大阪眼科学術講演会 グラナテック発売記念講演会 その2 (803)

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特別講演 新しい緑内障治療薬:Rhoキナーゼ阻害薬 谷原秀信 熊本大教授

谷原先生の話は、いつも難しい話が盛り沢山で、理解困難なことが多いのですが、果たして・・・

今回の選択的ROCK阻害薬は、世界に先駆けての発売で、開発当初から深く関わって来られた谷原先生は少し思い入れが深いようです。それにしても、いつまでも若いね・・・・・

緑内障点眼薬は、異常に種類が多いが、主経路に働く薬剤は、ピロカルピンしかなく、実質的には今回のグラナテック以外には存在しないと言っていい。

原発開放緑内障において、何故眼圧が上がるのか。房水流出抵抗の主座は、線維柱帯とシュレム管の間にあるとされている。ぶどう膜網・角強膜網には殆ど抵抗がないので、抵抗主座は、傍シュレム管結合組織(JCT(細胞外マトリックス:ECM+線維柱帯細胞)とシュレム管内皮細胞。房水は、JCTを通って内皮に。内皮の細胞間隙を通る(paracellular)経路もあるが、メイン経路は内皮細胞内を通り巨大空胞を作ってシュレム管(transcellular)。POAGでは、角強膜網で線維柱帯細胞減少し、細胞間隙狭くなり、ECM内にはコラーゲン・弾性線維が大量に蓄積。ECM高密度となり房水流出抵抗増加。

ROCK阻害薬は、線維柱帯細胞の細胞骨格に影響。Rhoキナーゼ阻害し、アクチンの脱重合が促され、線維柱帯細胞形態が変化。傍シュレム管結合組織においては、線維柱帯細胞やECMの接着に関わる蛋白質が変化。線維柱帯細胞の接着を弱め、ECMの構造変化。細胞間隙やECMの構造変化は水の流れを良くする。 

Rho-associatedkinase inhibitors: a novel glaucoma therapy.

Inoue T, Tanihara H.

Prog Retin Eye Res.2013 Nov;37:1-12.

もうかなり前の話になりますが、天理よろず相談所病院の眼科におられた永田誠先生がトラベクロトミーという手術を正しく行えば、非常に有効な手術であることを実践・証明されて、数多くの門下生を通して日本中に普及されましたが、その優秀な門下生の一人である谷原先生は、流出路手術の有効性を最もよく知る先生の一人でしょう。この手術は、強膜側からシュレム管を見つけて、その中にトラベクロトームを挿入して、前房内へ回転させることで、線維柱帯を切開する手術です。濾過手術のように非常に低い眼圧を達成することは困難ですが、15程度にする(眼圧を正常化)事が可能です。谷原先生が、線維柱帯とシュレム管の間の流出抵抗を下げる点眼薬の開発に深く関わっておられるのは、このような背景があるからのようです。

Effects of rho-associated protein kinaseinhibitor Y-27632 on intraocular pressure and outflow facility. Honjo M, Tanihara H,Inatani M, Kido N, Sawamura T, Yue BY, Narumiya S, Honda Y. Invest Ophthalmol Vis Sci. 2001 Jan;42(1):137-44.

線維柱帯細胞の形態がすぐに変化する。

アクチン分布がが変化(濃度依存)(可逆的)

巨大空胞↑、線維柱帯間隙拡大

※恒常的Rho刺激が、房水流出抵抗を維持している?

ROCK阻害薬は、線維柱帯細胞の細胞骨格に影響。Rhoキナーゼを阻害し、アクチンの脱重合が促され、線維柱帯細胞形態が変化。傍シュレム管結合組織においては、線維柱帯細胞やECMの接着に関わる蛋白質が変化。線維柱帯細胞の接着を弱め、ECMの構造変化。細胞間隙やECMの構造変化は水の流れを良くする。また、シュレム管内皮単層シートの膜透過性も亢進。つまり、線維柱帯にもシュレム管内皮にも効いている。細胞間接合装置にも影響して、paracellularの流れも良くしている?

臨床試験データから

1,リパスジルは、他のROCK阻害薬より低い濃度で効いている。サルではラタノより強い眼圧下降。ヒトではラタノに負けるが・・。

2,シャープな眼圧下降の切れ味があるが、作用時間は短いので、トラフが悪い。充血は仕方ない。軽度と言っても、現実問題としては、強い充血。ただ、30分以上経過すれば減少し、2時間で消失。反復投与しても、眼圧下降・充血パターンともに変化ない。

3,至適濃度は0.4%。⊿IOPは、2時間のピーク時で2-3下降。トラフは1-2程度。

3,ラタノ・チモへの追加効果は、-1.4と-1.6程度。つまり弱い・・

4,長期にわたって(52週)有効性維持。投与前眼圧が高いとよく下がる。advanced stageでも効果同じ。

ECMを改善し続けるとすれば、長期点眼すれば、むしろ更に眼圧下降が期待??

5,続発・PEは不明。

6,点眼直後に充血し、1-2時間で消失。

7,眼圧下降は12時間続かない。眼圧下降のことのみ考えたら、3回/日がベター?ただ、充血するので、2回が妥協点。

※演者のコメントではないが、ノンレスポンダーは、PG製剤と比べて、かなり多いと思われるが、Rho-ROCK刺激が高くて、その為に房水流出抵抗が高く、眼圧上昇している患者さんに著効する。そんな患者さんを見つけるべき・・・?その典型例がステロイド緑内障?

ステロイド緑内障

ステロイドは、線維柱帯細胞でアクチン再構築、ECM増加、シュレム管内皮でアクチン再構築+タイトジャンクション↑⇒流出抵抗増加

原理的にも、ROCK阻害薬の効果が期待される・・

Involvementof RhoA/Rho-associated kinase signal transduction pathway in dexamethasone-induced alterationsin aqueous outflow.

Fujimoto T,Inoue T, Kameda T, Kasaoka N, Inoue-Mochita M, Tsuboi N, Tanihara H.

Invest Ophthalmol Vis Sci.2012 Oct 11;53(11):7097-108. doi: 10.1167/iovs.12-9989.

http://www.iovs.org/content/53/11/7097.long

※虚血ストレスに対する神経保護効果あり

InvestOphthalmol Vis Sci. 2014Oct 2;55(11):7126-36. doi: 10.1167/iovs.13-13842.

The novel Rho kinase (ROCK) inhibitor K-115: a new candidate drug forneuroprotective treatment in glaucoma.

YamamotoK1, MaruyamaK1, Himori N1, Omodaka K1, YokoyamaY1, Shiga Y1, Morin R1, Nakazawa T1

http://www.iovs.org/content/55/11/7126.full?sid=bfa2eaf5-63c6-4027-9d8a-350d1472dcda

濾過胞維持効果あり

Potentialrole of Rho-associated protein kinase inhibitor Y-27632 in glaucoma filtrationsurgery.

Honjo M, Tanihara H, Kameda T, Kawaji T,Yoshimura N, Araie M.

Invest Ophthalmol Vis Sci.2007 Dec;48(12):5549-57.

殆どの緑内障点眼は、ブレブを縮小させる方向に作用するが、この薬剤だけは維持効果がある。濾過手術後の追加点眼として期待?


by takeuchi-ganka | 2015-01-14 22:49 | めぐすり | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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