第6回関西Glaucoma Update その1 (894)
2015年 11月 28日

同窓会の勉強会の後は、マニアックな緑内障勉強会。なんて勉強好きなんでしょう・・?ただ、必死にメモを取りながらの聴講は、結構疲れます。勉強会をハシゴすると情報量は、小さな許容量を完全にオーバ➖してしまい、貴重な情報がオーバーフローしてしました。
第6回関西Glaucoma Update
特別講演
角膜疾患と緑内障診療 松下賢治 阪大講師
眼圧測定は、角膜を介して行うので、角膜に問題があれば、眼圧測定は困難だし、乳頭所見もとりにくいし、OCTも撮れない・・・。深い関わりをもつ角膜疾患と緑内障。まずは上皮から・・・
1)角膜上皮幹細胞疲弊症
阪大病院の緑内障患者は、高眼圧な症例が多くて、多剤併用していることが多い。上皮のバリア⇒タイトジャンクション:緑内障点眼はここを通過する。一番問題なのは、点眼に含まれる防腐剤⇒BAC濃度:0~0.02%(0.01を超えると問題が多い?)。上皮障害の原因は、BACと加齢。点眼でSPKが出現するが、特に緑内障点眼で増加。2剤以上だと更に増加。BAC濃度0.01を超える事になるので・・・。また、ドライアイがあって、キサラタンを点眼している患者さん、トラバタンズにスイッチしてみると⇒上皮スコア↓(ドライアイがあれば↓↓)。BACは上皮障害の原因となっているが、ドライアイがあると、強調される。症例提示⇒症例1 86歳男性 チモプトールとキサラタンで治療。薬剤性角膜上皮障害(ハリケーン様)⇒トラバタンズ、ソフトサンティア(wash out目的)、タリビッド眼軟膏で治癒。症例2 53歳PDRでNVG。トラバタンズ・XE・エイゾプト・ヒアレイン⇒まずヒアレイン中止して、ソフトサンティア頻回(washout目的)。症例3 55歳ザラカムで、角膜中央にSPK(++)、霧視。⇒中止して、ソフトサンティア頻回点眼(wash out目的)、タリビッド眼軟膏⇒最終的にミケラン
2)角膜内皮障害と緑内障
60歳男性で、近医でPSS。眼圧Max60mmHgで、年に5回ほど発作。徐々に発作回数↑、眼圧下降不良、視野欠損、発作時散瞳。視力1.2/0.6(n.c.) Td/Ts=19/16、内皮2706/2139。開放隅角で左眼色素↓↓。KPはいつも同じ場所に出現⇒CMV疑う!房水でCMV検出、1%GCV点眼×6で眼圧下降、頻度低下、上昇期間短縮。3年続けていると・・レクトミーへ。
※PSSに似ているが、GON進行するケースやKPが同じ場所に繰り返し出現、内皮減少⇒CMV疑え
※ACAID:眼内(前房内)に異物 ⇒ 抗原提示細胞が捕食⇒血流にのって、末梢リンパ組織へ(脾臓)⇒ここでTリンパ球に抗原提示⇒抑制型Tリンパ球が優先的に誘導(免疫反応を抑制)。このシステムは、前房関連免疫偏位(ACAID : anterior chamber associated immune deviation)と呼ばれる。角膜移植が成功は、このACAIDのお陰。ACAIDを阻害する要因(術後炎症・術前感染症など)があると、手術合併症が起こりやすくなる。CMV感染はこの影響?
http://takeganka.exblog.jp/17824152/
※peripheral coinlesion? 慢性線維柱帯炎⇒内皮⇒コインlesion⇒100%CMV
※GCV点でIOP安定、頻度↓、発作期間↓
症例提示 46歳女性 1990年頃PSSとして加療。93年ロトミー、2000年頃ステロイド点眼で対応、07年白内障手術
⇒ステロイド離脱困難、CMV検出(房水PCR)⇒湖崎眼科から阪大へ紹介。視力1.5/1.5、Td/Ts=12/15、内皮1485/1820。デノシン点眼開始して、発作回数減少。ただ、2012年から諸事情で0.5%デノシンしか使えず、眼圧上昇。ロトミーして有効。
CMV関連疾患
- 前部ぶどう膜炎
- 角膜内皮炎
- フックス虹彩異色性虹彩毛様体炎
- ポスナーシュロスマン症候群(PSS)
※慢性線維柱帯炎:初期のCMV内皮炎の可能性。手術でACAID破綻⇒免疫↑、眼圧下降?
3,角膜難治症例
バルベルト2タイプ、15mmHg位に・・、成績良好。合併症 低眼圧・チューブ閉塞・強膜弁損傷
症例提示
- SJS、続発緑内障:様々な手術が複数回行われ・・・遷延性角膜上皮欠損(眼圧上がってると治りにくい)⇒BGI
- 右眼失明、左眼角膜ヘルペス角膜実質炎⇒角膜手術6回、緑内障3回⇒BGI⇒角膜移植⇒チューブ閉塞・・・
- モーレン潰瘍(全周) 様々な移植手術5-6回⇒Boston Kpro⇒眼圧測定困難⇒視野悪化のようで、BGIは、IOLの後方にチューブ入ってしまったが何とか眼圧下降
※皆覚えているだろうが、その昔(多分20年以上前)、私が兄と慕う某先生はPSSの中に、徐々に視野が悪化するものがあると言われていて、ロトミー行っておられました(それだけじゃないけど・・・)。アシクロビルも・・?常識にとらわれた私はちょっと驚いて見ていたものでした・・・・^^;

PSSでステロイド緑内障を発症していない場合でも、レクトミーではなくロトミー系でも有効な場合があるということでしょうか。レクトミーの方が効くと思いますが、デメリットが多いので、ロトミー、トラベクトームなどでも期待できる要素があるといいのですが・・・。
PSSでロトミー後の中長期的な情報が少ないのでいろいろ考えてしまいます。
繰り返すPSSで寛解時の眼圧下降が高くなれば、ステロイド緑内障の要素を否定出来ない気もしますが、個人的にはステロイド緑内障の要因が強いと判断すればロトミーでしょうし、そうでなければレクトミーでしょうか・・・