第9回眼科治療を語る会 を聴いて・・・・ その3 (752)
2014年 05月 20日

2,PACG
レーザー虹彩切開術するのかしないのか・・・の議論の前に、診断レベルが非常に低くなってはいないだろうか・・・。UBMや前眼部OCTがあればPACの診断できると思っているのでしょうか。非常に優秀な器械ですが、前房が浅い、瞳孔ブロックが強い、隅角が狭い・・・まではわかるが、その隅角で水を通さない癒着がどの範囲に発生しているのかについては、何も教えてくれないのです。つまり、所謂PASindexが何も分からないのに、PAC(G)の診断なんかできる筈がない。確定診断は、圧迫隅角検査でしょう。この古典的で、点数も低くて、少しコツが必要な検査が必須と思っています。カシアは知ってても、サスマンを知らん医師が多すぎるのでは・・。
http://takeganka.exblog.jp/21035120
ここに意見を書いたので参照してください。
レーザー虹彩切開術を、ヤグを併用して、丁寧にやれば角膜内皮に大きなダメージを与えないと仮定する(個人的にはそう信じていますが・・・)と、レーザー虹彩切開術の適応は、眼圧ではなく、瞳孔ブロックの強さと、それによる隅角の狭さによって決まると思っています。具体的な数値を上げれば、前房深度が2.0mmを大きく下回り、1.6mm近くまで浅くなり、瞳孔ブロックが中等度以上で、UBMでIC(iris convexity)値が0.3mm以上もあって、隅角が見かけ上閉塞しているような場合でしょうか。
眼圧が基準に入らないと思うのは、PACが慢性化して、隅角閉塞範囲が広がれば広がるほど、瞳孔ブロックはむしろ軽くなり、レーザー虹彩切開術で解除しても、眼圧下降が得られない事が多いからです。仮に、100%近い隅角閉塞があれば、原理的には、瞳孔ブロックはほぼゼロの筈で、レーザー虹彩切開術の意味もゼロとなる筈です。レーザー虹彩切開術は、あくまでも更に瞳孔ブロックが原因の隅角閉塞が増加するのを止める役割しかないのですから・・・。
レーザー虹彩切開術しても、眼圧が下がらない症例が多いとと言うヒトもいますが、下がらない症例があるのは当然で、しっかり隅角検査を行えば、術前にある程度推測できる筈です。その上で、レーザー虹彩切開術ではなく、水晶体摘出、隅角癒着解離、流出路系手術、濾過手術などをどう併用すべきかの判断となります。
何でもかんでも、水晶体を取ってしまう派のドクターには、理解してもらえないでしょうが、例えば、サスマンなどの圧迫隅角鏡で判断したPASが10%でも、appositional closureが広範囲に生じていて、眼圧が高ければ、レーザー虹彩切開術の良い適応だし、逆に、PASが80%あって、眼圧が30を超えていてGONもあれば、レーザー虹彩切開術の適応はなくて、GSL+PEA+IOLがベスト?
全てのPACSやPACに対して、水晶体摘出術が行える訳ではないので、現在においても、隅角所見と眼圧とGONの程度を勘案しながら、レーザー虹彩切開術を含めた、今後の治療計画を立てることは、重要だと思っています。
※最後に、UBMで狭い隅角を観察すると、見かけ上閉塞しているように見える事がよくある。これを機能的隅角閉塞と読んでいいのだろうか。機能的に閉塞していれば、水を通さないと思うのだが、見かけ上閉塞しているように見えるのと、水も通さない状態との間には、大きな溝があるような気がする。非常に狭い隅角を暗室でUBMを行うと、時にほぼ全て象限で見かけ上閉塞することがあるが、眼圧上昇発作を経験したことはない。
レーザー虹彩切開術が安全だとする報告
Effect of prophylactic laser iridotomy on corneal endothelial cell density over 3 years in primary angle closure suspects
Kumar RS, Baskaran M, Friedman DS, et al.
Singapore National Eye Centre and Singapore Eye Research Institute, Singapore
Br J Ophthalmol 2013, 97: 258-261.
レーザー虹彩切開術後の角膜内皮減少の危険性が言われて久しい。本当にどれくらい危険なのか分からないまま、レーザー虹彩切開術の適応基準は高く狭くなってきたと感じています。勿論、安易に行うレーザー虹彩切開術を推奨しているのではなく、既に隅角閉塞が始まっている症例、急性発作のリスクが高い症例、眼底病変があって散瞳しないと眼底の管理ができない症例などの一部が対象となるのです。
それでも、レーザー虹彩切開術危険、水庖性角膜症のリスク大・・・神話は、独り歩きし、浅前房で、瞳孔ブロックが強く、隅角が非常に狭いものの、レーザー虹彩切開術されない、かと言って、水晶体摘出も行われない眼が増えていると考えています。証拠はないですが、急性発作の症例も増えている気がしますし、レーザー虹彩切開術全盛時には、あまり見られなくなった慢性型のPACGも増えている?そんな中、この論文が目にとまりました。対象症例230例の90%以上が中国人という、日本人に置き換えてもいいようなスタデイです。予防的レーザー虹彩切開術を片眼に行なって、3年後他眼と内皮減少に関して差がなかったという報告です。