2016年 12月 27日
近視進行予防 2016冬 (984)

低濃度アトロピン点眼について
勉強不足なものでチョット勉強を。あたらしい眼科33(10)2016から
ATOM-1とは、6-12歳の片眼に1日1回1%アトロピンを2年間も行うトライアル。なかなか凄いトライアルで、小学生の片眼の調節力を2年間完全に奪ってしまうことになり、日本ではなかなか実行困難なスケジュールだ。ただ、この広く普及することは困難なトライアルではあるが、結果として近視の進行(眼軸長の延長)をほぼ完全に止めてしまった。この研究結果のインパクトは大きく、調節しなければ眼軸延長が起こらない事を実証したのだ。
アセチルコリン
- イオンチャンネル型ニコチン受容体
- 代謝調節型ムスカリン受容体 ⇒副交感神経の神経終末(作動薬:ピロカルピン) ※競合的阻害薬=アトロピン
- ムスカリン作用⇒縮瞳・毛様筋収縮・心臓抑制
- アトロピン作用⇒散瞳・毛様筋弛緩(調節麻痺)・心拍数増大
このアトロピン点眼はしばしば子供の屈折異常を調べる時に、中でも遠視系の屈折異常があって、弱視がありそうで、完全に調節を麻痺させたい時に、1%のアトロピンを1日2回1週間ほど使用する。あのトライアルは、それを2年間も行ったの。結構衝撃的な事実だったが、1%アトロピン点眼は確実に眼軸延長を阻止した。ただ、1%アトロピン点眼を継続することは、非常に困難で、これを両眼に点眼すれば、眼軸延長を阻止したい期間(5年?10年?)、ずっと散瞳しっぱなしだし、調節力零状態が続くので近用眼鏡は絶対必要だし、屋外では遮光眼鏡さえ必要かもしれない。しかも点眼をやめると今度は一気に眼軸が延長する(リバンウンド(+))と言われていて、現実問題としては、これでは実行困難。最初のトライアルのATOM-1は2006年で、その後はアトロピン治療よりは、累進屈折眼鏡やコンタクトレンズなどによる試みが活発だった気がするのだが、10年後、ATOM-2というのが2016年に行われた。
またもや6-12歳の子供が対象で、1日1回点眼を2年間だが、アトロピン濃度は、0.5%、0.1%、001%と3種類。注目されるべきはATOM-1の100希釈の0.01%。1%のような副作用がなくて(少なくて)、眼軸長抑制効果がある程度あれば、実用可能かもしれない。報告では、2週間点眼しても、散瞳は0.7mm程度だし、調節力低下も2D程度。10歳の調節力は10D以上あるので、2Dぐらい低下しても問題ない。問題になったリバウンドも、この濃度なら大丈夫らしい(0.5や0.1なら(+))。
ただ、ここに至って、近視発生メカニズムは、修正を迫られているようで、視覚による眼軸制御・遠視性デフォーカスだけでは説明できなくなっているようで・・・、ただ、この0.01%アトロピン点眼は有力な(近視進行を50%前後抑制)治療薬になりうるようです。一刻も早く、普及させるべく現在ATOM-J、0.01%アトロピン点眼の二重盲検試験が行われている。Myopineという0.01%アトロピン点眼を個人輸入による治療が行われているが、十分な検討が行われていなくて、まだ時期尚早だと・・
ATOM-J参加施設(7施設):旭川医大・筑波大・慶応大・日本医大・大阪大・京都府立医大・川崎医大

高校からメガネをつくり、20歳時には-3.5D、28歳時には-4.5Dでした。
大人になって進行は緩やかになったかに思えたのですが、30歳以降ものすごく進行し、43歳では-8Dになってしまいました。
このスピードがこわいのですが、これは散瞳剤を3年使用したリバウンドにしては時期が離れすぎだから無関係でしょうか?
成人後こんなに進行が早まるものかすごく疑問です。一応矯正視力は出ているので問題ないと言われていますが、今後どうなっていくのか心配ですが、どう思われるでしょうか。
近視進行防止に、トロピカミドはエビデンスないと思われます。つまり点眼とは無関係に近視が進行したのだ推測されます。ただ、30歳以降すごく進行したというのは気になりますね。一般的ではなく、核白内障がないか気になりますね。それがないとすれば、今後は高度近視による合併症が出ないかチェックする為にも、時々眼科受診されることをお勧めします。