アゾルガ®発売記念講演 (735)
2014年 02月 09日

もうすぐ春かなあ・・・
Alcon GLAUCOMA 20YEARS CELEBRATION
大阪府 アゾルガ®発売記念講演
1,大阪大学緑内障外来における配合剤レシピ 松下賢治先生
大学病院なので、NTGよりPOAGの比率が高く、多剤併用症例が多い。当然配合剤の出番は多くなっているようです。アゾルガはpHが涙液に近くて使いやすい・・。
2,緑内障早期診断のミニマムエッセンス 大鳥安正先生
診断のポイント:1、左右差に注意。CDRが0.2以上差があるのは、0.1%以下。2,リムは厚い順にISNT 3,血管屈曲部位(陥凹底) 4,乳頭の大きさ 5,NFLD 6,DH(これがあれば75%緑内障)
OCTは有用だが、白内障があれば信号強度が下り、信頼性も低下するし、近視が強くても信頼性落ちる。解析結果を鵜呑みしない。生データを見て判断すべきだと・・
3,緑内障診療の進め方 白土城照先生
やぱり今回も非常に為になる話でした。この話のためだけでも、本当に行って良かった。30年ぐらい前は、苦手なタイプであった先生ですが、最近は講演内容が素晴らしくて、一言も聞き漏らしたくない・・・と感じてます。まあ、いっぱい聞き漏らしてますが・・・
1日に100人以上緑内障患者さんばかりの診察という極めて特殊なケース紹介でしたが・・・・。先ず、問診して、細隙灯顕微鏡検査、この最初の時点で隅角鏡が入ります。どこぞの緑内障外来の人間に聞かせてやりたい隅角鏡の重要度。次に眼底検査・・といっても、倒像鏡でdiscの状態を確認する程度?で、視野検査へ。ここではスクリーニング目的なので、FDT N30F/マトリックス 24-2を。スクリーニングには、通常の30-2の閾値検査より優秀らしい。最後に眼底検査とOCTして、再度診察へ。本気の隅角鏡もこの時に・・・。眼圧でさえ、右⇒左と測ってもう一度右を測って、確認するらしい。
※何だか、自分と比較するのは、失礼ですが、隅角鏡の重要度といい、眼圧を右左右・・・と確認作業をするあたり、似ていて安心。似ているというより、以前私が講演で聞いて真似しているのかな・・・。
※前房深度が普通でも、内容が清明でも隅角鏡は必ず入れる。入れなければわからない重要な所見はたくさんあると・・・。nodule(ぶどう膜炎),線維柱帯の色素の多寡(ポスナー)、毛様体帯の幅(外傷の既往)・・など重要な所見は数知れず。
※紹介患者で、見逃しが多いベスト3は、PAC、外傷の既往、ぶどう膜炎。
※視神経で緑内障を疑い、高価な器械を使って診断することばかりに注意が払われているが、隅角鏡の重要度を再確認。緑内障を診断するためだけなら、OCTなんかなくても大丈夫。
次にOCTの話。
本当に早期診断可能なのか。実は意外と役立たず・・・という話。OCTで異常判定される緑内障でないケースは多い。以前ハンフリー視野が登場した時に、ハンフリーが指摘した異常所見を否定できるだけの診断力を持たない医療機関で、ハンフリー緑内障が増加したように、OCTが緑内障と診断した時には、以前にも増して、それを否定できるだけの診断能力を持たなければ、CCT緑内障が闊歩するかもしれない・・・。
神経線維の数 ≠ RNFL厚
神経節細胞数 ≠ GCL厚
であることを理解しておく必要がある。例えばRNFL厚が正常な厚み100%の時は、流石に視野が悪いケースは殆どないが、50%ぐらいの厚みの場合、必ず視野が悪いとは限らない。GCLの厚みについても同様。OCTのデータから視野データを予測することは不可能だと。
OCTは確かに進化して、特異度・感度ともに高くなったが、陽性的中率というのは、実は25%程度しかない。つまり、疑陽性を作りやすい・・・罪作りなツール。加えて、進行の有無を検出能力も低い。緑内障の診断、さらにその進行の有無に関して、OCTは頼りにならない。緑内障の診断能力があって、OCTを利用するのはいいが、その逆は超危険。基本は、視野と乳頭所見(写真)だと・・。ものすごく納得。
無治療で最低3回眼圧測定(ベースライン)。点眼開始後も、片眼トライアルを必ずやる。漫然と多剤併用するのではなく、点眼による眼圧下降効果を確認する作業が大切。ハンフリー視野も30-2と10-2を交互行う。この10-2に多用にも大賛成です。ここ数年10-2の重要度を格上げしています。30-2で正常な緑内障をpreperimetric glaucomaなどと呼ぶらしいが、そう呼ぶ前に10-2をやってみるべき。
緑内障点眼の種類
1.β遮断剤(チモプトール、ミケラン・・・・)
2.副交感神経刺激剤(ピロカルピン)
3.炭酸脱水酸素阻害薬(CAI:エイゾプト・トルソプト)
4.α1/β遮断剤(ニプラジロール)
5.α2刺激剤(アイファガン(ブリモニジン))
6.α1遮断剤(デタントール(ブナゾシン))
7.プロスタグランジン製剤(キサラタン、トラバタンズ・・・)
8.交感神経刺激剤(ジピベフリン)
更に、ジェネリックが山ほどある上に、配合剤も何種類か出てきました。
1,β遮断剤(チモプトール)+プロスタグランジン製剤⇒ザラカム、デュオトラバ、タプコム
2,β遮断剤(チモプトール)+CAI⇒コソプト、アゾルガ
3,α2刺激剤+CAI⇒Simbrinza(未発売)
いったい、どうやって点眼をチョイスすればいいのか迷うところです。
ただ、単剤での眼圧下降が最も強力で、眼圧下降20%以上期待できるのは、プロスト系のプロスタグランジン製剤のみです。この中から好みで1剤選ぶ事は問題ないでしょう。問題は第2剤。β遮断剤・CAI・α2刺激はどれも単剤眼圧下降20%弱でこの中のどれか。通常は、β遮断剤かCAIでしょう。配合剤のチョイスもあるでしょうが、単剤での⊿IOPの足し算よりは効果が低い事を考慮すべき。現実には、β遮断剤+PG製剤よりも、好みのPG製剤を単剤入れておいて、β遮断剤+CAIを追加する方が多い。
第3、第4剤を加えた場合に、追加の眼圧下降効果が本当にあるのかどうかは、非常に判断が難しい。もともとの眼圧が変動する上に、追加効果は、単剤の効果よりかなり低いので。(ブリモニジンはどんなケースでも追加効果があると報告があったが、検証するとそうでもなかった・・・)
基本方針としては、先ずPG製剤
次に、心肺に異常があれば、CAIかα2刺激。以前、新家先生の話を聞いて、β遮断剤に依存しない緑内障治療の重要性を再確認しましたが(http://takeganka.exblog.jp/20543742)、高齢者には隠れCOPDが多いので、PG、CAI、α2を基本とする治療もありかも。心肺に異常がないか、若い患者さんの場合は、β遮断剤を含む治療へ。
治療は繰り返しになるが、先ずベースライン眼圧の測定。その後必ず片眼トライアル。点眼効果を確認する。ここにしっかり時間を割くべき。慌てて手術へもっていかない。日本人NTGの平均進行速度は-0.27dB/年。これはかなりゆっくり(CNTGSでは-0.41,EMGTでは-0.36)。1年ぐらいかけて、進行速度、眼圧下降効果をみて手術するかどうか決めるべき。ただ、若い人は要注意。
だったら、手術すれば、進行は止まるのか・・・。岐阜や東大の成績では、5年以上経過を見れば、やはりゆっくり悪化すると。でも、進行速度が速い人には有効。遅い人にはイマイチ・・。レクトミーして無治療で30%以上眼圧下降が得られた症例(実はかなり稀なケース)ばかりを集めてみても、進行速度が速い(-1dB/年以上)ケースでは有効だったが、遅い症例では有効と言えない事が確認された。
つまり、
-1.0 dB/年 ⇒ 手術
-0.5 dB/年 ⇒ 迷う
-0.25 dB/年 ⇒ 経過観察
やはり、問題になるのは、-0.5dB/年ぐらいの速度。-15dB以下なら年齢と相談して手術考慮。下方某中心暗点があるなら、-10dB程度でも手術考慮。年齢と進行速度、障害部位を考慮して、5年後10年後20年後を想像して、治療方針をたてるべき。
進行判定については、かつてスタットパック、最近ではGPCで判断するが、ビーラインの解析ソフトが秀逸。上下別のTDスロープの判定が有用だが、新しいバージョン(2014)に期待。クラスター別の進行判定は最近多用している10-2の解析も可能に。ただ、生データを並べるだけでも十分かも・・・と。
素晴らしい内容の講演であり、自分の考え方にも非常に近くて(こちらが洗脳されているだけ?)、勉強になりました。最低、年に1回は講演をお聞きしたいものです。


緑内障ボーダーから治療を始めて10年になります。
「OCT、実は意外と役立たず」の部分を読んで、少し安心しました。
先日、ドライアイで行った眼科で、OCTが余りにも酷く、
このままでは、30年持たないと言われ、凹みました。
思い立って、緑内障専門外来がある、ちょっと離れた眼科に行きました。
そこで、院長から、「-6D以上の強度近視の場合、緑内障と言う判断も難しいし、OCTも真っ赤に反応します。
OCTが悪いから、30年持たないと言うのは・・・そんなことは解りませんよ」と苦笑いされました。
OCTが、余りあてにならないと言うのを、先生のブログでも拝見で来て、ほっとしています。
点眼薬の説明も詳しく有難う御座います。
キサラタンで、9年治療しましたが、昨年、眼圧が18まで
上がったので、デュオトラバに変更になりました。
それが、最初の半年は14まで下がったのですが、
既に19と20まで上がってます。
キサラタンで、ここまで上がったことは無かったのに・・と、配合剤の効果が切れるのが早いのに、戸惑ってます。