眼瞼けいれん (647)
2012年 11月 21日

時々顔面の不随意運動を示す患者さんに遭遇します。眼科で一番多いのは、眼瞼ミオキミアと呼ばれるあまり病的意義のないものですが、それ以外の疾患の場合、重大な原因が隠れていることもあります。最終的には神経内科の先生に任せればいいのでしょうが、眼瞼の痙攣を伴う場合には、眼科を受診されることも多いので、一応勉強しておかなければ・・・と言う事で。
今回の勉強材料は、
1,飛松 省三(九州大学 大学院医学研究院脳研臨床神経生理):各種顔面の不随意運動と内科的治療(解説) Facial Nerve Research(0914-790X)23巻 Page7-10(2003.12)
2,眼科プラクティス 5これならわかる神経眼科
その他・・・
1,半側顔面痙攣(顔面痙攣):
頬部筋・口輪筋・広頸筋に及ぶが、前頭筋はほとんど侵されない。筋の収縮は同期し、開瞼困難なことも・・。原因は、顔面神経神経根部が脳底血管と接触し,顔面神経が異常興奮すると考えられている。中年以降の女性に多く、90%は眼輪筋から始まる(間歇的に収縮するピクピクする動き)。痙攣は会話や表情の変化などの顔面筋の随意運動や精神的なストレス、緊張、疲労、痙攣を意識することで増悪する。ボトックス治療の最も良い適応。効果は4ヶ月ほど持続。根治手術は神経血管減圧術で、満足度70%、有効率80~90%・・・。
2,ベル麻痺後顔面連合運動:閉瞼時に顔面筋が収縮する。ワニの涙もこのジャンルの病態。
3,本態性眼瞼痙攣 4,Meige症候群:
この眼瞼の異常は、神経学的にはジストニアと呼ばれるもので、その原因病巣として最も有力視されている部位は大脳基底核と考えられています。40歳以降の女性に多い。
両側眼瞼に左右対称性に筋収縮を起こすものは、眼瞼痙攣だが、口輪筋、顎部にまで異常運動が及び口顎ジストニアを伴うものはMeige症候群と呼ばれる。時にはドライアイと間違えられる事もあり、瞬目増加、「まぶしい」・「ショボショボする」・「まぶたの周りがピクピクする」などの症状で初発するが、重症化すると開瞼困難となり、日常生活に支障を来す。『目が乾く』・『目を開けているより閉じている方が楽』などと訴える。自然緩解はあまり期待できず、ボトックスの良い適応。
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Jankovic 評価スケール
重症度スコア
0:けいれんをまったく認めない(正常)
1:光,風,振動などの外部刺激によってのみけいれんが誘発される
2:軽度なけいれんを認める
3:けいれんを認め,他の顔面筋との差異が分かる
4:他の顔面筋のけいれんを伴う著明な眼瞼けいれんを認める
頻度スコア
0:けいれんをまったく認めない(正常)
1:通常より瞬きが多い(20 回/分以上の頻度)
2:瞬きが著明に増加し,1 秒程度の持続する軽度の攣縮を認める
3:1 秒以上の持続する攣縮が認められ,日常生活に支障を来しているが,50%以上は開瞼している
4:攣縮によりほとんど閉瞼状態のため,機能的には失明状態であり読書やテレビを見ることができない
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誘発試験(瞬目テスト)
1,軽瞬テスト:眉毛部分を動かさず、まばたきをゆっくりとリズミカルに行う。(眉毛部も動く強い開閉瞼になったり,けいれん様の瞬目過多が生じたり,瞬目そのものが不能であれば陽性)
2,速瞬テスト:できるだけ早くて軽いまばたきを10秒間行う。(健常者では10秒間に30回以上の随意瞬目が可能である)
3,強瞬テスト:強く目を閉じ、すばやく目を開ける動作を10回行う。(閉瞼後に瞼を開けることができなくなったり,強い顔面筋の攣縮がみられたら陽性)
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5,口・舌ジスキネジア:
口や舌のペチャペチャ・クチャクチャする運動。ドパミン受容体遮断薬が原因。中止すればいい・・らしい。高齢の患者さんで、時々見かけますが、薬剤に誘発されていた?
6,顔面チック:
顔、頸部、肩などの一定の筋群に比較的急激に短く早い、常同的、無目的で不規則に繰り返される不随意運動。5-10歳の特に男児に一時的に出現する事が多く、色んなチックがあるが、瞬目を繰り返す事も多く、しばしば眼科を受診されます。これに関しては経過観察のみ。思春期に軽快・消失することが殆ど。
7,Dilles de la Tourett症候群:
運動性チックと音声チックが長期間続くもの。初発は瞬目が多いらしい。
※http://square.umin.ac.jp/develop/tou/tourette.htm
8,口蓋ミオクローヌス:軟口蓋が繰り返し上下に動く不随意運動(見たことありません・・)
9,顔面ミオキミア:
顔面筋の小部分が不随意にゆっくりと繰り返し収縮し、しかも隣接する筋に伝わるため、あたかも虫が這ったようにみえるもの。特発性に生じるものの他に、脳幹部グリオーマ、多発性硬化症など顔面神経核付近に障害を及ぼす橋病変で生じることが多い。
10、咀嚼筋痙攣:歯ぎしり?
11、眼瞼ミオキミア:
実は、眼科で一番多く見かけるのはこれでしょう。通常片方の眼瞼がピクピクと痙攣します。疲れやストレスが原因とされていいます。コーヒー飲んでも悪化することもあるらしい。数日から数週間で治るらしいが、より長期に続く人も多い気がする。