再びRASについて  (687)

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@城北公園菖蒲園

 内科の知識は、遥か昔の学生時代の朧気な知識に遡るので、恐る恐る書き進めます。
腎臓において、レニン・アンジオテンシンというシステムがあり、血圧の調節に関わっています。腎臓の糸球体細胞由来のレニンが、アンギオテンシノーゲンをアンギオテンシンⅠに変換し、さらにACEによりアンギオテンシンⅡに変換されます。アンギオテンシンⅡはアンギオテンシンⅡ受容体に結合することで、血圧上昇に関わります。
 このシステムに働く高血圧治療薬として、直接的レニン阻害薬(DRI)、ACE阻害薬、そしてアンギオテンシンⅡ受容体阻害薬(ARB)があり、ARBは09年以降カルシウム拮抗薬を抜いて、降圧薬の第一選択薬(49.8%)となっています。またARBは、『血管収縮や心筋細胞の肥大をもたらすタイプ1(AT1受容体)に選択的に作用するため、臓器保護作用に優れるとされ、このことは国内外の数多くの大規模臨床試験で確認されている』・・ようです。眼科医として気になったのはDIRECTでは、アンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)カンデサルタン(ブロプレス)の糖尿病網膜症に対する発症予防と進展抑制効果が証明され、改善効果も確認された事です。
The Lancet, Volume 372, 1394 - 1402, 18 October 2008 Effect of candesartan on prevention (DIRECT-Prevent 1) and progression (DIRECT-Protect 1) of retinopathy in type 1 diabetes: randomised, placebo-controlled trials

 何故、高血圧の治療薬が臓器保護作用を有し、更には糖尿病網膜症の発症予防や伸展抑制に関わるのでしょう・・。アンジオテンシンII受容体には、タイプ1(ATR-1)とタイプ2(ATR-2)があります。高血圧治療薬に使われるARBは、ATR-1を選択的にブロックするようです。ATR-1は、血管収縮以外に、細胞増殖、炎症、血管新生などの作用もあり、これが、ARBが血圧を下げる以外に臓器保護や糖尿病網膜症発症予防・進行抑制に有効な理由と説明されています。
 少し話がそれますが、レニンは腎臓の糸球体細胞で分泌されますが、前駆物質のプロレニンは腎臓以外にも、副腎,網膜,胎盤,子宮,睾丸,顎下腺などで分泌され、血中濃度もレニンより遥かに濃度が高いそうです。このプロレニンがプロレニン受容体に出会うと、蓋が開く感じ(?)の非蛋白融解的レニン活性化が生じるようです。プロレニン受容体は、AT1-Rと同じように糖尿病網膜症の増殖膜にも発現していることが確認されています。専門的すぎて詳細はわかりませんが、糖尿病網膜症において、レニン・アンギオテンシン系がその発症・進行に深く関わっているからこそ、ARBが治療薬的に働くのでしょう。

 この非常に期待されている薬剤ARBは、年間4000億円規模の市場規模だそうで、そのひとつであるバルサルタンも1000億円以上の売り上げだそうです。つまり、こういった薬剤に関わる臨床研究は、眼科の世界にいると想像もできない利権が絡んでいるのでしょうか?所謂『臨床研究不正事件』の真相はどうなのでしょうか?不正はなかったのでしょうか?N社の社員が身分を隠して研究に参加していたようですが、お手伝いの枠をはみ出さなかったのでしょうか。RASに興味をいだいて、少し勉強していたら、こんなニュースに遭遇してしまいました。日本の臨床研究が、世界中から懐疑的な眼で見られることになった今回の事件の真相が一刻も早く明らかになることを祈っています。
by takeuchi-ganka | 2013-06-17 14:12 | 糖尿病網膜症 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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