なにわレチナ倶楽部 その2 (998)
2017年 02月 15日

特別講演 網膜中心静脈閉塞症・・・・病態理解と治療レジメンのアップデート 香川大 辻川明孝教授
よく考えたら、香川の教授というより、もうすぐ京大教授に就任予定の先生。最近は、抗VEGF薬が幅を利かせているので、講演会はBRVOの話が多いのだが、久しぶりにCRVOのまとまった話を聞きました。20年以上前に、ウロキナーゼを点滴したり、ワーファリン入れたりしていた事を考えると、隔世の感がある。治療法は大きく変遷しています。確かつい最近まで、閉塞した網膜静脈を解除しようとか、閉塞しかかった網膜静脈を開放しようとして、様々な治療が試みられていたのですが、基本的には、エビデンスのない治療は行わず、黄斑浮腫の治療とNVGの予防のみ?
※今でもマイクロニードルを使った血管内治療という試みもあるのでしょうが・・・そんな話はなし。
- 網膜中心静脈閉塞症の基礎
- 網膜中心静脈閉塞症の黄斑浮腫
- 網膜中心静脈閉塞症の血管変化
- 網膜中心静脈閉塞症の周辺虚血
- (網膜中心静脈閉塞症の黄斑虚血)
- 網膜中心静脈閉塞症の治療
1,網膜中心静脈閉塞症の基礎
よくあるのが、朝起きたら視力が大幅に低下していた・・というのがこの疾患。網膜中心静脈は篩状板後方で閉塞している?実はあまり根拠ない? CRVOは、BRVOの1/5か1/10ぐらいの頻度で、僚眼の発症率は、年1%程度。血管閉塞起こしやすいひとは、何回も発症するか・・・・と言えば、BRVOが同じ眼で何回も起こったり、両眼にCRVO生じたりすることは稀(前者はそうでもない気がするが・・・)らしい。(時に若い人にも発症する乳頭炎タイプは、ステロイド入れて、その後黄斑浮腫があれば抗VEGF治療)
虚血型か非虚血型なのかは黄斑部で判断(大規模スタデイでは)。FAを周辺部までしっかりみたら、周辺部に広範囲の虚血であったりしていても、分類は黄斑部で。
- 切迫型:視力低下(-)、黄斑浮腫(-)、FA無灌流領域(-)、経過観察のみ
- 非虚血型:FA無灌流領域(-)、原則としてPRP不要、黄斑浮腫(+)だと視力低下
- 虚血型:FA無灌流領域(+)、虹彩NV、隅角NV、硝子体出血、NVG(この予防の為にPRP)、視力低下
※NVG:高度の視力低下や高度の血管の蛇行があればNVGの発症に注意。CRVO発症後3ー6ヶ月で生じる。1年以上経過して発症することは稀。PRPの時期だが、発症後早期は出血も多くてやりにくいので、少し待ってからする人が多いと思うのだが、演者は最初にやってしまうと・・(タイミングを逃す方がリスキーと判断?)。
※海外では網膜光凝固は、NVGになってから。それまでは何もしないらしい・・。
2,網膜中心静脈閉塞症の黄斑浮腫
非虚血型:基本MEの治療のみ。PRPはしない(原則)。虚血型:NVG予防に努める。つまりPRPはしっかり。視力低下は高度。MEは治療しないことも・・。BRVOは、急性の黄斑浮腫、外網状層の浮腫とCMEだが、CRVOは、外網状層の浮腫・CME・内層反射亢進・中心窩のSRD。
※中心窩と傍中心窩に嚢胞腔が形成されると、その空間的伸展によりMüller cell cone及びミュラー細胞が牽引されて、結果的に視細胞外境界膜を牽引して、円錐型の漿液性網膜剥離が生じる(丈が高い。網膜厚大きい)。外境界膜の後方の視細胞内節・外節に孔が形成されると、嚢胞様腔内の漏出液が網膜下へ移行して、より広範囲の漿液性網膜剥離となる。⇒やがて慢性のCMEとなりCMDとなれば治療不要。黄斑浮腫の治療:黄斑浮腫(-)となっても視力改善しないことも。ポイントは網膜外層のダメージ。Ellipsiodlineが保たれているかどうかが問題。 CMEの外側のダメージをチェック。
(医学書院 OCTアトラスP109) (Am J Ophthalmol. 2010Feb;149(2):291-301)
3,網膜中心静脈閉塞症の血管変化
OCTによる血管の解析:OCTで網膜静脈は、2つの団子が縦に並んで見えるが、閉塞して流れが滞ると一つのダンゴに?また、網膜血管は、動きやすい方向があり、流れが滞るとそちらの方向へ動く?時に網膜に裂隙が生じる。虚血型では蛇行が強い。
http://iovs.arvojournals.org/article.aspx?articleid=2190396
4,網膜中心静脈閉塞症の周辺虚血
網膜虚血の特徴:多発する綿花様白斑・retinal whitening(paracentral acute middle maculopathy (PAMM)の事?)・出血(※後極では神経線維厚く、はけ状の出血となる。斑状の出血が大型の場合、虚血のサイン。FAしましょう。) 急に出血が増えたり、視力が低下したら、虚血型への移行の可能性高い。要注意。
虚血型:OCTで内層反射が強くて、外層があまり写らない。急峻な丈の高い網膜with SRD。網膜裂隙⇒FAへ ※middle-limiting membrane (p-MLM) sign ⇒ deepcapillary の虚血
OCT上の内顆粒層の外側の境界部位の反射が強い(=p-MLM)
5,網膜中心静脈閉塞症の黄斑虚血
時間が無くなってきたので、ちょっと端折って・・・治療へ
6,網膜中心静脈閉塞症の治療
抗VEGF治療は有効だが・・使い方にコンセンサスは? CRUISEスタデイでは導入で6回注射して、その後も毎月。クリスタルスタデイでは、導入3回で、その後PRN。黄斑虚血(+)/(-)で視力関係ない?ベースライン視力悪いとアップしやすく、良好だとそれ以上アップしにくい?罹病期間長いと視力改善しにくくなる。3ヶ月未満が良好。ただ、本当に導入の注射が3回も必要なのか?1回ならどうなのか・・。スタデイでは、導入1回でその後PRNでも同様の結果だったと。ベースライン視力は0.5以下ならアップするし、0.6以上だと横ばい。慢性期になって、効果がなくなってきたら、注射不要・・
※抗VEGFは黄斑浮腫の治療。脈絡膜血管とコラテラルができると予後がいいが、抗VEGFがそこにどう関わっているかは不明。
※非虚血型から虚血型への予防は不可能。薬物治療にエビデンス(-)。ワーファリンもバイアスピリンも無効?