選択的レーザー線維柱帯形成術 (SLT) (886)

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※今年もやって来ました・・

選択的レーザー線維柱帯形成術 Selective Laser Trabeculoplasty (SLT)

 今頃、何故この話題なのかは、極めて個人的な事情によるもので、別に世間で話題になっている訳ではありません・・・^^;

大学にいた頃、LTPと称するレーザー治療を行った事があります。Lasertrabeculoplasty の略です。通常アルゴンレーザーで行ったので、ALTと呼ぶこともありました。ただ、病院での緑内障基本術式がトラベクロトミーだったので、LTPするぐらいなら、積極的にロトミーという姿勢だったのと、ハイパワーでやってもローパワーでやっても、長期的には眼圧下降作用が低いこともあり、レーザー治療消極派でした。

 その後、色素を含んだ細胞を選択的に障害し、その周囲の組織を温存する選択的光加熱分解というのが見出され、1995年にSelective targeting of trabecular meshwork cells : in vitro ofpulsed and CW laser interactions Exp Eye Res 60 :359-71,1995)が発表された。日本でのこの方法による治療成績の報告は、2000年頃から出始めました。

ちょっと文献検索してみると・・・

  1. 厚生年金病院 狩野廉(1999) 22.4⇒⊿IOP 4.4mmHg
  2. 琉球大 加治屋志郎(200022.8⇒IOP 8.8mmHg
  3. 札幌医大 前田貴美人(200118.314.2mmHg
  4. 札幌医大 大口修史(200415.413.5mmHg
  5. 札幌医大 田中祥恵(2007180度と360度で差がない。180度で十分。
  6. 山形大学 菅野誠(2007360度の方が眼圧下降良好
  7. 金沢大学 齋藤代志明(2007) 180度照射で、有効なのは6ヶ月で約半数。治療に限界あり。
  8. 大阪大学 山崎裕子(200721.2⇒18.0mmHg3ヶ月)。有効・・
  9. 広島大学 望月英毅(200820.46ヶ月で20%以上の下降が36
  10.   星ヶ丘厚生年金 森藤寛子(2008)眼圧下降率は360度照射の方がいい。1年生存率半周57.4、全周82.2
  11.  福岡大学 尾崎弘明(200821.115.16ヶ月) ※下方半周
  12. 山形大学 田邊裕資(2008)ステロイド緑内障 26.617.73ヶ月)
  13. 豊岡病院 上野豊広(2008) 18.3616.373ヶ月)
  14. 東海大学 松尾祐樹(2009ALT後の再上昇例にも有効だった。
  15. 大阪厚生年金 松葉卓郎(200919.217.21年) 1年生存率:眼圧下降が2回連続10%未満で死亡なら72.1%、20%未満なら34.2% ※360度照射
  16. 関西医大滝井 南野桂三(2009) 22.316.21年) ※全周 0.8-1.0mJ100発ほど
  17. 東海大学 岩崎紳一郎(2009) 白内障手術の有無にかかわらず有効。
  18. 井上眼科 菅原通孝(2010) 22.117.26ヶ月)。3mmHg以上が62.9%、20%以上下降が48.6
  19. 近畿中央病院 森村浩之(2012) ロトミー後でも有効 ※360度、19.214.16ヶ月)
  20. 東邦大学大橋 榎本暢子(2012) 18.8⇒15.96ヶ月) ※360度 
  21. 福井済生会 新田耕治 (2013) NTG 15.8⇒13.53年) 有効!
  22. 千葉大 野々村咲子(2013) 30mmHg以上の症例に。30~4920~257日後) POAGPE
  23. 福岡大学 尾崎弘明(2013) 長期成績 最初下方180度。追加は上方180度。20.214.31年)⇒14.42年) 1. 20%以上の眼圧下降が132.5%、230%。
  24. 山形大学 永沢倫(2014) 21.4⇒? 長期間有効だと・・
  25. 金沢大学 齋藤代志明(2012)緑内障学会 SLT有効だとロトミーも有効で、SLT無効例にはロトミー無効例が多かった。

凄く大雑把な言い方をすれば、それほど大幅な眼圧下降は期待できないが、元の眼圧が高ければ(20近い)45mmHg、低ければ(15前後)2-3mmHg下げる事が期待できて、長期的には徐々に減弱することもあり、再度行えば、再び眼圧下降が期待できるようです。180°照射派と360°照射派に分かれるようだが、後者のほうが若干眼圧下降は良さそうです。またSLTがいくら正常組織を損傷しにくいと言っても、そんなに何回もSLTしている報告はなく(隠れている?)、再上昇すればもう1回やるとして、2年で30%ぐらいの眼圧下降は期待できるようです。勿論平均なので、症例によって、殆ど無効な症例と、更なる眼圧下降が得られる症例がある筈で、この程度の数字が期待できるなら採用すべき手技と判断しました。(ヤグレーザーを買い換えるついでに・・・?) 但し、non-responder3割ほどあるらしいけど、逆に7割に眼圧下降が期待できる?また、SLTが有効なら、その後ロトミーしても有効だとする報告もあり、心強い。充血・霧視・重圧感・・は半数以上で出現するが、数日で消失すると・・

 何故線維柱帯に対する選択的光加熱分解が有効なのか?色素細胞を選択的に障害して、線維柱帯の再構築が行われる過程で防水流出抵抗が減弱するから・・?

 条件は、400μm3nsec0.8mJで、全周に80-100発。線維柱帯全体がターゲットで、照射スポットは重ならないように・・・気泡が生じる最小パワー。色素があれば低いパワーでOK1時間後に眼圧測定すべき。数日、充血・霧視あり。炎症を起こすことが、眼圧下降につながるから(?)、抗炎症点眼は使わない。

※推奨使用コンタクトレンズはLatina SLT Gonio YAG Laser Lens? 

http://www.re-medical.co.jp/wp-content/uploads/2014/08/ocu_laser.pdf

この手技は、何度も行えるということもあり、観血的治療、つまりトラベクロトミーに代表される流出路系手術とトラベクレクトミーに代表される濾過系手術の適応をしっかりもっておかないと、手術時期を逃してしまいかねないので、若干冷ややかな眼で眺めてましたが、そのポイントさえ外さなければ、SLTは、線維柱帯経由の房水流出を促進する手技であり、この主経路を介する強力な眼圧下降作用をもつ点眼は、多くないので(実質グラナテックのみ・・)、最初にこれをやる・・というスタンスもあるそうです。更に眼圧下降が必要なら、ぶどう膜強膜流出路促進(PG製剤)や房水産生抑制(β遮断・CAI)効果のある点眼を追加する事は理にかなっている・・気もする。既に多剤併用されている場合にはSLTの効果が低いと言われていますが、目一杯治療していて、それでも眼圧下降が不十分な場合、

①例えばキサラタンとアゾルガが入っていて、眼圧が1520の間で推移していて、視神経乳頭所見や視野所見から判断して、もう少し下げたい場合。②キサラタンとミケランが入っていて、眼圧が1216の間で推移していて、視野(OCT所見)が徐々にではあるが悪化していて、もう少し下げたい場合。・・・・・に、適応ではないだろうか。個人的な見解だが、一般に流出路系手術の場合、術前平均眼圧が15以下だとなかなかオススメしにくいし、濾過手術は、術後の事を考えると、視機能の喪失が濃厚な場合以外は、オススメしにくい。観血的手術適応のある患者さんの全てに、手術の同意が得られる訳ではないし・・・、ただためらっている間に視機能が悪化するのを見守るだけよりは、SLTで少しでも眼圧下降が得られるなら・・・と考えてみました。


by takeuchi-ganka | 2015-11-02 15:43 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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