iPS細胞から神経節細胞 (812)
2015年 02月 26日

Generation of retinalganglion cells with functional axons from human induced pluripotent stem cells. Tanaka T1, Yokoi T1, TamaluF2, Watanabe S2, Nishina S1, Azuma N1. Sci Rep. 2015 Feb10;5:8344. doi: 10.1038/srep08344.
国立成育医療研究センターの東先生のグループからの報告です。iPS細胞から神経節細胞を作り出すことに成功したようです。緑内障というのは、主に眼圧依存的に神経節細胞が死んでいく疾患です。眼圧以外にも細胞死の原因はあると思うのですが、我々臨床医に与えられたエビデンスは、眼圧下降という手段しか提供していません。ただ、眼圧を十分下降させたとしても、その進行を止められない事もあり、薬物で不十分で手術をすれば、様々な合併症に悩まされることもある・・・・。ただ、神経節細胞は徐々に減少し続けるのをなかなか止めることができない。この減少し続ける神経節細胞の再生が不可能でも、新たに補充することは可能になるのだろうか・・。
報告によれば、ヒトiPS細胞から、軸索をもった神経節細胞を作成することに成功し、その軸索は見かけだけじゃなくて、働く能力をもっているらしい。網膜色素上皮とは違って、神経節細胞というのは、光刺激を受け取った視細胞から双極細胞を経て伝えられた刺激を外側膝状体へ伝えるネットワーク内に存在している。1億ほどある視細胞から100万ぐらいの神経節細胞が情報を受け取るので、1個あたり100ほどの視細胞と繋がっているのでしょう。また視細胞の軸索突起は非常に長くて、網膜から視神経へ向かい、lamina cribrosaを越えて、視交叉を経て、外側膝状体まで伸びている。この複雑な構造&ネットワーク内の細胞を作り出すことは、単純な細胞培養とは比較にならない複雑さがあるようです。ヒト皮膚由来iPS細胞から培養条件だけで神経節細胞を分化させ、この細胞はなんと1-2㎝の軸索を有していて、この軸索は免疫染色で軸索固有の蛋白が証明されて、軸索流もその活動電位も確認されたようです。このヒト皮膚由来iPS細胞から軸索突起を有する神経節細胞を分化誘導するシステムは、緑内障だけでなく、様々な視神経疾患の治療に貢献することが期待されます。特に神経保護薬の創薬に期待・・