2015年 07月 19日
考えよう流涙症! 始めよう涙道手術! その1 (852)
考えよう流涙症! 始めよう涙道手術!・・・なんてタイトルのWEB講演を聴きにでかけました。折しも台風11号が高知県の南側を北上しつつある日の夕方に。K氏から、講演を聴いて、そのあと一杯・・という誘いがなければ絶対出かけていなかったですが。時折突風が吹き荒れる夕刻に谷町4あたりにあるA社の営業所の一室に到着すると、なんと我々3名だけ。だったら、申し合わせて、やめてもよかったのだが、来てしまったものは仕方ないので、涙道の勉強をすることに・・・
流涙症の診療
- 検査
- 視機能
- 手術
- TS-1について
この4項目についての講演でした。講演内容を思い出しながら、改めて涙について勉強してみることにします。
流涙症の原因 (あたらしい眼科30 臨増 21-22,2013)
分泌性流涙 lacrimation
- 眼瞼:睫毛内反、睫毛乱生
- 結膜:結膜炎、異物、結膜弛緩症
- 角膜:異物、角膜上皮障害
- その他:ドライアイ、ワニの涙症候群
※基本的に刺激があって涙液分泌が増加する場合。
導涙性流涙epiphora
- 眼瞼:顔面神経麻痺、眼瞼外反、眼瞼下垂、下眼瞼弛緩
- 結膜:結膜弛緩症
- 涙道:涙道閉塞、涙道狭窄、涙小管炎
- その他:鼻腔内炎症、副鼻腔腫瘍
- ここでは、涙道が閉塞している場合と、閉塞していない場合がある。
- 流涙というありがちな愁訴は、眼科新患の20%
- 定量困難
- 様々な複数の原因によることが多い・・
1,基本検査
- 問診:サルコイドーシス、薬剤:β遮断剤点、5FU、TS-1など・・
- 涙液メニスカス:写真撮影が重要。
- BUT:ドライアイが流涙の原因になることもあり、短縮していないかどうか要チェック。
- 細隙灯顕微鏡:眼瞼内反・外反、睫毛乱生、マイボーム腺、結膜弛緩症・・
※眼瞼内反による眼表面への刺激。下眼瞼牽引筋腱膜(LER)の弛緩が原因。瞬目で誘発される。
※下眼瞼の弛緩:pinch test(下眼瞼をつまんで8mm以上離れたら陽性)、snap back test(つまんだ下眼瞼が元に戻らないと陽性)。Lateral distraction test, Medial distraction testなど
- 涙管通水検査:一段針で行う。眼瞼を外方に引いて、涙小管が直線的になるようにして行う。
- 鼻涙管閉塞:上下涙点からの逆流、膿の逆流、涙嚢の拡張。
- 総涙小管閉塞:上涙点から通水すると上下から逆流。
- 下涙小管閉塞:閉塞のある涙点からのみ逆流。
- 上下涙小管閉塞:上下涙点ともに通水した涙点からのみ逆流。
- シルマー試験(涙液分泌機能検査)
- CT:涙道周囲特に副鼻腔の病変に注意・・
2,精密検査
- 涙道内視鏡
- OCTでtear meniscus height (TMH)測定 :ここには、眼表面涙液の75-90%が存在。OCTで測定した平均値は正常眼が0.2~0.4mm、ドライアイで0.15~0.25mmらしい。(この写真は、軽いドライアイの友人の写真ですが、TMHは170μm(0.17mm)。使えそう?)
- 涙液クリアランス測定:前眼部光干渉断層計を用いたレバミピド懸濁粒子濃度測定(あたらしい眼科31(12):1867-1871,2014)⇒レバミピド(ムコスタ)を点眼して、TMHとメニスカス内の平均輝度を1分毎に測定。TMHの減少率は、加齢とともに低下する。例えば結膜弛緩症手術前後の評価に使える。
- 視機能との関連:過剰な涙液があると、高次収差が増加し、視力では評価できない、視機能の低下が確認できる。波面センサーで眼高次収差を連続測定すると、1)安定型 2)動揺型 3)のこぎり型(BUT短縮型ドライアイ) 4)逆のこぎり型(流涙症)に分類される(1)2)は正常)。また総涙小管閉塞よりも鼻涙管閉塞の方が逆流する膿・粘液により高次収差大きい。