閃輝暗点と片頭痛 (650)

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※昭和52年頃、予備校サボって昼寝した懐かしい場所・・・

眼科にも頭痛の患者さんが来られますが、眼科の特徴は、視覚異常を伴う頭痛ということでしょうか。基本的に専門外領域に踏み込みますので、若干信頼性が低下することは否めませんが・・・。ということで、今回閃輝暗点と片頭痛について勉強することにしました。

文献:
閃輝暗点と羞明の臨床 日本の眼科83:7 号(2012)
片頭痛の概念と診断* 特集/片頭痛治療の進歩 神経治療学: 109-124, 2009.


「・・・のみならず、僕の視野のうちに妙なものを見つけ出した。妙なものを?——と云ふのは絶えずまわっている半透明の歯車だつた。僕はこういう経験を前にも何度か持ち合せていた。歯車は次第に数を殖やし、半ば僕の視野を塞いでしまう、が、それも長いことではない、暫らくの後には消え失せる代りに今度は頭痛を感じはじめる、——それはいつも同じことだった。眼科の医者はこの錯覚(?)の為に度々僕に節煙を命じた。」

これは、有名な芥川龍之介の歯車の中の描写で、以前から典型的な閃輝暗点と言われています。日常診療で、よく遭遇するのは、このような典型的な閃輝暗点とはかなり異なる視覚異常の方が多い気がします。視野の一部がぎらつく・ゆれる・暗い・明るい・・(陽性視覚異常&陰性視覚異常)などでしょうか。また、閃輝暗点のみで頭痛のない場合、閃輝暗点を伴わず片頭痛のみの場合もあります。教科書的には前兆なしが8割だそうです。前兆は、視覚異常以外に、感覚障害や失語性言語障害が典型的前兆と呼ばれています。また片頭痛の半数は両側性で、『片頭痛』・・というネーミングにも問題ありそうです。片頭痛の全体像を把握する為には、芥川龍之介の描いた典型像は忘れたほうがいいのかも知れません。

原因については、非常に難しい話になりそうですが・・・
『皮質拡延性抑制cortical spreading depression: CSD』:初耳ですが、このCSDが片頭痛の原因と考えられているようです。左右どちらかの大脳半球皮質の後頭極(後頭葉の最後端)から3~5mm/分の速度で脳血流が低下した領域が前方に広がる現象・・・だそうで、それが引き金・原因。視覚野で生じたCSDが視覚異常を引き起こし、その後、三叉神経による硬膜の疼痛刺激を活性化し, 頭痛を引き起こす・・・のだと説明されています。これ以外の原因(説)もあるようですが、深みにはまりそうなので追求せずにおきます。

国際頭痛分類によればこのような分類になるようです。
#1.1前兆のない片頭痛
#1.2前兆のある片頭痛
典型的前兆に片頭痛を伴うもの
家族性片麻痺性片頭痛(FHM)
脳底型片頭痛(Basilar-type migraine)
#1.3小児周期性症候群(片頭痛に移行することが多いもの)
周期性嘔吐症
腹部片頭痛
小児良性発作性めまい
#1.4網膜片頭痛
※『単眼の視覚障害(閃輝,暗点,視覚消失など)の発作が片頭痛に伴って繰り返しおこる』事もあるらしい・・。

最後に、注意が必要なケースとして記載されているのは、
1)片側性閃輝暗点 ⇒一過性黒内障とうっ血乳頭で見られるblackout/grayoutに注意。
2)非典型的閃輝暗点 ①40 歳以降で発症 ②半盲などの陰性視覚現象が優位のとき ③前兆時間が長いか極端に短いとき ⇒後頭葉梗塞, 一過性脳虚血発作, 脳腫瘍, 動静脈奇形, 静脈洞血栓症, 血管炎, てんかんなど
3)中枢性羞明 ⇒後頭葉病変, トルコ鞍部の病変, 本態性眼瞼痙攣, 精神疾患などがあり,他の神経症状の合併を診る必要がある。
4)非典型的な頭痛 ⇒緊張性頭痛, 群発頭痛, 続発性頭痛

 このように片頭痛といっても、実に様々で、その対応は神経内科医にお任せするとして、この中で、眼科を受診される患者さん、前兆のある片頭痛・頭痛を伴わない閃輝暗点、そして網膜片頭痛(初耳・・)の患者さんが不利益を受けないような対応をすることでしょう。明らか片頭痛であれば、トリプタンを処方してもいいでしょうが、眼科医としては、まず、視覚異常の原因になるような眼科的異常の有無を確認して、その後は、神経内科か脳外科へ受診をすすめるべきだと考えます。
by takeuchi-ganka | 2012-12-01 04:58 | その他 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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