第412回大阪眼科集談会 その3（948）
2016年 06月 13日
特別講演
中心性漿液性脈絡網膜症と加齢黄斑変性 五味文 兵庫医大教授
住友病院の部長さんだと思っていたら、兵庫医大の主任教授になられたようです。今回はCSCのお話。関係ない話だが、いつも患者さんに説明するとき、中心性漿液性脈絡網膜症って名称はちょっと長すぎる。誰かもっと短い病名を考案してくれないかなあ・・・。せめて中心性網膜炎ぐらいの字数で。
CSCの一般的な印象は、30－40歳の男性に好発、A型気質の人に多く、ストレス・タバコが誘引で、片眼に生じ、FAして漏出があれば、光凝固する。ただ、そんな典型例以外のケースがかなり多くて、そちらが大問題？50歳以上・再発例・視力不良例・両眼性・黄斑外病変など・・・・。ICGやOCT所見は両眼性であることが多い（脈絡膜血管透過性亢進・pachychoroid）。保険適応外だがPDT有効。151例172眼のCSCのスタデイで、60歳以上が39.5％だったと。高齢者の比率かなり高い。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15933586
推定メカニズム⇒ ①脈絡膜血管透過性亢進（IAで確認。その上の網膜色素上皮ダメージ）⇒②網膜色素上皮への圧負荷（PED）⇒③裂隙⇒④SRD
※OCTのen-face画像で脈絡膜の中大血管を見ると、38歳を基準にすると、80歳はスカスカだし、CSCの45歳は非常に蜜。脈絡膜厚も、正常者266だが、CSCは445、その僚眼でも378と厚い。
症例39歳男性。何度も繰り返すCSC。OCTでPEDが幾つかありRPE欠損部分も検出。別の漏出部分を光凝固して治療している間に、このRPE欠損部分が修復された。脈絡膜透過性亢進も改善。漏出点が少しづつ移動し、その都度光凝固していたが、最後に黄斑部に高度のフィブリン析出。中心窩付近の網膜色素上皮裂隙から漏出増大⇒PDTして、SRD(-)へ、脈絡膜血管透過性も低下し視力も改善。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20472289
CSCに対するPDTの効果：通常の光凝固なら脈絡膜厚は変化ないが、PDTなら389、2日後462、1ヶ月後330へ。特に中心窩付近の漏出には光凝固できないので、PDTが有効。IAによる脈絡膜血管透過性亢進を調べると高度の場合PDT有効で、中等度・弱度の場合PDT効きにくい。
http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20172070
49歳男性 数年前から視力悪い。OCTで剥離網膜が菲薄化。視細胞も脱落。PDTで剥離消失しても視力改善しない。ついで、44歳男性 数年前から視力悪い。網膜色素上皮変性、脈絡膜血管拡張、CME様所見・・・PDTで剥離もCME様所見も消失したが視力改善ない。⇒ 慢性に経過して、再燃繰り返し、網膜が菲薄化してしまうと、視力改善が望めないので、その前にPDT？
SRDのないPEDについて：加齢黄斑変性？PCV？CSC？診断確定困難なこともあるが、PDT有効だと。
57歳男性 4年前黄斑異常？PED多発、SRD(+) ⇒ 抗VEGF併用PDT
50歳男性 両眼下方胞状剥離、黄斑部黄白色班・・OCTでSRD・CME・脈絡膜肥厚・・・CSCをステロイドが修飾して重症型に・・（これってMPPE？）⇒ PDT有効
ステロイドとCSC ： ステロイド大量投与（点滴・内服・・）⇒脈絡膜厚↑ ⇒CSCに発展することも・・・
Pachychoroidpigment epitheliopathy ： 脈絡膜肥厚⇒網膜色素上皮障害
Pachychoroidneovasculopathy ：脈絡膜肥厚・拡張脈絡膜血管直上に1型CNV、PCV、長期経過のCSC・・
68歳CSCの既往のPCV ⇒ 抗VEGF併用PDTがいい
85歳、79歳高齢のCSCにも 抗VEGF併用PDTがいい？
※まだまだ臨床概念は定まっていないようで、香川大学では、調査が始まったようです。
http://www.med.kagawa-u.ac.jp/hosp/archives/011/201508/55c80b19e0f06.pdf
（昔のS先生の姿からは想像できないほど立派になったね・・）
※PDTにより脈絡膜血管透過性が減少し、脈絡膜厚減少するが、血管閉塞は生じていない。もともと新生血管に対して閉塞効果が期待された治療だが、意図されていない作用があるのかもしれない。何でも抗VEGFではなく、IAで脈絡膜血管透過性亢進が確認されたら、PDTの併用も考慮すべき。
