2016年 06月 24日
第12回大阪角膜フォーラム その2 (952)
2,オルソケラトロジーアップデート 平岡孝浩 筑波大学
もともとこの治療に対しては懐疑的なスタンスであったが、今回はかなり真っ当な内容の講演・・・。
リバースジオメトリーレンズ:①ベースカーブ(BC)②リバースカーブ(RC:tearreservoir zone)③アライメントカーブ(AC)④ペリフェラルカーブ(PC)
ただ、現時点でも、オルソケラトロジーによる矯正原理は、確立されていない・・・事に驚く。何故角膜が扁平化して近視が矯正できるのか・・・という矯正原理がわかってないということは、長期的な安全性だって・・・・大丈夫?出発点は知らないが、少なくとも扁平なレンズをのせて角膜を扁平にする・・・という原理ではないらしい。結果として得られる角膜屈折力の低下は、角膜後面を含めた全体の変化ではなく、角膜前面の変化によるもの(anterior corneal surface change:主として上皮細胞)らしい。BC部分の角膜上皮が薄くなり、RC部分の角膜上皮が厚くなっている。つまり驚いた事に、ここまで普及したオルソケラトロジーだが、何故角膜屈折力が減少するのかも、角膜のどの部位の変化なのかも、正確にはわかっていない?ただ、おそらく角膜上皮の変化が主体なので、大きな屈折力の変更は期待できない。対象は中等度以下の近視。
1,光学的質
prolate形状(中央の屈折力が周辺部より強い形状)の角膜をオルソケラトロジーによって、oblate形状(周辺部の屈折力が中央より強い)に。安定して視力も出るのだが・・・、角膜トポ上では、非対称成分増加。矯正量が大きいと、コマ収差・球面収差大きくて、コントラスト感度低下し、光学的な質は低下する。オルソケラトロジーレンズの偏心も矯正量が大きいと大きく、コントラスト感度が低下。患者満足度も、矯正量大きいと下がる。⇒近視矯正量は少ないほうがいい(ー4D以下が望ましい)。
2,近視抑制効果
次に、まさかの近視抑制効果。近視が増加している。病的近視は深刻な問題となっている。何とか近視の進行を抑制することはできないか?様々な実験やトライアルが行われて、徐々にだが近視進行のメカニズム、近視進行抑制の方法が明らかになりつつある。過度の近業が×、都会生活×、IQ高いと×、屋外活動○、両親近視だと×××・・・、ただ今の日本では非現実的?近視抑制方法には、光学的方法として、①累進屈折力眼鏡②オルソケラトロジー③多焦点コンタクトレンズ、薬物療法としてアトロピン。
近視抑制メカニズム
軸外収差理論(周辺部遠視性デフォーカス):①累進屈折力眼鏡(MyoVision)⇒両親が近視の場合だけでも抑制効果ありとされていたが、筑波大では××。②Peripheral additional SCL(30%程度抑制?)③オルソケラトロジー(32~63%抑制)、日本でのスタデイ5年間で30%抑制。2012年初のRCTで43%抑制(ROMIO)。その後エビデンスレベル1のスタデイが4本も有効だと・・。またトーリックOKも有効(52%抑制)。最も期待できる近視抑制手段?! オルソケラトロジーの10年経過成績は、眼鏡やコンタクトレンズより抑制効果高かった。Twinスタデイでも、眼鏡より有効。
※学童期の近視進行は、角膜収差と相関が強く、全高次収差が多いと近視が進みにくい・・・らしい(偽調節が大きく、焦点深度が深くなるから・・)。
オルソケラトロジーの有効性は、当初角膜中央が扁平化して、周辺部の屈折力が増加する効果が、周辺部遠視性デフォーカスを改善するから・・説明されていたのだが、どうも、多数のオルソケラトロジーのスタデイの結果解析から、軸外収差理論(周辺部遠視性デフォーカス)にも疑問が・・?どうも、コマ収差↑⇒偽調節↑⇒毛様筋負荷↓⇒近視抑制へと・・・つまり ⇒ 機械的張力理論(アトロピンも同じ)?
感染性角膜潰瘍のリスクは?
特にポピドンヨード製剤の使用した、しっかりとしたレンズケアを行い、レンズは1年で交換、ケースも洗浄・乾燥をしっかりやって、3ヶ月程度で交換すれば、シリコンハイドロゲルSCLの連続装用よりは、感染リスクは高くない?