2015年 03月 08日
緑内障と脳脊髄圧の熱い関係 (814)

サルにおいて実験的な脳脊髄液圧低下により誘発した視神経症
Opticneuropathy induced by experimentally reduced cerebrospinal fluid pressure inmonkeys YangD, Fu J, Hou R, et al. BeijingTongren Eye Center, Beijing Tongren Hospital, Capital Medical University,Beijing Ophthalmology and Visual Sciences Key Laboratory, Beijing, China InvestOphthalmol Vis Sci 2014, 55: 3067-3073.
http://www.iovs.org/content/55/5/3067.long
シナか・・・と思いつつも、内容には興味があるもので。ちょっと原文に当ってみました。
以前こんな論文がありました。
http://takeganka.exblog.jp/9427209/
Cerebrospinalfluid pressure is decreased in primary open-angle glaucoma. BerdahlJP, Allingham RR, Johnson DH. Ophthalmology.2008 May;115(5):763-8.
たまたま?脳脊髄液圧を測定することになった多数の患者さんの中の緑内障患者さんについての分析が行われ、どうやら、緑内障患者さんは、IOP>CSFとなっている?!神経線維は、1000本づつ程度の束になり、Lamina cribrosaの孔を通過しますが、この孔が上下では大きく、IOP>CSFであればLCは後方へ屈曲した場合、歪みが強くて神経線維障害を引き起こしやすい。外側膝状体から神経節細胞への神経栄養因子がこれで遮断されると、神経節細胞は、生きていても仕方ないと判断して死にいたる・・・・。これが緑内障の本質だと・・・・・。
だとすれば、サルにシャント手術を行ってCSF圧を下げて、IOP>CSF状態を作り出せば・・、ナントビックリ・・・
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実験群のサル4匹中2匹のサルでは,両眼のRNFL厚が12~30%連続的に減少,視神経乳頭辺縁部面積および体積の減少,陥凹/乳頭面積比の増加が認められた.3 匹目のサルでは,片眼に線状の視神経乳頭出血が生じた.4匹目のサルでは,経過観察期間中に形態学的変化はみられず,また対照群のサルでも同様に変化はみられなかった.
実験群4匹
①②RNFL厚12-30%進行性の減少、リム面積・体積減少、CD比増加
③乳頭出血
④変化なし
対照群 5匹 ①~⑤:変化なし
※cerebrospinal fluid (CSF)圧は、40mm水柱、つまり2.94mmHまで下げたらしい。これだと明らかにIOP≫CSFP?
今までの実験的緑内障は、眼圧を上げるものだが、今回は、眼圧はそのままで、CSFPを下げるだけの実験。この実験を受けて、だからNTGは眼圧が正常でもCSFPが低いから発症するのだ・・・脳脊髄圧の正常値は、70~180mmH2Oつまり、5-13mmHg。10mmHgもあれば大丈夫だが(?)、もし今回の実験(2.94mmHg)のように5mmHg以下なら、点眼だけで、どんなに頑張っても、trans-lamina cribrosa pressureを小さくすることが困難で、神経節細胞死は止められない・・・・。という単純な結果を導くのは早計だろうが、NTGの中に、このような要素が存在することは確かなようだ。どれくらい眼圧を下げれ安心かどうかは、CSFP次第?
この他にも、laminacribrosaの厚みや柔軟性の問題(動物差)、現実問題としては、測定できないCSFP。脳内と眼窩内のCSFPが同じかどうか・・・。また頭と脊椎の位置関係が動物種によって異なる問題など未解決の問題はまだまだ・・・
Orbital cerebrospinal fluid space in glaucoma: the Beijing intracranial and intraocular pressure (iCOP) study.
Wang N1, Xie X, Yang D, Xian J, Li Y, Ren R, Peng X, Jonas JB, Weinreb RN.
NTGではPOAGや対照群と比較して脳脊髄圧が低い事を、MRIを用いて視神経周囲のクモ膜下腔が狭いことで示されているとしている。