第9回眼科治療を語る会 を聴いて・・・・ その1 (750)
2014年 05月 16日

強烈な芳香を放って、もう散ってしまいました。
第9回眼科治療を語る会 を聴いて・・・・ その1
演者:ひらかた山岸眼科 山岸和矢先生、湖崎眼科 湖崎淳先生
身内だけの緑内障勉強会がありました。演者らの好意によって、後輩の為に開催されているのですが、彼らは理解できているのでしょうか・・・・。この会も、今年で9回目となりましたが、今回は緑内障外来関連医師に限定しなかった為、かなり盛況でした・・・・。私は単なる司会ですが、緑内障を非常によく知る経験豊富な二人に、悩ましい緑内障症例に対する微妙なスタンスを公開していただけるありがたい機会となりました。20年以上前に、月曜日の夜、6Eの一番奥にあった小さな部屋で行われた緑内障外来のミーティングなら、時々聞けたのでしょうが、今となっては、非常に貴重な機会だと思いますので、しっかり拝聴してきました・・(司会なので当然ですが・・)。あくまで、私見満載のブログなので、拝聴した講演内容を肴に、ぐだぐだと・・・いきます。
いつも考えている事ですが、様々な疫学調査が行われていて、有名な多治見スタデイの緑内障の有病率は、 40歳以上3.9%で、「広義POAGの有病率は40代2.0%、50代2.7%、60代4.7%、70代8.2%」とされています。つまり、70歳代のヒト1000人中少なくとも82人が緑内障だが、そのうち40歳代で緑内障と診断されているのは、20人。つまり、将来緑内障になる筈の62人が見逃されているのでは・・・・そんな妄想を常に抱いています。つまり、緑内障の患者さんはもっともっと多い筈だと・・・。勿論、その62人の中身はバラバラで、頑張って検査しても、その初期変化を見つけられないレベルから、少し怪しい、かなり怪しい、確実に初期変化が見つかる段階、明らかな緑内障・・まで様々だと思いますが。
じゃあ、どうやって、一人でも多くの緑内障患者さんを精密検査の土俵の上に上げるかが問題となります。仮に外来患者全員をOCTでスクリーニングすると約9%の陽性患者さん(POAG,NTG、PE)が見つかったそうです(Yクリニック)(疑いを入れると17%弱)。有名な緑内障専門医の初診患者というバイアイスがかかっていますが・・。ただ、一旦土俵に上げれば、OCTなんかいるのかなあって感じています。データの再現性に若干問題があり、その為にトレンド解析ができない、できても信頼性が低ければ、結局視野(10-2・30-2)で経過を見ることになるのですから・・。器械による最高のスクリーニング方法はOCTなのでしょうが、偽陽性がかなり多いらしく、間違って土俵に上げてしまう症例が多くなれば、それを否定することは困難な作業となります。つまり、現時点においては、OCTを緑内障利用する場合は、それに依存しない高いレベルの診断能力が必要ということになるでしょう。
問題の、緑内障に関して『チョット怪しい』と感じるポイントとは・・・。教科書的には、CDRが0.6以上、左右差が0.2以上、NFLD・・・などとありますが、実際は、何を見ているのでしょうか。散瞳する機会のある患者さんの場合は、ほぼ見逃す可能性はないでしょうが、屈折異常・結膜炎・メバチコなど散瞳する機会のない疾患で初診された場合が問題です。倒像鏡でチラッと視神経及びその周囲網膜を見たら、先ずは視神経の色と陥凹の位置と大きさを見ます。そこに存在する可能性のある、緑内障性変化を推定します。DHはないのか、浅い陥凹がひろがってないか、小さいけど偏在した深い陥凹がないか、色が蒼白とは言えないけど、何となく怪しげな色?雰囲気?がないか・・、またそれに連続する網膜にNFLDの存在を想像させる色調の変化がないか・・・などがポイントとなります。ちょっとでも引っかかるものがあれば、精査しましょう・・となります。
眼圧について。我々は真の眼圧を測定することは困難です。眼圧測定方法には、様々なツールがありますが、完璧なものはありません。これについては、以前の記事を参考にしてください。
http://takeganka.exblog.jp/18355328/
眼圧値に与える要因は様々ありますが、先ずは、角膜が薄いか厚いか。薄いと低く出ますし、厚いと高くでます。また、アプラネーションでは、乱視度数も影響します。Ocular Response Analyzer (ORA)という器械は、角膜剛性を同時に測定して、補正するそうです。ただ、真の値に近づくように補正したところで、我々が行うのは、その患者さんのベースライン眼圧を測定して、そこから20%以上、或いは30%以上眼圧下降を目指すことになります。
補正した値が意味を持つのは、角膜が薄くて、眼圧が低く出てしまい、本当は結構高めで、流出路系手術の適応があるのに、手術適応を逃してしまうケースでしょうか。非常にレアケースだと思いますが、そのような事もありうるのだと、心に止めておくべきでしょう。或いは、角膜が厚くて眼圧が高く出てしまい、不必要な治療を開始するケースでしょうか。
最近多いレーシック後の患者さんについては、単に厚みの問題以上に、角膜剛性が低下して、眼圧は非常に低く出ます。したがって緑内障の治療効果の視標としての眼圧の価値が随分低くなってしまいます。眼圧がある程度高ければ、様々な点眼の効果が判断できますが、あまりに低いと、どの点眼が一番有効なのかわからない。そんな意味でも、緑内障患者さんは、レーシックしないで欲しい・・・(個人的見解)。