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第392回大阪眼科集談会 その2 (662)

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特別講演 期待される眼科遺伝子医療 村上晶 順天堂大学教授
難しい内容の講義で、少しフラフラに・・・
殆ど理解できず・・・メモを頼りにちょっと遺伝について勉強してみました。当然ですが、講演内容から大きく逸脱しています。

遺伝性疾患
1,染色体異常
2,単一遺伝子病
3,ミトコンドリア遺伝病
4,多因子疾患
5,エピジェネティック疾患

まず、単一遺伝子病の教訓的な症例から
0歳2ヶ月の症例。最初はchiari奇形(2型)で頭蓋内圧亢進して眼科受診。6歳時に上眼瞼腫瘤。摘出後、病理組織報告でびっくり。Basal cell epithelioma。腫瘍切除後、形成手術。14歳で下顎臼歯の腫れ・・Ameroblastoma。・・・・・・Gorlin症候群(常染色体優性遺伝)
難病情報センターの記述によれば『1960年Gorlin RJによって報告された発達上の奇形と遺伝性高発癌性を併せ持つ神経皮膚症候群である。別名母斑基底細胞癌症候群、基底細胞母斑症候群などとも呼ばれる。 発達上の奇形には手掌・足底皮膚小陥凹、二分肋骨ないし癒合肋骨、椎骨異常、顎骨嚢胞、大脳鎌石灰化があり、発癌には基底細胞癌、髄芽腫、卵巣腫瘍の発生 がよく知られている。またGorlin症候群では多量の放射線照射に伴う基底細胞癌の発症が知られており早期診断、早期治療が望ましいが、症状が全身にわたるため診療各科を回り診断が遅れる傾向がある。』
遺伝学的に総合的に判断する目がないと、確定診断が遅れる一例として・・・。ただ、一見複雑なこの疾患もPTCH1に責任遺伝子がある単一遺伝子病。
 正直に言うなら遺伝は苦手で、この分野から逃げ続けている一人です。遺伝病と言えば、21番染色体が1本多いダウン症候群が有名で、染色体異常と言われるものです。次が、ここで例に上がったような、一つの遺伝子によって決まる病気で、メンデル型の遺伝形式をとる単一遺伝子病(メンデル遺伝病)です。フォンレックリングハウゼン病、血友病などが有名です。それ以外に・・・


多因子疾患とは・・
現実の遺伝性疾患は、単一遺伝子の異常(メンデル遺伝病)であることは稀で、複数の遺伝子がその発症に関わっている事が多い。関わっている遺伝子が多くなれば、遺伝形式も複雑になります。身長の高さに関わる遺伝子が1個なら、両親が高身長なら子供も必ず高身長でしょうが、そんな傾向はあるものの、単純ではない事は事実として知っている筈です。ただ、例えば血圧にしろ、耐糖能にしろ、これに関わる遺伝子が多数あり、両親がそれぞれどの程度、その疾患になりやすい遺伝子を持っているかで、子供にその疾患になりやすい形質が受け継がれるか決まるようです。このなりやすさ(易罹患性)と環境要因によって発症すると考えられている疾患が多因子疾患で、神経管閉鎖不全、口唇口蓋裂、多指症、先天性幽門狭窄、先天性心疾患、Hirschsprung 病など多くの単発奇形性疾患がそう。白内障・緑内障・近視・加齢黄斑変性・糖尿病・・・・なども。この複雑な遺伝形式を解明するために・・

ゲノムワイド関連解析(genome-wide association study ; GWAS)
ヒトゲノム全体を相手に疾患との関連を解き明かすアプローチです。
『病気に罹患している集団と一般対照集団との間で遺伝情報(アレルの出現頻度など)の違いを検定し、病気の原因となる遺伝子や多型を見いだすことを、全ゲノム領域の各多型に対し行う方法。』理科研HPから
『多数の患者と対照者のサンプルを用いてゲノム全体を調べ, 患者群と対照群間の SNP の頻度に差がある領域を探し出し, 関連遺伝子を見つける方法』日本の眼科 81:12 号 (2010)から
※SNP:遺伝子の塩基配列が1カ所だけ違っている状態。人間の塩基配列は、99.9%同じだが、0.1%で配列が異なるようです。DNAにおいては、アデニン(A)・グアニン(G)・チミン(T)・シトシン(C)の4種類の塩基が約30億個。1000~2000個に1個の割合で、各個人によって異なる配列部分が存在し、一塩基多型(Single Nucleotide Polymorphism)と呼ぶ。個性は、SNPが原因らしい。この全てのSNPを明らかにする国際HapMap計画とマイクロアレイの価額破壊で、GWASは一気に進んだらしい・・。

※この分野のわかりやすい成果の例:C型肝炎に対する一般的な治療はインターフェロンαとリバビリンという薬剤の併用療法だが、何故日本人の4割近くが無効なのか。結果、ウイルスの問題ではなく、患者側の問題で、19番染色体のIL28B遺伝子が関わっている事が判明したのです。現在では、インターフェロン治療効果の予測評価の為に、IL28B遺伝子多型を測定するようになりました。
※糖尿病や心筋梗塞など・の「ありふれた病気(common disease)」への新たなアプローチにも応用されている。多くの疾患感受性遺伝子が見つかりつつある。当然緑内障(NTG)に対してもゲノムワイド解析は行われ、POAGではZP4,PLXDC2,TMTC2が、NTGでSRBD1,ELOVL5など・・・少しずつ見つかっているが、まだまだ道半ばのようですが・・・

更に次世代の解析方法として・・
次世代シーケンサー
『現在使われているいわゆる次世代シークエンサーの基本原理は、解析する対象とするDNAを細かく断片化し、それらを超並列に(同時に数千万個所を)解読することである。このため(超)並列シークエンサーとも呼ばれる。断片化したものの端から配列決定したものをリードという。ポリメラーゼの能力に限界があるため、次世代シークエンサーのリードは一般に短いが(本研究では50塩基のリードが多い)、改良とともに、だんだん長く読めるようになっている。』 理科研HPから・・(殆ど理解不能)

ゲノムワイド解析では、集団内で多くの人が持つ「多型」に着目した手法なので、頻度の少ない多様性を明らかにはできない。そこで、次世代シークエンサーを用いた、全ゲノムを解析する手法に期待。解析が進めば、緑内障においても、発症リスクの非常に高い場合、早期に介入が可能?そのうち、採血して、あなたは90%緑内障になるので、もう治療しておきましょうねとか、ラタノプロストは無効なタイプなので、別の点眼を使いましょうね・・・なんて時代が来るかも。

1.ゲノム:DNA塩基配列
2.エピゲノム:DNAメチル化・ヒストンアセチル化
3.トランスクリプトーム(mRNA):転写
4.プロテオーム(タンパク質)
5.メタボローム・フェノーム:代謝物・表現型

エピゲノム
同じ遺伝子情報(DNA)であっても、部位によって異なる細胞となり、異なる機能を示すのは、『DNAメチル化・ヒストンアセチル化』などの修飾が、DNAを制御している。エピゲノムがゲノム情報を制御している・・・らしい。
※わかりやすい簡潔な説明を見つけました。小児内科 (0385-6305)44巻10号 Page1712-1717(2012.10)から⇒ 『(1)エピゲノムとは、ゲノムを構成するDNAや染色体ヒストン蛋白質の化学修飾のことであり、エピゲノムのパターンにより遺伝子のON/OFFが決められている。(2)エピゲノムの異常は「先天性」疾患の原因となる。(3)さらに、エピゲノムはゲノムより、環境の影響を受けやすい。したがって、エピゲノム異常は「後天性」疾患の遺伝学的原因にもなる。(4)最近、ゲノムDNAの変異だけではなく、環境で誘導された親世代が獲得した異常なエピゲノムパターンが、次世代に遺伝することがいわれ出している。』
※例えば、癌抑制遺伝子がDNAのメチル化により働かなくなること(OFF)で引き起こされる癌があるようで、アザシチジンという抗癌剤は、脱メチル化剤として働く抗癌剤で、これにより癌抑制遺伝子を動かして(ON)治療するらしい・・。

エピジェネティクス
『DNA配列が変化しない、細胞分裂で伝達しうる遺伝子機構の変化』『DNAの塩基配列の変化を伴わずに,遺伝子の発現を調節する仕組みに基づいた遺伝学』・・後者の方がわかりやすい説明かな。ヒトゲノムの解読は終了したが、DNA メチル化やヒストン修飾は組織ごとに異なり,細胞内外の環境の影響で変化し,DNA の配列に刻まれた情報を的確に読み取るため,エピジェネティックなコードが重要な役割を果たす。エピゲノム解析の主流は,マイクロアレイからシークエンサーを用いた解析に・・
 ※予備知識がない上に、専門用語が多くて、動きが速い為、なかなか理解できないですが、染色体異常、メンデル遺伝病、あとはレーベル病の勉強の時にミトコンドリア遺伝病を知ったぐらいでしたが、多因子遺伝やエピジェネティクス。またゲノムワイド解析やエピゲノムなど見知らぬ言葉のオンパレードでノックアウト寸前。でも、いい勉強のきっかけを頂いたと思うことにしました。
by takeuchi-ganka | 2013-02-05 11:39 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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