細菌性結膜炎の起炎菌と疫学.あたらしい眼科28(3):415-420,2011
6~88歳が対照。鼻腔保菌を加味して判断すると、黄ブ菌・肺炎球菌・インフルエンザ菌が原因の7割に・・。黄ブは1年中発生し、肺炎球菌・インフルエンザ菌は夏・冬に流行、また感冒率も高く(特にインフル)、小児との接触率も高い。0-6歳の肺炎球菌・インフルの保菌率は50%前後と高く、子供との接触歴の有無で起炎菌が異なる。夏・冬に多いのも、子供と接触回数が増えるから・・。小さな子供のくしゃみには要注意!?
by takeuchi-ganka | 2011-04-21 17:48 | 結膜炎 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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