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第7回関西Glaucoma Update その1(954)

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いつの間にかハルジオンと、ヒメジョオンが入れ替わっていた^^;この花は、ヒメジョオンです。
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この花は、ハルジオン。

第7回関西Glaucoma Update

この関西Glaucoma Updateという勉強会は、後輩思いの湖崎が、関西医大眼科の緑内障スタッフ及びOBに、全国から有名な先生を講師に招いて、講演と質疑を通じて、貴重な勉強の機会を提供しようと企画した会で、今年で7年目です。後輩の諸先生に、湖崎の思いは伝わってるかな・・・?

イントロダクション1 三木弘彦

ついついマイナー扱いされがちなPACG)ですが、頻度はPOAG1/3ぐらいなものの、重症例(失明)が多く、緑内障の失明原因としては、50%を占める。想像ですが、発作を起こすまで全く無症状の急性PACや、相当進行するまで無症状な慢性PACは、ある程度進行するまで無症状のPOAG(NTG)よりも、見つかった時点での重症度が高く、失明しやすい・・・ということらしい。

  •  瞳孔ブロック Laser iridotomy
  •  プラトー虹彩 Laser gonioplasty
  •  Lens induced glaucoma PEA+IOL
  •  Malignant glaucoma  Vitrectomy

これでいいのかな?

特別講演① 閉塞隅角緑内障を読み解く 神戸市立医療センター中央市民病院 広瀬文隆 先生

いつまでたっても馴染めないのだが、ピーエーシージーと読んでいた疾患をパックとかパックエス・パックジーなどと呼ばねば取り残される時代になったようです。あのひと未だに、ピーエーシージーなんて言ってると若い奴に言われたらたまらんし・・・仕方ない・・・^^;  ということで、分類は、PACSPACPACG3つに別れる。PACPACSとの差は?ガイドラインによれば

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付記 1)原発性の隅角閉塞の診断は,第一眼位において対光反射による縮瞳に伴う隅角開大,隅角鏡による圧迫を可能な限り排除して行う静的隅角鏡検査(static gonioscopy)によって行うことが推奨されている.隅角鏡診断による隅角閉塞を欧米では occludable angle(閉塞の可能性のある隅角の意味,邦訳なし)と呼ぶ.隅角閉塞は,線維柱帯色素帯が隅角全周の 34(270 )以上にわたり観察されず虹彩線維柱帯間の接触が推測される(iridotrabecular contact:ITC)として定義することが提唱されているが,範囲を 180 度以上または少しでも閉塞があれば,と定義すべきとの意見も存在する.超音波生体顕微鏡や前眼部光干渉断層装置などによる画像診断の位置づけも未だ明確でない.

・・・・・こんなことが書いてある。単に隅角が狭いからPACSなのではなく、かなり細かな定義となっている。PACS隅角閉塞というのは、第一眼位で、光も当てず、圧迫もしないで、『線維柱帯色素帯が隅角全周の 34(270 )以上にわたり観察されない』状態を言うらしい。つまり、例えば、光もあてず(縮瞳させないで)、圧迫もしないけど、そっと隅角鏡を傾けて、また眼球も少し動かしてもらって、隅角が開いていると判断される場合、定義では、『虹彩線維柱帯間の接触が推測される(iridotrabecularcontact:ITC)』か、機能的隅角閉塞がある事になっている。個人的は、納得できないのだが・・・。ガイドラインを作った大御所に盾突くつもりはないけど、PACSの定義に当てはまる症例をUBMや前眼部OCTでみたら、全く見かけ上の閉塞すらない症例にしばしば遭遇する。つまり、定義の最初からちょっと納得いかない・・・部分もある。

PACに関しては、隅角閉塞+(眼圧上昇±隅角癒着)とある。

つまり、隅角閉塞に関しては、PACSと同じで、第一眼位で、光も当てず、圧迫もしないで、『線維柱帯色素帯が隅角全周の 34(270 )以上にわたり観察されない』状態。これに加えて、圧迫隅角で癒着が確認されるか、眼圧上昇があるか、その両方がある場合がPACとなる。まだ、この時点は、GONはない。ここでも、へそ曲がりな私は、先ほどの、実は、そっと傾けて隅角を覗き込むと接着すらなく、開いている超狭隅角や、UBMや前眼部OCTではやはり開いている超狭隅角に眼圧上昇を伴っている場合を想像してしまう。これなら、高眼圧症+狭隅角かもしれないし、GONが加わっても、PACGではなく、POAG+狭隅角かもしれない。

定義としては、難しいが、眼球を動かして、隅角鏡も動かして、精一杯頑張って、隅角の底を覗き込む。勿論光は、極力絞って対光反射は抑えながら、それでも、僅かでも開いていることが確認できないほど狭ければ、『第一眼位で、光も当てず、圧迫もしないで、『線維柱帯色素帯が隅角全周の 34(270 )以上にわたり観察されない』状態』よりは、ずっとPACSはピュアになるのかも。その上で、光を入れて、ハーグのスリットなら、ステレオバリエーターを入れて、しっかり圧迫して器質的PASの有無を確認する。時にはサスマンも動員。これで癒着が確認できれば、やっとPACと言っていいと思う。・・・・というか、ずっとそうやってきたので今更。

ただ、眼圧上昇に対する評価は別だ。眼圧が右30、左15だとしたら、右眼が30まで上昇する原因を説明可能な隅角閉塞が確認出来なければ、POAGの要素を捨てきれない。この上昇した眼圧を説明できる隅角所見を読む事が、緑内障診療の大切な仕事だと思っています。ガイドラインに、そんな微妙なものを持ち込めないのは理解できるが、ガイドラインに頼れば、瞳孔ブロックが原因のPASが少しあって、POAG要素も持ちあわせる眼は、PACGとなってしまわないだろうか・・・。

広瀬先生の話をまとめようと思いつつ、またまた妄想で突っ走ってしまった・・・話を戻そう。

PACGの現状

 三木先生のイントロにあったように、PACGPOAGよりずっと少ないのだが、POAGを眼圧上昇している教義のPOAG(全体の8%)に限れば、PACGの方が2倍多いし、女性に限れば4倍も。

The number of people with glaucoma worldwide in 2010 and 2020. Br J Ophthalmol. 2006 Mar;90(3):262-7. Quigley HA, Broman AT.

両眼失明リスクは、POAGPACGは同等だと。

画像診断

 スリットで、van Herick法であたりをつけて、1/4以下(グレード1-2)なら隅角鏡検査へ。ただ、この検査は客観性に乏しいので、UBMや前眼部OCTも併用すると。虹彩は動いていて、瞳孔ブロックも変動している。隅角鏡検査も暗所で若干散瞳気味な状態で行う。

  1. 瞳孔ブロックタイプ:暗所で散瞳に伴い瞳孔ブロック上昇に伴い隅角が狭くなるタイプ。
  2. プラトー虹彩タイプ:暗所で虹彩根部厚が増加して、隅角が狭くなるタイプ。

  • 前眼部OCTUBMのパラメータで言えば、散瞳でITが上昇するのが、プラトー虹彩で、ICが上昇するのが、PBタイプ。
  • UBM検査に携わっているものには常識だが、上下が狭く、耳鼻が広い。スリットのvanHerickで見ているのは、その広い耳鼻側であることに注意が必要。

負荷試験

  •  散瞳試験(MRT
  •  暗室試験(DRT
  •  うつむき試験(PPT
  •  暗室うつむき試験(DRPPT

MRTは予測性高く、有用かもしれないが、リスクも高いので、DRTPPTを組み合わせたDRPPTが有用だと。8mmHg以上上昇で陽性。5以下で陰性。このDRPPTをグレーゾーン症例に行って、ハイリスク群を選り分ける?隅角形状から間違いなくこれだけ閉塞していれば、この眼圧上昇は隅角閉塞が原因と思われる場合や、狭いものの十分に開放されていて、眼圧上昇の原因になっていると思われない場合はいいのだが、その間のグレーゾーンケースに対して、DRPPTを行い、リスク評価を行う。

治療

  1. 周辺虹彩切除術
  2. レーザー虹彩切開術
  3. 水晶体摘出術

レーザー虹彩切開術の件数(永田眼科)も、平成12169平成1714件と激減。つまり、レーザー虹彩切開術後の水疱性角膜症リスクが危惧され、おそらくPACSには行わなくなったから? 

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演者の話とは関係ないが、この図は、20年以上前に講演で使ったスライドだが、1980年からレーザー虹彩切開術が激増し、周辺虹彩切除術が激減。しかもトータル件数も激増していることを示しています。日本では、1983年ぐらいにこの現象が起こっている。レーザー虹彩切開術と周辺虹彩切除 術が逆転すると同時にトータル件数が激増していることが問題で、明らかに手術適応が変化(拡大)したということ。観血的には手術に踏みきれなかったPACSPACの一部に、レーザー虹彩切開術の適応が広がったということ。それから、25年ほどして、レーザー虹彩切開術の合併症が怖くて、再び手術適応が狭くなったのでしょう。個人的に問題だと思っているのは、レーザー虹彩切開術の手術適応を狭くするのはいいのだが、だからといって、PEA+IOLや周辺虹彩切除術が行われない場合、PACSPACの一部、場合によっては、PACGの一部も瞳孔ブロックが解除されないままになるリスクを受け入れる必要がある。

※イントロダクションで、PACGは少ないけど重症例が多く、失明人数は、POAGと変わらない・・・と話が出たのだが、これでは事態を改善できない・・・?またまた話がそれてしまった・・・。

PACS)のハイリスク群を選り分ける為の、DRPPTだが、レーザー虹彩切開術後のDRPPT陽性率も不変・・・という結果が(ただ、強陽性(15mmHg以上)はレーザー虹彩切開術後ゼロに)。

レーザー虹彩切開術に代わる水晶体摘出の適応は、

白内障があれば、問題ないし、白内障が軽度でも遠視があって、屈折矯正を兼ねられるのなら、水晶体摘出していいと思うのだが、白内障がないか、あっても全く不自由を感じていない場合にどうするのか?

  • PACGは、積極的に手術。
  • PACは、①PEA+IOL②レーザー虹彩切開術③経過観察。
  • PACSは?

※通常の白内障手術よりも、チン小帯断裂や術後眼圧上昇多い事に注意。

APACは?

薬物治療が寛解に持ち込めたら、レーザー虹彩切開術かPEA+IOL。薬物治療で寛解に持ち込めなかったら、周辺虹彩切除術/レーザー虹彩切開術して、その後PEA+IOL

APACになった9眼に、事前にDRPPTが行われていて、陰性は1眼だけだったと。DRPPT陽性はハイリスク群と考えていい。

将来APACになるかどうかの予測は?ACDが有用。APAC1.407mmCPAC1.961mm。たまたま大学で20年ほどUBM外来をしていた経験から、完全に同意します(http://takeganka.exblog.jp/13559213/)。1,7mm以下はハイリスクでしょうし、2.1mm以上あれば、安心していいと思いますが、このACD1.72.1mmは迷う事になります。そこで、DRPPTを行い、陽性なら予防必要、陰性なら経過観察。疑陽性なら迷う・・・。つまり、シンプルだが、ACDが一番重要。 

ACDの評価方法として、van Herick法のように周辺部じゃなくて、中央での深さを、ACD/CCTで判断。CCT517μmぐらいなので、ACD/CCT<3ならハイリスク、>4ならローリスク。3-4は迷う。

※最後に、提示された悪性緑内障症例だが、IOL眼の悪性緑内障の場合、極端に浅くない前房深度なので、判断に迷う事があるだろうが、この場合前眼部OCTよりUBMの方が有用で、UBMで毛様体の突起部の形態(図)をみれば、診断がつく筈では・・・・第7回関西Glaucoma Update その1(954)_f0088231_16323189.jpg

DRPPTの実際だが、暗室でうつむいた後、眼を開けて診察室まで歩いてきたのでは意味が無い。暗室でうつむきが終了したら、眼を閉じたまま下向いたまま診察室に誘導して、さっと眼圧測定へ・・

PACS)の白内障術前散瞳をミドリンMでしているらしいが、これはネオシネジンがベターじゃないのかなあ・・・

※レーザー虹彩切開術は、アルゴンでストレッチしてから、ヤグ?それとも、どこか上でも下でもいいから、薄い場所を一発ヤグ?



by takeuchi-ganka | 2016-06-29 16:33 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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