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プリザービジョン2発売記念講演会 その2(741)

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講演2 大阪大学眼科講師 沢美喜

カルテノイド:天然に広く分布する黄色・赤色を呈する脂溶性の色素。生活習慣病のリスク軽減や癌予防、抗酸化作用などが注目されている。動物は生合成できないので、摂取するしかない。
1,カロテン(炭素と水素のみで構成)
2,キサントフィル(アルコール・ケトン・エポキシなど酸素原子を含む)
★βカロテンは、プロビタミンAとして重要。

黄斑色素(⇒キサントフィル類)
1,ルテイン
2,ゼアキサンチン
この2つは構造異性体で、ルテインは傍中心窩に、ゼアキサンチンは中心窩に多い。食物やサプリメントから摂取するしかない。

AREDSの進行予防のEBMは、
①軟性ドルーゼン:中型が多発、或いは大型1個以上(カテゴリー3)
②中心窩外にGA(地図状萎縮)
③片眼に進行性のAMDを有し、それによる視力低下があるもの

において確認され、25%リスク低下させた。そのAREDS処方とは、
1、ビタミンC 500mg
2、ビタミンE 400IU
3、β-カロテン15mg
4、亜鉛80mg
5、銅2mg

大規模スタデイの結果なので、この処方は、加齢黄斑変性予防において、高いエビデンスレベルがある・・・のでしょう。
ただ、βカロテン投与が、喫煙者において肺癌や心血管系疾患のリスクを上げること。当初製品化されていなかったキサントフィル類のルテイン・ゼアキサンチンが製品化され、投与可能になったこと。また、DHA/EPAと言ったω3脂肪酸の有効性を確認することも含めて、より強力な加齢黄斑変性進行予防を目指してAREDS2が行われました。
1.AREDS1(プラセボ)群
2.AREDS1+カロテノイド群
3.AREDS1+ω-3脂肪酸群
4.AREDS1+カロテノイド+ω3脂肪酸群(併用群)
(投与量:ルテイン10mg、ゼアキサンチン2mg、DHA350mg、EPA 650mg )
残念ながら、すべて有意差なしとなり、⇒カロテノイド、ω-3脂肪酸の付加によって後期AMDへの進行確率をさらに下げることはできなかった。つまり、ボシュロム曰く、AREDSの効果は確実で、AREDS2でそれを増強する効果が確認できなかっただけ・・・らしい。更にサブグループ解析結果では、

1、ルテイン・ゼアキサンチン(L・Z)摂取群は、非摂取群との比較で、AMD進行リスクを10%減少。
2,(AREDS-βカロテン+L・Z)処方は、AREDS処方よりもAMD進行リスク18%減少
3,普段の食事でL・Zをほとんど摂らない人では、L・Z摂取によりAMD進行リスク26%減少


・・・らしく、ボシュロムの出した答えは、プリザービジョン2処方。
1、ビタミンC 408mg
2、ビタミンE 242mg
3、ルテイン 10mg
4,ゼアキサンチン 2mg
5、亜鉛30mg
6、銅1,5mg

ただ、ビタミンCEに予防効果がないという報告(アメリカ)、ビタミンEに予防効果なし(オーストラリア・アメリカ)、βカロテンに予防効果なし(フィンランド・アメリカ)。また、ルテイン・ゼアキサンチンに予防効果あり(イタリア)、効果なし(オーストラリア・アメリカ)。更にω3に予防効果あり(オランダ)など、様々な報告があり、AREDSだけが金科玉条ではない筈だが・・・・・・。

黄斑色素の測定
1,フリッカー法:Heterochromatic Flicker Photometry(HFP)
青色は黄斑色素で吸収されるので、青は緑より暗く感じる。青と緑を交互に点滅させて、ちらつきを感じるかどうかで、黄斑色素の量を調べる方法。
2,眼底反射光測定法(Fundus Reflectometry)
眼底に投射した青色光の強膜反射光を測定する。黄斑色素が多いほど、光は吸収されて減弱する。
3,眼底自発蛍光
網膜色素上皮内のリポフスチンの発する蛍光を測定する。
4,ラマン法

講演内容から徐々にそれてしまいますが・・・

これらの方法で、黄斑色素は測定可能⇒黄斑色素光学密度(MPOD)
・加齢性黄斑、萎縮型加齢黄斑変性、典型的加齢黄斑変性でMPODレベルは低下し、PCVやRAPで高度に低下。加齢黄斑変性の僚眼では正常眼と加齢黄斑変性の中間。
・摘出眼において、加齢黄斑変性は健常眼の63%(Boneら)
・加齢黄斑変性僚眼は健常者より低い(Beattyら)
・AMD眼は健常者より低い(Bernsteinら)
・日本人AMD眼は、健常者より低い。AMD僚眼も低い(尾花ら)
それが原因か結果かは不明だが、加齢黄斑変性眼、その僚眼において黄斑色素が低いのは確か。

経口摂取されたルテインは、小腸から吸収されて、HDLと結合して血中を輸送されて、HDL受容体を介して網膜色素上皮に取り込まれた後、レチノイド受容体を介して、視細胞外節から視細胞へ。特異的結合蛋白と結合して、軸索突起に集積するらしい。つまり、どこぞの怪しげなサプリメントのように、どんなに摂取しても、目的の場所に集積せずに、ただ排泄されるだけ・・・・・ではないようです。
また、ルテイン投与によってMPODレベルが上昇する事も確認されています。
Macular pigment density changes in Japanese individuals supplemented with lutein or zeaxanthin: quantification via resonance Raman spectrophotometry and autofluorescence imaging Japanese Journal of Ophthalmology(0021-5155)56巻5号 Page488-496(2012.09)

また黄斑色素は、460nmに吸収ピークをもつ。つまり青色可視光を吸収して、視細胞の光障害を防ぎ、網膜色素上皮や視細胞において、一重項酸素を消去したりしている(抗酸化作用)らしい・・・。

つまり、黄斑色素は、視細胞や網膜色素上皮を守る働きが期待されていて、加齢黄斑変性眼や僚眼においては減少しているようで、経口摂取で増やすことが可能。だからと言って、摂取すれば加齢黄斑変性の予防効果が明らかになっている訳ではないが、我々にできることは、例えばAREDSで対象になったような症例には、正しい情報を提供することでしょうか・・・・
by takeuchi-ganka | 2014-03-11 16:02 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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