2015年 02月 26日
Mechanical theory (813)

手元に20年ほど前の平成5年に行われた第3回日本緑内障学会研修会の抄録がある。近江八幡市の滋賀厚生年金休暇センターで行われ、初日(7月24日)のプログラムは、『緑内障の視神経障害を考える』-機械説か血管説か?- 座長が三島済一。機械説が岩田和雄と千原悦夫。血管説が井上洋一と三木弘彦(敬称略)。そこで岩田先生はいつものように(?)、Mechanical theoryを主張されていた。岩田先生の抄録を以下に書き写します。
1,病理所見:機械的障害顕著。血管は正常。血管新生全くなし(慢性ischemiaの存在しない証拠)。AxonはL.C.チャンネルの変形に弱い。astrogliaは無関心で反応なし。退行型である。
2)局所型のoptic nerve fiber bundle(ONFB) defectは、ビームの屈曲の強いところにおきる。ここにはangiospasmus的と判断し得る所見はない。
3)局所型のONFB defect部は1-2年のうちに血管網が変性消失し、特徴的な蛍光充盈欠損像を形成する。血管閉塞がONFB defectに先行する実証はない。ONFB欠損のある網膜面でもセクター型の充盈欠損があるが、axon消失に伴うその部位の血管網の退行によるものである。
4)Ischemic optic neuropathy はGlaucomaとは別個のentityである。
5)線状出血は漏出型出血で血管閉塞ではない。
6)健常眼圧が同一乳頭の部位によって又経過によって異なる事は血管説では説明できない。
7)その他
※私のメモには、LTGの剖検例で軸索がLCのすぐ手前で腫大していることや、LTGのLCのbackwardbowing や ptosis of LCなどのスケッチがある。
Recent structuralalteration of the peripheral lamina cribrosa near the location of disc hemorrhagein glaucoma.
Invest Ophthalmol Vis Sci.2014 Apr 28;55(4):2805-15. doi: 10.1167/iovs.13-12742.
Lee EJ1, Kim TW, Kim M,Girard MJ, Mari JM, Weinreb RN.
このWeinreb RNの論文は、EDI SD-OCTを用いて、視神経乳頭を中心とする11の放射状OCT画像を分析して、前部LC表面の後方彎曲( the outward deformation of the anterior LC surface),またはLCの放射状断裂(radial disruption of the LC)のいずれかが,耳側辺縁部に同定された場合は,LCに最近生じた構造変化があったと定義すると、構造的変化は、DHのない眼では11.1%なのに、DH眼では88.9%に見られたという内容。DHの有無でLCの構造的変化にこんなに大きな差があるとはちょっと驚きです。つまり、DHがあるということは、LCの構造的変化が現在進行形であることが示され、それが緑内障の進行そのものだと・・。20年以上前に岩田先生が、『DHが原因ではなく、結果なんですよ・・・』と言われていたことを思い出した。
