慢性型のPAC (716)

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@中之島バラ園

f0088231_1661982.jpg 自分のクリニックで、久しぶりにPACの新患に出会った事から、ちょっと妄想が始まりました。この場合、PAC(原発隅角閉塞症)というのは、隅角にPAS(周辺虹彩前癒着)が発生し、眼圧がやや上昇しているが、視神経には明らかな緑内障性視神経萎縮が発生していない状態の眼の事です。(※患者さんは、既に、10年ほど緑内障点眼治療を受けておられました。)
PASといっても、テント状PASが散在するようなレベル(つまり、その成因が本当に浅前房・瞳孔ブロックが原因か定かでないようなもの)ではなく、今回のケースは、11:00-1:00を中心に、pigment band の高さの台形状のPAS(PAS ratioで0.2ぐらい・・)であり、明らかに、このまま放置すれば、(古い言い方をすれば)慢性型のPACGへ移行するタイプ。大学で、UBMの検査外来を担当していて感じる事ですが、このタイプの緑内障が少しずつ増加しているように感じています。
もう、何度も同じような話を仲間内でしていますが、私がはじめて緑内障外来に参加した昭和60年頃は、欧米に遅れること数年、ちょうどレーザー虹彩切開術(LI)が日本で普及し始めた時期(図)です。
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それ以前、瞳孔ブロック解除の手段は、周辺虹彩切除術(PI)しかなく、前房が浅いからとか、隅角に少しPASが出始めたから・・・という理由だけで手術には踏み切れなかったようで、緑内障外来には、瞳孔ブロックが解除されないまま慢性型に移行した閉塞隅角緑内障を沢山見ることができました。
この時期に、隅角鏡検査の重要性を仕込まれた気がします。PASの高さと範囲を把握し、眼圧レベルとGONの程度を勘案して、治療戦略を立てるのです。

1,瞳孔ブロックが解除されていない場合、解除するかどうか。
2,眼圧下降は点眼だけで十分か?
3,手術が必要ならどのような手技?
①Laser gonioplasty(LGP)
②隅角癒着解離術(GSL)
③GSL+PEA+IOL
④トラベクレクトミー
⑤トラベクロトミー

1,先ず、瞳孔ブロックを解除するかどうかですが、これは話せば長くなりますが、例えばPASが90%もあれば、既に、瞳孔ブロックは軽微な事が多くて、実は解除する必要があまりなく、PASがゼロに近くても強い瞳孔ブロックがあれば、解除しなければ、急性発作に移行することもあります。つまりPASの程度が瞳孔ブロック解除の基準にはならないのです。
2,眼圧下降を点眼だけでいいのかどうかは、もともと眼圧に対して脆弱な視神経のNTGと異なり、普通の視神経と考えられるので、基本的にはそれほど低い眼圧を目標にしなくても大丈夫な筈?それでも、視野が悪化するようなら手術が必要になります。
3,手技については、散々議論された後、GSL+PEA+IOLが最も安全かつ有効で、術後適宜LGPすればいい。それでもダメならレクトミー。

こんな風にして、何とか解決をみた原発閉塞隅角緑内障問題ですが、無節操に適応を広げ、危険性をかえりみずレーザー虹彩切開術が多数行われた弊害でしょうが、レーザー虹彩切開術後の水庖性角膜症が問題となり、徐々にレーザー虹彩切開術の危険性が叫ばれ、適応が狭くなってきました。何故か日本においてだけですが・・・・
そして、今、昭和60年あたりと逆の現象が起きているような気がしています。隅角が狭いというだけで、良好な視力の患者さんに白内障手術するのは、レーザー虹彩切開術より敷居が高く、徐々に瞳孔ブロックが解除されない狭隅角眼が増えつつある・・・?ここで危惧する問題が2つあります。
1,急性発作が増える
2,慢性型のPACが増える
統計をとった訳じゃないですが・・・・。ただ、『慢性型のPAC』については、先日遭遇した患者さんのように、診断さえまともにされない事が多いのが現状のような気がしています(これについては、未熟な私だけじゃなく、尊敬しているある有名な緑内障専門家も同意見でありました)。
POAGやSOAGとして扱われて、不利益を被ったり、診断がつかないものの、白内障手術が行われて予期せず解決してしまったり・・・・妄想は続く。
by takeuchi-ganka | 2013-10-17 16:12 | 緑内障 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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