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第405回大阪眼科集談会 その3 (820)

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特別講演 眼内悪性リンパ腫 大黒伸行(JCHO大阪病院)

※この病院は、ジェイコ大阪病院と呼ぶそうです。

眼内悪性リンパ腫の診断治療

  1. 総論
  2. 多施設スタデイ
  3. 症例提示

1,総論

つかみ:同じような症例が2例提示。①54歳女性 ぶどう膜炎。プレドニン30から開始。②52歳女性 ぶどう膜炎。プレドニン30から開始。後者はやがて網膜下浸潤が検出⇒リンパ腫疑い。

眼内悪性リンパ腫primary intraocular lymphoma( PIOL) = 眼原発悪性リンパ腫primary vitreoretinal lymphomaPVRL

⇒初期病変が眼に限局。(眼以外に所見があれば、治療は他科が主体となる・・・)

その殆どが、CD20陽性B細胞性非ホジキンリンパ腫

所見:前房細胞、スパイク状KP(びまん性とげ状KP)、前部硝子体混濁(濃厚)、網膜下黄白色浸潤、ベール状(オーロラ状)硝子体混濁

診断:① 細胞診 ② サイトカイン IL-10/10-6↑ ③ 遺伝子再構成:単クローン性増殖、同じレセプター↑↑

硝子体生検: ゲージの大きさ(20Gでも25Gでも構わないらしい・・)、カッティングレートもあまり関係ないらしい・・・。それよりも細胞診用の保存液にすぐ入れて保存。

疫学調査の結果⇒ぶどう膜炎の1位がサルコイドーシスで、7位が仮面症候群。この多くがPIOLらしい。

治療 局所の場合:放射線・MTX硝子体注、全身の場合:全脳照射・化学療法だが、基本的には化学療法優先させるべき。放射線には線量に限界があり、特に眼窩にでも一度放射線照射すると、全脳照射出来ない・・。ただ、全身化学療法は、眼内移行が悪くて、副作用も強いので、×。標準治療は、硝子体内MTX投与。繰り返し可能。ただ・・、レクトミー後の5FUの結膜下注射で見られたような角膜上皮障害必発。POVダメージ。あまりひどいと中止して、リツキサン(リツキシマブ)を硝子体内投与。良く効くが、中止すると再燃しやすい。また、時に(半分ぐらい)、非常に強い炎症が起こり(マクロファージ)、眼圧上昇。ステロイドで対応。

MTX400μgを灌流液0.05ml(or 0.1ml)に溶解し、毛様体扁平部から30G針で投与。これを週6-8回行い、その後月1で10ヶ月継続。非常に有効。

70歳未満の症例では、血液内科でMTX全身大量療法。眼病変には硝子体MTX注。

70歳以上なら、MTZ髄腔内投与+硝子体注

  • Efficacyand Complications of Intravitreal Rituximab Injection for Treating PrimaryVitreoretinal Lymphoma.
  • HashidaN, Ohguro N, Nishida K.
  • TranslVis Sci Technol. 2012 Oct 22;1(3):1. eCollection 2012.

※ヒト免疫グロブリンIgGκの定常領域と抗CD20マウスモノクローナル抗体IgG1の可変領域からなるキメラ型抗cD20抗体。MTX硝子体注継続困難になれば、リツキシマブ1mg硝子体注。週1回で4週間。

2,多施設スタデイ

眼内悪性リンパ腫の診断と治療に関する前向き試験(25施設217例)

  • 3590(平均63.4歳):35という若い人もいる・・。
  • 片眼例69、両眼148。意外に片眼も多い。
  • 初発は眼が82.5%で、脳に所見が出現するのは、1週から10年(平均21ヶ月)

※網膜血管炎や出血にも要注意。

陽性率:細胞診44.5%(低い・・)、サイトカイン(10/6↑):91.7、遺伝子再構成:80.6

5年生存率 61.1%(眼科でこんな事はめったにない・・・)

サイトカインについて

PIOL9095%は、diffuse largeB cell lymphomaなので、B cellからIL-10が大量に分泌される。非常に重要な指標だが、依存しすぎるのは危険だと。勿論Tcell lymphomaならIL-10 dominantじゃない。細胞診を併用すべき。

※硝子体の細胞診は、細胞が汚くて診断困難なことも多いが、前房の細胞なら綺麗だと・・・。前房蓄膿があれば積極的に・・。

3,症例提示

  • 68歳女性 両眼霧視。STTAして、プレドニン30入れるも無効。硝子体生検してIL-10/6>100、細胞診クラスⅢ。典型例・・・。ただ、すぐ全身症状が出てMRIで脳病変(+)
  • 44歳女性。アトピー性白内障でIOL眼。右眼のみ発症、網膜血管炎主体のぶどう膜炎。視力0.01STTAIVTAして、黄白色病巣↑⇒リンパ腫と診断して、MTX注で改善・・・ただ、脳病変(+)
  • 66男性 左眼視野欠損拡大。眼底所見軽微?CARAZOOR?耳側に黄色斑?GPで明瞭な視野欠損。ステロイド内服後、硝子体混濁、網膜に白点。⇒生検して、IL10↑、クラスⅢ⇒B細胞リンパ腫。
  • 55歳女性 STTA無効の硝子体混濁。生検したが異常なし?ステロイド内服後、網膜混濁。再度生検してが、IL6 dominantMRIで眼外にリンパ腫検出。MTX注で改善。その後他眼に硝子体混濁あり、生検するとIL-10 dominant※ステロイド治療で修飾されたのが、IL6 dominantになった原因かも。
  • 63歳男 硝子体出血がり、少し待ってからビト。血管の白鞘化。PCRでウイルス(-)Tスポット陽性だったので、抗結核治療したが無効。やがて片眼の硝子体混濁・出血再発したので、生検するとIL-6 dominant。クラスⅢ。PCR(-)。⇒硝子体MTX注×3して改善。次に右眼が硝子体混濁したので、生検するとIL-10=6、クラスⅡ

※よくわからないが、MTXで改善しているので、リンパ腫?

Tスポットhttp://www.jata.or.jp/rit/rj/348p8.pdf

PIOLのパターンは様々。

臨床所見・細胞診・サイトカインなどを総合的に判断す。

必ず内科(血液内科)と連携すべき・・

  • 眼内外に腫瘤が認められた眼悪性リンパ腫の1(原著論文/症例報告)
  • 佐々木 奈々(パナソニック健康保険組合松下記念病院眼科), 中内 正志, 山村 匡, 早川 公章, 岡本 雅司, 魚嶋伸彦, 岡見 豊一
  • 眼科臨床紀要(1882-5176)39Page887-893(2010.09)

先輩の論文だが、33女性(先ず若い!)。片眼の下液の移動する剥離。硝子体混濁も滲出斑もない。ただ、球結膜にサーモンピンクの腫瘍病変あり、生検で、diffuse large B cell lymphoma。 全身的な治療のみで治癒したと・・。

本当に病型様々・・


by takeuchi-ganka | 2015-04-05 14:43 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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