2015年 10月 21日
色覚異常の復習 その1(884)

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- 2. 色覚異常1 [ 2006-11-13 12:12 ]
- 3. 色覚異常2(第二異常のシミュレーション) [ 2006-11-14 19:16 ]
- 4. 色覚異常 その1 (438) [ 2010-03-25 21:55 ]
- 5. 色覚補正眼鏡について (558) [ 2011-09-14 11:58 ]
- 6. 色覚異常 その2 (578) [ 2011-12-12 11:20 ]
- 7. 色覚異常 その3 (579) [ 2011-12-13 12:00 ]
- 8. 第406回 大阪眼科集談会 その4 (846) [ 2015-06-14 09:43 ]
- 9. 第406回 大阪眼科集談会 その5 (847) [ 2015-06-15 14:30 ]
自分のブログを検索すると、色覚異常のタグのついた文章が9本ありました。今回、近眼連主催の眼科スタッフ教育講座の色覚異常の講演を聴いて印象記を書けという、K氏の依頼を受けたので、ちょっと復習してみようと思います。何だか、色覚異常勉強週間って感じ・・・
かつて小学校4年で全員に行われていた色覚検査が、平成14年に任意の検査となり、結果、平成15年以降殆ど未実施となり、10年ほど経過してやっと平成26年に再開されることになったようです。平成14年に小学校4年生となった子供は、色覚検査を一度も受けることなく、20歳になっているのです。ちょっと計算しますと、平成4年生まれの場合、平成11年に小学校入学し、平成14年が小学校4年なので、受けてない可能性が高く、平成25年に小学校4年だった子供も受けてない可能性が高い。つまり、平成4年から平成15年生まれの子供は要注意? 彼(彼女)らは、一度も、自分の色覚検査結果を知る機会がないまま、受験したり、就職したりしているのです。色覚異常といっても、殆どなんの支障もない軽度なものから、大きな支障をきたすケースまで様々で、本人の努力によって解決しない色の識別困難を抱えたまま不利な進学・就職をしてしまった時に、誰か責任をとってくれるのでしょうか?
差別に繋がるという理由で廃止された色覚検査。廃止を推し進めたのはあの日教組?経緯の詳細は知りませんが、多くの色覚異常を有するものが、特に不自由なく生活できているということの裏側に、一部の色覚異常者が、日常生活において色誤認で困ったり、知らずに成人になって選択した職種によっては、継続困難な状況に追い込まれるかもしれないのです。もともと小学校でしっかりチェックできていたものを何故止めさせてしまったのでしょう。差別につながるのなら、差別がなくなるように、教育するのが本筋だと思うのに、検査をやめてしまうなんて・・・・・
そんな愚痴はさておき、色覚異常の復習です。
日本のある思想傾向の人々や彼らに感化された一部の人達は、この異常という言葉に抵抗があるかもわかりませんが、今回はこの慣れ親しんだ言葉で話しを進めます。色覚異常といっても、テーマは先天色覚異常です。眼球の一番奥には、網膜があり、その感覚網膜を構成細胞の最も奥にある細胞が視細胞です。網膜に光が届いた時に最初にそれを受け止める細胞なので、photoreceptor と呼ばれています。この細胞には錐体と杆体があり、視力や色覚に関わっているのは錐体細胞です。この錐体細胞には、赤を感じる赤錐体、緑を感じる緑錐体、青を感じる青錐体の3種類があります。錐体細胞外節に発現する視物質の異常(視物質を規定する遺伝子の異常)が色覚異常の原因となります。異常3色型・2色覚・1色覚などがあります。多種多様な色覚異常があるのかと言えば、そうでもなく、その殆どは先天赤緑異常で、他の異常は非常に稀です。従って、通常、先天色覚異常と言えば、先天赤緑異常と考えていいと思います。
その頻度ですが、黄色人男性の約5%(20人に1人)(日本人女性でも約0.2% (500人に1人))と言われています。また白人男性なら約8%、黒人男性だと4%程度。日本全体では男性の約300万人、女性の約12万人が赤や緑の混じった特定の範囲の色について差を感じにくいという色覚特性を持っている事になります。この色覚特性がどれほど異常かと言えば、頻度的にみれば、AB型の血液型頻度レベル(AB型は日本人では10%程度ですが、白人なら4%程度だそうですから・・)。
先天色覚異常などと、なんだか生まれつき大きなハンディキャップを背負ったような病名がAB型と同じ頻度なら、病名そのものにクレームが入るのもわからないこともない。異常がダメなら特性と言い換えていいのでは・・・。でも、だから色覚検査が不要かと言えば、それは全く違う筈。ある色覚特性をもつ人たちが、日常生活においてさほど困っていないからと言って、全ての人が自分の色覚特性を知る機会を失う事は、後に困難に直面する人たちを作る事になる筈。ただ、残念ながら、どなたかの努力が実り、平成15年から小学校で行っていた色覚検査は廃止され、任意となってしまいました。実質殆ど行われていないようです。
現在でも、航空機乗組員、航空管制官、航空保安大学校、海技従事者、海上保安大学校、海上保安学校、動力車操縦者(鉄道)、自衛官、警察官、消防官、皇宮護衛官、入国警備官、毒劇薬物取り扱い責任者、ふぐ調理師、競馬、競輪、競艇などでは、制限がありますし、広告、印刷業、塗装関係、映像関係、デザイナー、カメラマン、服飾販売、食品の鮮度を選定する業務など、微妙な色合わせや色識別を要する職業では、かなり困る事も予想されます。その時まで、放置していていいのでしょうか?異常という言葉が厭で騒ぐ人たちが多ければ、面倒くさいけど、○△色覚特性・・などとネーミングすれば済む事では? 平成27年10月某日、平成4年生まれで船舶関係の会社に就職している人が来られました。彼は今まで色覚検査を受けたことがなく、検査すると、石原色覚検査表で誤読が8表以上あって、パネルD15はパスしました。既に3年経過していて、現在の仕事を一生の仕事と認識し始めている彼は、条件が悪いと色誤認が起きかねない・・・ことも自覚しています。彼をこんな悩ましい状況に追い込んだのは誰や・・