VDT症候群

VDT症候群の呼び名は、テクノストレス眼症、最近では、IT眼症と呼んだりします。

だいたい同義語のようですが、
 日本眼科医会のVDT研究班が、それまでVDT症候群と呼んでいた障害を、テクノストレス眼症と命名し診断基準を示しました。

   診断基準として、

a.眼精疲労があること、
b.頚、肩、腕、手指などに痛み、しびれ等の異常があること、
c.精神神経系に異常があること


の3項目のうち
a,b,cを有するものを完全型、
a,bまたはa,cを有するものを不完全型、
aのみの者を疑いとしました。

これらどれもは、パソコン画面を見る仕事をしている人におこる 眼の異常と心身の異常の両方を含みますが、今回は、眼科としての話ですので、眼の話だけにします。

 VDT症候群は、

1、眼の疲れ      (普通の疲れ。休めば治る。)
2、病的な眼の疲れ  (眼精疲労)
3、2に含まれるかも知れませんが、IT作業中のドライアイ

この3つが眼に関する症状ということになります。

1、眼の疲れ  
走れば疲れるように、眼も使えば疲れます。ただ、休めば治ります。当然、VDT作業でもこの眼の疲れは症状のメインとなります。
 不適切な輝度の画面、瞬目不全によるドライアイ、部屋の照明、温度、湿度、机、椅子などの外的要因に加え、心理的要因が絡まって症状がでます。
 快適に見える範囲を超えて、ゆとりのない状態で見れば、疲れるわけです。

2、眼精疲労
  これは、病的な眼の疲れで、休息によって容易に回復しないのが特徴です。
  これは、3つの要因があります。


①視覚器官にかかわる要因
②心的要因
③環境要因




これは、言い換えれば、


①眼の能力
②耐える力
③眼の使用(環境)




となります。

 眼の能力が低ければ、耐える力が足りなければ、環境が悪ければ、
さほど作業してなくても、眼精疲労となります。3つの要因のバランスによって発症するわけです。これに、どの程度休息をとるかという第4の要因も絡んできますが・・・

そして、
①眼の能力に関しては

・軽度の近視が一番作業に適した眼で、遠視は疲れやすい。
・近視でも、眼鏡・コンタクトが不適正なら疲れやすい
・老眼の初期(30歳後半から40歳前半)は非常に疲れやすい。
・眼位異常(斜位)があると疲れやすい。

などの要因があります。

②内環境要因・心的要因については

・作業姿勢の長時間の維持からくる頸肩腕障害があると我慢できない
・作業の単純さは耐え難い
・ソフトの使いにくさ・機械の故障も耐え難い
・ペースが機械本位は、厭だ
・新技術導入で、培われた技術・能力が無効になるのも我慢できない。

などが、耐える力を奪っていくことになります。

③外的環境要因

・ディスプレイを見ることそのものが、従来の事務作業に比べ、視覚負荷が大きい。
・ディスプレイ、キーボード、書類という3次元的な眼の動きが必要で、この注視距離の異なる3つに対して、調節・輻輳を繰り返す作業の視覚負荷は、単純事務作業に比べてはるかに大きい。
 
先にも述べましたが、この3つの要因のバランスによって、眼精疲労は発症するわけです。

最後にドライアイですが、これは、VDT作業とは別個にもおこるのですが、もともとドライアイ気味の人なら、VDT作業することによって、瞬きの回数がぐっと減るので、涙液の蒸発亢進によるドライアイが発生しやすくなります。また、コンタクトレンズをしていると一層ドライアイ生じやすくなります。オフィースワーカー1025人の調査結果は、31.2%がドライアイ確定例。疑い例が43.8%で、あわせて75%となったのは有名です。

眼精疲労の症状としては、

・疲れる
・重い
・まぶしい
・奥が痛い
・かすむ
・充血する
・ひりひりする
・ゴロゴロする
・ショボショボする、


など多岐に亘ります。

眼の症状以外には、


・頭痛
・肩こり
・首筋や背中の痛み
・めまい
・吐き気
・イライラ


など、全身症状が現れることもあります。

※例えば、40歳前後の人の場合、初期の老眼の状態ですが、通常は、老眼鏡をしていません。ただ、10歳で10D以上あった調節力は、半分以下の4Dとなっています。VDT作業によって、その4Dの調節力が、半分の2D以下になったりすれば、25cmまでみることができる状態が、50cm以上離さないと見えにくくなったりします。この状態になれば、焦点が合わない、焦点があうのに時間がかかるといったことがおきるわけです。
※また、このようなVDT作業の増加が原因かもしれませんが、従来20歳過ぎれば止まるといわれていた近視ですが、20歳過ぎてから、発症したり、進行したりする近視が見られるようになりました。

 治療

治療法は、原因に対する治療が基本となります。
①まず、眼疾患があれば治療し、適切な眼鏡やコンタクトレンズの使用する。
②内環境要因・心的要因については、作業姿勢の改善ぐらいはできるでしょうが、仕事そのものは、変えようがないでしょう。
③外的環境要因については、ディスプレイの改善ぐらいしいかできないでしょう。
つまり、正しい姿勢で、適切な眼鏡を装用することぐらいしかありません。まあ、この適切な眼鏡というのは、重要で、適切でない眼鏡をしている人は、結構多いと思われます。

 さらには、ドライアイがある場合は、その対策を追加する必要があります。これについては、ドライアイの時にお話したように、人工涙液・ヒアルロン酸の点眼や、パソコンモニターの位置を下げたり、加湿器を使ったりするわけです。

 そして、一番重要なのが休息です。
平成14年4月に厚生労働省から出されたガイドラインでは、VDT作業をA・B・Cの作業区分に分類し、作業負荷の大きい、区分A、区分B作業者に対して、労働衛生管理を行うこととした。その中の、作業時間管理については、

 『一連続作業時間が1時間を超えないようにして、次の連続作業までの間に10~15分の作業休止時間を設け、かつ、連続作業時間内に1-2回の小休止を設けること』 

 なかなか、実現困難な指示であるが、このようなことに心がけることが、眼精疲労を予防する最善策と思われます。  

ここまで読んでもらえるかどうかが問題ですが・・・
 以上のように、単なる眼の疲れといっても、なかなか面倒なのです。これを怪しげなサプリメントに高額支払って解決することは100%ありません。
Commented at 2007-11-28 13:40 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
Commented at 2008-08-01 10:13 x
ブログの持ち主だけに見える非公開コメントです。
by takeuchi-ganka | 2006-07-05 14:20 | 眼の疲れ | Comments(2)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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