2016年 12月 13日
狭隅角について(2016) (983)

嘉門達夫 〜世相を笑い飛ばすツアー2016
※写真・動画なんでも自由なコンサート☺
狭隅角の予防的治療について
狭隅角といっても、色々あって、それを客観的に評価して、将来起こりうるリスクを正確に提示することは困難だと思う。基本的には、①瞳孔ブロックと②プラトー虹彩形状そして③水晶体の3つの要素が組み合わさって狭い隅角となっている。前房が浅くなれば強くなる瞳孔ブロックの要素と、それとは関係なく存在する虹彩根部の形状に由来するプラトー虹彩形状。昔は、プラトー虹彩は、特殊で稀なものと考えていていたが、UBMや前眼部OCTの普及によって、しばしば遭遇する虹彩根部形状であることが明らかになった。
狭隅角を診た時どうするか。
1)殆どの眼科医がそうだと思うのだが、経験上、この程度なら大丈夫・・・というラインがあり、細隙灯顕微鏡で前房深度を中央と周辺部(AC/CT)で診て、大丈夫と思ったら、それ以上追求しない。ここが最初のスクリーニングラインとなる。
2)前房深度が中央でも周辺部でも非常に浅ければ、隅角鏡・前眼部OCTの出番。
3)前房深度が中央で深い(普通)割に、周辺部で極端に浅い場合は、プラトー虹彩を疑い、これも隅角鏡・前眼部OCTの出番だ。
ただ、どれくらい浅い・狭いと、将来どの位のリスクがあるのか・・・は不明。既に器質的な周辺虹彩前癒着があれば、話は別だが、それがない場合、ただ浅い・狭いだけで、現時点では、隅角閉塞(の証拠)も眼圧上昇も視神経障害もない場合、将来のリスクを推定して、予防的な治療を行うかどうかの判断が必要となる。やり過ぎてもいけないし、将来の急性・慢性PACを見逃してもいけない。
『危ない・ハイリスクだ・・・』と言うのは簡単で、大丈夫です・・・というのは難しい。一応の目安としては、前房深度が2.0mmを切って、1.6mmに近づけばリスクは上昇し、iris convexity が0.3mm以上になればハイリスク。隅角の角度は10度以下(Shaffer grade Ⅰ以下)になれば、いかにも狭く危ない感じがする。
そんな観点で隅角を比較的客観的に見直すと、ハイリスク群は結構多い。患者さんに隅角狭い、発作の危険がある・・・を連発するのは気がひけるし、その多くの患者さんレーザー虹彩切開術や白内障手術を行うのも問題なので、更に厳しいラインを設け、前房深度1.8mm以下、iris convexity>0.35mm、隅角角度5度以下を超ハイリスク群と勝手に決めていたら・・・、前房深度が2.0mmもあるが、iris convexity = 0.38、隅角角度0度・・という悩ましい症例に遭遇。内皮に異常がないことを確認の上、ヤグ併用でレーザー虹彩切開術を行うことにした。久しぶりのレーザー虹彩切開術だった。
かつてレーザー虹彩切開術が普及する前、まだしばしば周辺虹彩切除術が行われていた時、当然ながら、浅前房・狭隅角眼に簡単に手術しましょう・・・とはならず、まあそれだけが理由でもないだろうが、慢性のPACに移行する症例は今よりずっと多かった気がする。その後レーザー虹彩切開術が普及して、時に過剰に行われ、いっとき慢性のPACは非常に稀な存在になったのではないだろうか。レーザー虹彩切開術による内皮障害が注目を浴び、レーザー虹彩切開術が行われなくなると、再び慢性PACが増加するのではないか・・と危惧する。若いドクターはあまり遭遇していないかもしれない。ちゃんと診断はつけられるだろうか。最後の写真は、典型的な慢性のPACの前眼部OCTだが、開放隅角緑内障としての治療を受けておられた。