色覚異常の復習 その2 (885)
2015年 10月 22日

以前滋賀大学眼科のHPから学んで書いたブログから転記します。
先天色覚異常には、先天赤緑異常、先天青黄異常、そして全色盲の3つがありますが、赤緑異常以外は、非常に稀な疾患なので、通常先天色覚異常と言えば赤緑異常の事になります。この先天赤緑異常について、遺伝子の領域から考えてみます。
青錐体のオプシンは第7染色体にありますが、赤錐体と緑錐体のオプシンはX染色体にあります。詳しく言えば、X染色体の長腕の一番端のXq28。そして、この遺伝子は6個のエキソンに分かれていますが、赤遺伝子と緑遺伝子は並んで存在していて、また大変よく似ているため、DNAの複製が作られるときに、つなぎ方の誤り(不等交叉)が起こりやすく、先天(赤緑)色覚異常が比較的高頻度で発生する要因にもなっているそうです。(ここまでは単純な話・・)
赤錐体と緑錐体のオプシンは、エキソン5で決まる。LとMの遺伝子は6つのエキソンからなり、エキソン2から5においてそれぞれ様々なバリエーションがありますが、エキソン5がL型の配列ならばおおよそL錐体色素に属する吸収特性のオプシンを作り、M型ならおおよそM錐体色素の特性のオプシンを作るのだそうです。様々なハイブリッドが作られて、厳密には、視物質の分光特性は微妙に異なるらしい。
色覚正常者はL遺伝子(赤)を1つと、M遺伝子(緑)を1つ(あるいは複数)持っています(一つでも二つでも色覚に差はないようです)。不等交叉によりL、Mどちらかの遺伝子が欠けると、欠けた方の遺伝子から作られるべき錐体色素ができないので色覚異常になります。遺伝子が1つあるいは1種類のみの場合はL、Mどちらか1種類のオプシンしか作られないので2色覚に(S視色素の遺伝子は第7染色体上にある)、L遺伝子とL型の雑種遺伝子(緑赤融合遺伝子)、あるいはM遺伝子とM型の雑種遺伝子(赤緑融合遺伝子)のように、同じL型遺伝子あるいは同じM型遺伝子なのですが、 タイプの異なる遺伝子が2つあれば異常3色覚になると理解されています。
色覚異常者の遺伝子を調べると、80%の例ではLかMの遺伝子が欠けた(2色覚)で、20%の方が単純な図では説明できない遺伝子の構造を持っており、LとM遺伝子の両方を持っていたらしい。すなわち正常色覚と同じパターンの人も13%に認められたらしい・・。例えば、M遺伝子があるが、M視色素の欠損している(遺伝子があるが色素ができない)((-71A→C))状態だとか・・。
遺伝子レベルの多型は様々で複雑。遺伝子型がわかれば色覚が決まるという単純なものでもないらしい。臨床上の分類は、仮性同色表や色相配列検査やアノマロスコープで行うが、それはそれ、これはこれ・・・?
2色覚と異常3色覚は、色覚検査で同じような結果を示すので、分類としては、
- L錐体が働かないタイプを1型色覚(異常):S+M, S+M+Ma ⇒1型色覚異常:1型の2色覚(いわゆる赤色盲)・1型の異常3色覚(いわゆる赤色弱)⇒1型(P:Protanope) ※色覚障害の25%
- M錐体が働かないタイプを2型色覚(異常):S+L, S+L+La、S+L+M(-71A→C) ⇒1型色覚異常:2型の2色覚(いわゆる緑色盲)・2型異常3色覚(いわゆる緑色弱)となります。⇒2型(D:Deuteranope) ※色覚障害の75%


- 先天赤緑異常 男5%、女0.2% X染色体劣性
- 先天青黄異常 13000~15000に1人? AD ※石原で検出できない
※日常診療で出会う色覚異常は、先天赤緑異常と考えていい。
先天赤緑異常
- 1型 M・S(2色覚)、 M・Ma・S(異常3色覚)(軽症)
- 2型 L・S(2色覚)、 L・La・S (異常3色覚)(軽症)
診断
- 仮性同色表: ①石原式(国際38表) ②SPP1 ③東京医大 ※現在入手可能なものは①のみ?②はまもなく再度発売されるらしい・・
- 色相配列検査:パネルD15
- ランタン (過去の検査)
- アノマロスコープ
- 石原式色覚検査表II国際版 38表:1類表(デモンストレーション)、2類表(変化型)、3類表(消失型)、4類表(隠蔽型)、5類表(分類型)・曲線表(あまり使わない)・環状表があり、1~21表で誤読4表以下が正常。8表以上が先天色覚異常と判定しパネルD15へ。検出率99%。分類(型判定)のアノマロ一致率85.2%(少し悪い)
- 標準色覚検査表 第一部先天異常用(SPP-1):検出率98.9%。型判定も優れている 95.7%
- パネルD15(型判定 99.4%と優れている)
- pass :正常~中等度異常(異常3色覚) ※one error , minor error :pass
- fail :強度異常(2色覚)
- 従ってスクリーニングには、石原・SPP1を用い、パネルD15で程度の判断。型判定も可能だが、確実なのは、アノマロスコープ
- 検査場所の照明も重要で、色比較検査D65蛍光灯がベストだが、昼光色・昼白色 の蛍光灯でも可。電球色はダメ。プライバシーに配慮。表には触れない、筆で・・ ※検査距離75cm
- 色比較検査D65蛍光灯 6500Kがベストらしいが(蛍光灯単体で3000円位?)。卓上蛍光灯の併用ががいい?昼光色蛍光灯(6500K)、白色LED(5000~6700K)でもいい。
- 昼光色(6500K) – D/昼白色(5000K) – N/白色(4200K) – W/温白色(3500K) – WW/電球色(2800K) - L
- 相談:明確な答えはない。入学・就職制限少なくなってるが・・・色誤認は起こる。色を扱う、生鮮食品、交通関係・・・・・・。医療、幼稚園・小学校教員など色誤認に注意が必要。
- 正常と異なる色感覚。赤と緑が似ている。条件悪いと色誤認。色だけでは判断しないくせを・・。最終確認は他人にしてもらうことも必要。
- 親は問いつめない。学習させる。色以外の情報がない場合注意する。劣等感を抱かせない。苦手は誰にでもある。工夫が必要。