第406回 大阪眼科集談会 その4 (846)
2015年 06月 14日

先天色覚異常の診療 村木早苗(滋賀医大)
※日常診療で使う機会の少ない知識であり、難しい話なので、何度聞いても、しばらくすると忘れてしまうのですが、いい復習の機会。しかも今回は滋賀医大の専門家なので、少し気合いを入れて聞いてきました。
①色覚検査②診断③説明助言の3つが必要。
- 先天赤緑異常 男5%、女0.2% X染色体劣性
- 先天青黄異常 13000~15000に1人? AD ※石原で検出できない
※日常診療で出会う色覚異常は、先天赤緑異常と考えていい。
先天赤緑異常
- 1型 M・S(2色覚)、 M・Ma・S(異常3色覚)(軽症)
- 2型 L・S(2色覚)、 L・La・S (異常3色覚)(軽症)
正常赤遺伝子をL(longのL)、緑遺伝子をM(middleのM)、そして場所は離れていますが、青遺伝子をS(shortのS)とします。青:(赤+緑)錐体細胞の比は1:10で、赤:緑の比は2:1で周辺網膜は4:1だそうです。正常なLとM以外に、異常なL型雑種遺伝子(緑赤融合遺伝子)にはいくつかありLa・Lb・・、M型雑種緑遺伝子(赤緑融合遺伝子)にもいくつかありMa・Mb・・とします。
青錐体のオプシンは第7染色体にありますが、赤錐体と緑錐体のオプシンはX染色体にあります。詳しく言えば、X染色体の長腕の一番端のXq28。そして、この遺伝子は6個のエキソンに分かれていますが、赤遺伝子と緑遺伝子は並んで存在していて、また大変よく似ているため、DNAの複製が作られるときに、つなぎ方の誤り(不等交叉)が起こりやすく、先天(赤緑)色覚異常が比較的高頻度で発生する要因にもなっているそうです。赤錐体と緑錐体のオプシンは、エキソン5で決まる。LとMの遺伝子は6つのエキソンからなり、エキソン2から5においてそれぞれ様々なバリエーションがありますが、エキソン5がL型の配列ならばおおよそL錐体色素に属する吸収特性のオプシンを作り、M型ならおおよそM錐体色素の特性のオプシンを作るのだそうです。様々なハイブリッドが作られて、厳密には、視物質の分光特性は微妙に異なるらしい。

2型2色覚
- M型遺伝子が欠損して、L型が1個
- M型遺伝子が欠損して、L型が2個
2型3色覚
- 正常L型と雑種L型(緑赤融合遺伝子)の3色覚
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1型2色覚
- L型遺伝子が欠損して、正常M型が1個
- L型遺伝子が欠損して、雑種M型(赤緑融合遺伝子)2個の2色覚
1型3色覚
- L型遺伝子が欠損して、雑種M型(赤緑融合遺伝子)1個と正常M型2個
- L型遺伝子が欠損して、異なる種類の雑種M型2個?
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※色覚異常者の遺伝子を調べると、80%の例ではLかMの遺伝子が欠けた(2色型)で、20%の方が単純な図では説明できない遺伝子の構造を持っており、LとM遺伝子の両方を持っていたらしい。すなわち正常色覚と同じパターンの人も13%に認められたらしい・・。例えば、M遺伝子があるが、M視色素の欠損している(遺伝子があるが色素ができない)((-71A→C))状態だとか・・。(⇒このあたりから、混乱して理解困難に・・)
※遺伝子レベルの多型は様々で複雑。遺伝子型がわかれば色覚が決まるという単純なものでもないらしい。臨床上の分類は、仮性同色表や色相配列検査やアノマロスコープで行うが、それはそれ、これはこれ・・・?
2色覚と異常3色覚は、色覚検査で同じような結果を示すので、分類としては、
- 1)L錐体が働かないタイプを1型色覚(異常):S+M, S+M+Ma ⇒1型色覚異常:1型2色覚(いわゆる赤色盲)・1型第3色覚(いわゆる赤色弱)
- 2)M錐体が働かないタイプを2型色覚(異常):S+L, S+L+La、S+L+M(-71A→C) ⇒1型色覚異常:2型2色覚(いわゆる緑色盲)・2型第3色覚(いわゆる緑色弱)となります。