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第22回日本緑内障学会 その5 (564)

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OCT関連の一般演題を聴くつもりでしたが、訳あってシンポジウム4へ。
やはり今回の学会の白眉?

シンポジウム4 閉塞隅角のメカニズムを考えるープラトー虹彩と第4のメカニズムー

Prevalence of plateau iris in primary angle closure suspects an ultrasound biomicroscopy study. Kumar RS, Baskaran M, Chew PT, Friedman DS, Handa S, Lavanya R, Sakata LM, Wong HT, Aung T. Ophthalmology. 2008 Mar;115(3):430-4.


                      ☆口演とは無関係なスライド(CACGと典型的プラトー虹彩)
第22回日本緑内障学会 その5 (564)_f0088231_16503170.jpg第22回日本緑内障学会 その5 (564)_f0088231_16473046.jpg











1,プラトー虹彩メカニズムと虹彩 広瀬文隆(神戸中央市民)
PACG・・、一時期、この問題は解決し、疑問も消えたかに思えましたが、最近また注目を集めています。
原発閉塞隅角症は、1,瞳孔ブロック 2,プラトー虹彩 3,水晶体因子 4,水晶体後方因子のマルチメカニズム。この中のプラトー虹彩について。これもPACS⇒PAC⇒PACGのように、プラトー虹彩形態⇒プラトー虹彩メカニズム⇒プラトー虹彩緑内障(症候群)となる??
※こんな症例、本当にそんなに多いのでしょうかね・・確かにUBMで見ればプラトー虹彩形態はよく見かけますが・・。

プラトー虹彩のUBM診断基準
①隅角閉塞 
②毛様体前方回旋 
③毛様溝消失 
④虹彩根部の急峻な立ち上がり 
⑤平坦な虹彩
これが4象限中2象限以上


これに当てはまらないが、プラトー虹彩と言いたい症例が沢山ある?通常のメカニズムとしては、毛様体の前方回旋、虹彩根部が前方へ押し出され、隅角が閉塞(特に暗所にて)。これに加えて、虹彩根部が厚く、通常散瞳によって断面積減少するが、プラトー虹彩ではその減少があまりない。上記①~⑤に加えて、この要素が重要?
また、診断の為にレーザー虹彩切開術は必要か?かつては除外診断的だったので、瞳孔ブロック解除は必須だったが・・。レーザー虹彩切開術の安全性の問題、長期成績の問題もあり、診断のためにレーザー虹彩切開術すべきではない。UBM/OCTで判断すべき。
※普通の眼でも、PEA+IOLすれば前房が深くなり隅角が広くなることは皆経験しているし、プラトー虹彩でも当然広がるでしょう。だから何でもPEA+IOLってのは・・・?そんな必要のある症例って稀なような気がしますが・・

2,指名討論1 国松志保(自治)
Kumar RS の『UBM診断基準:①隅角閉塞 ②毛様体前方回旋 ③毛様溝消失 ④虹彩根部の急峻な立ち上がり ⑤平坦な虹彩・・・これが4象限中2象限以上。』 この論文では、PACSの30%ぐらいにプラトー虹彩。最近の発表で、APACの僚眼37%・OAG19%・CACG35%もプラトー虹彩あった。3群間有意差なし?! (Mochizuki ) つまり、それほど普遍的にプラトー虹彩は存在している?
Comparison of the prevalence of plateau iris configurations between angle-closure glaucoma and open-angle glaucoma using ultrasound biomicroscopy. Mochizuki H, Takenaka J, Sugimoto Y, Takamatsu M, Kiuchi Y. J Glaucoma. 2011 Jun-Jul;20(5):315-8.
PACSをレーザー虹彩切開術後7年して67%にPAS発生した。隅角が開いて、機能的隅角閉塞が減少したにも関わらず・・・。これはプラトー虹彩が原因?
※個人的には、驚愕の結果

討論
※虹彩根部が厚いからレーザー虹彩切開術後、プラトー虹彩とあいまってPASが発生した?
※山本先生:かつて皆のコンセンサスは、レーザー虹彩切開術後PAS増えない・・だった。症例の背景が変わってきた?
※レーザー虹彩切開術後虹彩平坦化。もともと虹彩根部が厚い人なら、PASになりやすい?


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第22回日本緑内障学会 その5 (564)_f0088231_15142018.jpg『PACSをレーザー虹彩切開術後7年して67%にPAS発生』に対する感想
レーザー虹彩切開術の適応はどうだったのでしょうか。以前、東大の発表でレーザー虹彩切開術後PASが増加しない眼の診断は、しっかりPASのあるPAC。今回発表は?PACS。隅角の狭さの主因は瞳孔ブロックだったのでしょうか。laser trabeculoplasty 後の眼にしばしば散在するPASを認めますが(特に隅角の狭い眼で)、同様に、瞳孔ブロックが弱いのに隅角が狭い眼(プラトー虹彩形状の眼)にレーザー虹彩切開術したから、虹彩に炎症を引き起こして、軽微なPASができても不思議ではないような・・・?
20年以上前、私が医師になりたての頃、プラトー虹彩は殆どない(非常に少ない)と言われてました。かつてバイブルだった北澤先生の緑内障クリニックにも、『Plateau irisによる閉塞隅角緑内障はまれである。著者は800例を越える自験例中に1例を経験したにすぎない。』とあります。その後UBMが登場し、意外と多いよ・・・ということになったのですが、かつての判断が間違っているのではなく、臨床上問題になるプラトー虹彩は、事実少なかった。瞳孔ブロックがレーザー虹彩切開術によって解除されているにも関わらず、散瞳すれば隅角が閉塞して眼圧上昇をきたすような症例は、『幻のプラトー虹彩』と感じるほど稀な存在だった筈です。
※間違ってはいけないのは、例えば70%とか80%とかPASが広範囲にあれば、開放している部位は、二次的にプラトー虹彩形状となり、散瞳すると眼圧上昇することがありますが、これはあくまでCACGであって、プラトー虹彩とは異なります。
それが、UBMが出現してから、プラトー虹彩の地位が向上し?、大きな存在になってしまいましたが、現実的には、そんなに大きな問題でしょうか。私も長らくUBM検査外来を担当してきましたので、プラトー虹彩形状が多いのは理解していますが、単独で問題になるようなプラトー虹彩には殆ど遭遇していません。
隅角閉塞の原因として、瞳孔ブロック以外の要因があるのは理解出来ます。瞳孔ブロックがゼロだったとしても、水晶体の位置が前方にあるとか、水晶体が厚いとか、虹彩根部形状(厚さを含む)によっては、隅角は狭くなり、レーザー虹彩切開術しても、隅角があまり広がらないということもあるでしょう。
通常は、前房深度が浅くなるほど、瞳孔ブロックは強くなります。2.5mm以上あればほとんど瞳孔ブロックはゼロに近いでしょうか。それが2.0mmに近づいてくれば徐々に瞳孔ブロックは徐々に強まり、1.5mmにもなれば、急性発作の危険性が非常に高まりますが、前房深度が2.0mmあたりの眼は微妙な状態になります。前房は少し浅い、隅角も少し狭い。瞳孔ブロックは中途半端。だけど、既にPASが発生したりするのです。このような症例の中に、瞳孔ブロック機序をあまり介しない、臨床上問題となる隅角閉塞メカニズムが潜在し、それのひとつがプラトー虹彩なのでしょう。ただ、PACG(CACGを含めて)の原因の殆どは、瞳孔ブロックにあるような気がします。 
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3,原発閉塞隅角と第4のメカニズム(水晶体後方因子) 酒井寛(琉球)
実は十分には理解出来ませんでしたが・・・一応まとめますと・・、
強膜岬(SS)以外では、ゆるく結合している脈絡膜上腔。Uveal effusion (UE)ではここが開く。僅かなUEでも、SSを基点として、毛様体を前方回旋方向に作用するので、意外と隅角閉塞にとって大きな要因となっている。他の様々な一般的なPACの要因と重なって、隅角閉塞に至る?
※APACでもレーザー虹彩切開術後2時間をピークに出現している。耳側・下方に多い。

4,指名討論2 単一要因か複合要因か 山本哲也(岐阜)
 古典的メカニズム?
1,瞳孔ブロック⇒LI/PI
2,プラトー虹彩⇒LGP
3,水晶体関連因子⇒摘出
4,第4の因子⇒? 高浸透圧薬、消炎

北澤先生は、プラトー虹彩は殆どない・・と言われたが、それは、プラトー虹彩形状はあるが、それが主因の隅角閉塞はあまりないという話。古いデータだが、東大のレーザー虹彩切開術後の2年以上経過をみた研究では、PASは殆ど増えない。レーザー虹彩切開術後の眼圧調整も良好。PASが多かった時代(半分ぐらいは50%近いPAS ratio)だが、それでも94%は瞳孔ブロックを解除すれば、緑内障を安定させる事が出来た。閉塞隅角においては、瞳孔ブロックがやはり主原因。ただAPACの原因は、結構複雑。散瞳による虹彩容積増加やUEも要因であろうが、それでもメインじゃないのでは・・・・

討論
※UEは、潜在的に働いているレベル。治療対象ではない。ただレクトミーの危険性は知らしてくれる。
※UEがあれば、直接的にSSを基点として毛様体が前方回旋し、虹彩根部を押すだけじゃなく、チン小体が緩んで水晶体が厚くなったり、前方移動して瞳孔ブロックが更に強くなったりと、メカニズムは複雑。

症例検討
症例1:36歳女性 眼圧32(フルメディケーション、ピロも使用) ACD2.63 眼軸21 PASは?(※本来圧迫隅角鏡検査をしっかりやってPASの評価をやるべきでは・・。これは緑内障外来の基本だと思うのですが) プラトー虹彩と言われるが、広範囲にPASのあるCACGにしか見えない。LGPは無駄なだけで、ブレブ作るぐらいなら、PEA+IOL+GSLしかないような・・。東はレクトミー?LGPやって無効だったので、最終的にPEA+IOLのみ行って良好な経過らしい。その後PASが評価できて50-60%だったと。山本先生なら、水晶体触らない。迷わずレクトミー。
※術前にPASを評価してこそ、治療戦略が立てられるのであって、そこが問題のような・・。
※他眼は狭いが開放。何もしていない・・LGPしてもいい。

☆まず隅角は広いのか狭いのか。狭いとすればどの程度なのか。PASは何時の位置にあるのか、高さはどの程度なのか。TMを超えているのか。TMを越えるPASの広がりは(PAS ratio)。開放している部位のTMの色素沈着は・・・。隅角閉塞は機能的なものか、器質的なものか(圧迫隅角で判定)。この情報が、診断や治療方針の根拠になる筈で、最近、そこが曖昧な発表が多いような気がする・・・・。年のせいだろうか。

症例2:58歳男性 眼圧43 視野欠損あり。ACD1.96/2.36 隅角狭くて見えない。PEA+IOLしたが前房浅く1.89mm、ヤグして2.68となったが再び1.81に。悪性緑内障。コアビトじゃなく、フルビットでしょ。
※何度か経験しましたが、フルビットしないと解決しない症例が多かったと記憶しています。

症例3:52歳女性 PACG 24/42 PAS100%と言うことで、左眼PEA+IOL+GSL。術中前房形成できない。I/Aもできない・・。駆出性ではなさそう。悪性緑内障発生?コアビトして手術続行した。手術後UBMでCDあり。これは、手術中眼圧が下がり、CD強くなり、前房できなくなった(或いは灌流液が後方に回った・・)
第22回日本緑内障学会 その5 (564)_f0088231_15133711.jpg
by takeuchi-ganka | 2011-10-07 15:17 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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