2014年 07月 15日
フォーサム2014東京 その4 (767) 術後感染予防対策
第51回日本眼感染症学会 特別講演
宮田眼科病院 宮田和典 先生
都城という日本の亜熱帯地方にある大型眼科病院のお話。単に大型というだけでなく、スタンスが素晴らしい。都城の方は恵まれてますね。
以前、術後の遅発性眼内炎を1例経験したことから始まった、術後感染症との戦いの歴史について・・・。年間6,000以上の手術件数を誇る宮田眼科病院での戦いとは。
術前結膜嚢の培養で陽性率約52%、眼瞼が70%、マ腺が65%。術後感染ゼロを目指して、北里院内感染対策協議会(KiMERRA:キメラ)に加入して院内感染対策を・・。結果術後の急性眼内炎はゼロにできたが、遅発性が・・
一般的に・・
日本の白内障術後眼内炎は、0.05(0.01~0.05)%
レーシック後が0.03~0.05
濾過胞炎が2.2
角膜移植後が3.6
起炎菌としては、
白内障術後:CNS、黄ブ、Eフェカーリス
レーシック:非定型抗酸菌(減っているが・・)
濾過胞:Streptococcus
角膜移植:真菌・・
宮田眼科での感染性角膜炎は、150-200例/年(菌の検出率70%)
グラム陽性:陰性=2:1
アキネト、セラチア↓
コリネ・MRSA・表ブ↑
常在菌検出率は?
小児 55% 少ないし、耐性菌少ない。表ブはないし、コリネはいても耐性菌ない。
成人 88% コリネ↑、キノロン耐性多い
緑内障 60% 何故かコリネ少ない、耐性菌少ない
長期のステロイド投与 75% キノロン耐性多い。耐性表ブ・コリネ多い。
※CMX(ベストロン)は、各群差ない。耐性少ないらしい・・現時点では、CMXがもっと見なおされるべき?当院でも、Y先生の姿勢を見習い、数年前からファーストチョイス抗菌剤をCMXにしています。ただ、周術期の抗菌剤は、キノロンを選択せざるを得ない・・?
周術期減菌化の功罪?(術前⇒当日⇒14日)
レボフロ0.5 82⇒63⇒31 耐性を促す?
レボフロ1.5 87⇒57⇒30 耐性誘導しにくい・・
ガチフロ 90⇒61⇒33
※表ブ減少しない。耐性菌が残存?
※アクネスは全て感受性あり。常にマ腺から供給されている・・?
※長期ステロイド投与眼は、表ブ全て耐性菌。抗菌剤使用眼ではさらに耐性率↑。サイクリック療法必要。
※術前長期間レボフロキサシン0.5%を点眼すれば、かえって耐性化を促す事になり、危険?やるなら1.5%を3日間。抗菌剤なしで、術前効果的な減菌化が達成できれば一番いいのだろうが、現時点では、レボフロキサシン1.5やガチフロを使うしかない・・。
遅発性眼内炎
厳密には術後どれくらいから遅発性?1ヶ月以上(原二郎)、6週以上(EVSG)。一般的には、アクネスが原因として多く、硝子体注射・点眼・前房洗浄・硝子体手術・・などで対応。予後良好。
宮田眼科で、09年8月~11年12月までに『遅発性眼内炎』が7例あったと・・。ただ、7例全てHOYA NY-60だった。術後24-71日(平均34.8)と微妙な時期。1例はコリネが検出されたが、それ以外は何が原因なのか・・。IOLには問題がないのか?※あたらしい眼科36(9):1323-1326,2013
IOLの折りたたみ方、フットプレート形状、カートリッジのスリット・・・など改良されたらしいが・・、その後宮田眼科では使っていないが、全国的にあの『HOYA・IOL関連眼内炎』が132例と多発した。その殆どがTASS類似の非感染性炎症で、術後15-60日に発症(7日以内が40%)。遅発性TASS?
戦略として・・
内因:現時点では、キノロン術前3日間点眼
外因:器具の滅菌(※例えば管腔構造物は、真空脱気式が必要)
術野:ヨード製剤での滅菌(術前/術中)
ドレープ:瞼縁をしっかり包み込む(菌の供給を遮断)
術中:IOL後面洗浄(スジャータスタデイから・・)
終了時前房内抗菌剤
手術室:陽圧、配線、吸気口
・・・
エデンスのある対策だけでなく、出来る事は全てやるイメージ。術後感染を限りなくゼロに近づける為に・・