第417回大阪眼科集談会 その4 (1010)

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満開


特別講演

眼内レンズ手術の進歩と諸問題-多焦点レンズを中心に ひらかた山岸眼科 山岸和矢先生

いつもお世話になっている大先輩なので、まず、『ヨイショ』しておきます。私が入局した昭和59年は、関西医大はまだICCE時代で、その年の途中に山岸先生は、確か天理方面から帰ってこられました。先生はあまり覚えておられないかもしれません、私にとっては、忘れようとしても忘れられない衝撃的出来事で、後半の指導医となっていただき、初ラッペンの指導をしていただきました。そのICCE時代から、ECCEECCEIOL、フェイコ・・・・・・多焦点IOLの現在に至るまで、常に時代の先頭を走ってこられた先生の姿を目撃してきましたが、今回膨大なデータ(とその解析)に裏打ちされた特別講演は、完全に学会の特別講演レベルの内容で、完全に圧倒されました。

前フリとしての薬物治療。実はそれなりに面白く聴きました。lanosterolに期待していいのでしょうか?若干不安はありますが、近い将来画期的な薬物登場の可能性を匂わせてくれました。白内障術者が廃業に追い込まれるのが理想かも。

http://www.nikkei.com/article/DGXMZO02662820T20C16A5XM7000/

気になったので、論文検索すると、こんなのが・・

Lanosterol reverses proteinaggregation in cataracts. Nature. 2015 Jul30;523(7562):607-11.

Treatment by lanosterol,but not cholesterol, significantly decreased preformed protein aggregates bothin vitro and in cell-transfection experiments. We further show that lanosterol treatment could reduce cataract severity and increase transparency indissected rabbit cataractous lenses in vitro and cataract severity in vivo in dogs.』 

雑誌は一流。期待していいのだろうか?

脇道にそれましたが、その後IOLの歴史を俯瞰されます。Ridleyの話から始まり・・・その後本題に。

  • ①プレミアム眼内レンズ(着色・非球面・トーリック・多焦点)
  • ②眼内レンズ度数決定の精度向上と目標屈折度によるテーラーメイド度数決定
  • ③術後合併症とその中で無菌性眼内炎(TASS
  • ④長期合併症、光学部の混濁と対策
  • ⑤多焦点眼内レンズの適応と患者選択 
  • 医師側:予想屈折誤差が小、合併症の無い手術が可能
  • 患者側:他の眼疾患がない、角膜乱視1D以内、不整角膜乱視がない、混濁した「水晶体
  • 患者側:欠点と機能の理解、自身のライフスタイルとの一致、几帳面すぎない正確

先生の話はいつもそうなのですが、今回も情報量が多すぎて私には追いつけない^^; 加えて集談会演題12題を聴いた後だったので、若干記憶が飛んでます(言い訳)。ビデオでも撮っておいたら良かった。

①プレミアム眼内レンズ

  • 着色レンズ:結構古いですが、ブルーライトハザードが問題になった時に、更に広まるのかと思ったら、現在それほどのアドバンテージはない?AMD前駆病変保有眼にはいいかも。
  • 非球面レンズ:理論的にはいい筈だが、結果的にはWFAで解析してもアドバンテージあまり感じられない?
  • トーリックレンズ:これは非常にいい。明視域も広がる(多焦点なみ?!)。ただズレたら再軸調整必要(5%程度)。特に3D以上の乱視では喜んでもらえる。
  • 多焦点レンズ:やはり問題点は、シャープに見えない事。メーカーの努力により随分改善されたとはいえ、やはりハロー・グレアが問題?

②眼内レンズ度数決定の精度向上と目標屈折度によるテーラーメイド度数決定

度数決定に際しては、SRK/SRK-T/Holladay/Olsen・・・・・・様々な度数決定数式からチョイスされているようです。一般的な術者と違って、かなりこだわりがあるのがモノビジョン。自身がマイルドモノビジョンの屈折異常左右差になっていて、結構いい年なのに(?)老眼鏡なしで不自由なく生活されていることにも、ヒントを得られた様子。-1.0-1.5/-0.3Dというマイルドモノビジョン、近視よりのモノビジョン-3.0/-2.0、マイルドな-2.5/-1.0-1.25など独特の工夫をされています。多焦点IOLに比べてシャープな見え方の単焦点IOLで、広い明視域を得るための工夫。慎重かつ完璧主義者の演者らしい選択?

満足度アンケート:色々理屈をこねても、術者に配慮してしまうようなバイアスのかかっていない患者アンケートがあれば、それが一番の拠り所になる筈で、それによって満足度の高いIOLの要素を科学的に検証できればいいのですが、中々解析困難だったというか、結局、これといった要因がある訳じゃない? (個人的な意見ですが、数々のプレミアム眼内レンズのプレステージポイントも、混濁水晶体による見えにくさの影響が大きすぎて、解析困難な結果になった気がします。術後の満足度に与える大きな影響は、眼内レンズのプレミアム度よりも、術前どれくらい見えにくさを味わっているかの方が大きいのかも。)

TASSToxic Anterior Segment Syndrome

H社やA社などIOL製造工程に由来する様々な要因によるTASSがありましたが、我々は何に気をつければいい?同一レンズ(同一ロット)を両眼に入れない事が、リスク管理?

④長期合併症、光学部の混濁と対策

グリスニングとホワイトニング(Sub-Surface Nano-Glistening:SSNG):メーカーも努力していて、改善されているが、最悪IOL交換。ただ、ヤグしてあると、大変・・

⑤多焦点眼内レンズの適応と患者選択 

  • 医師側:予想屈折誤差が小、合併症の無い手術が可能
  • 患者側:他の眼疾患がない、角膜乱視1D以内、不整角膜乱視がない、混濁した水晶体。
  • 患者側:欠点と機能の理解、自身のライフスタイルとの一致、几帳面すぎない正確

考え方の古い私は、『混濁した水晶体』・・・てのには、笑ってしまいますが、つまり一部で混濁していない水晶体に手術が行われていると言うことなのです。話は全く横にそれますが、かつてレクトミーに5FUMMCが導入された時に、まだ若かった私は、演者は何故こんなに成績のいい手術に手を染めないのか・・・と思っていました。ロトミーを日本に普及した側の主要メンバーだから?などと邪推していましたが、石橋を叩いても中々わたらない性格の演者は、そう簡単には宗旨変えしないのでした。結局その後のMMCレクトミーの悲劇は回避されたようです。この事は、多焦点IOLについても同じで、白内障手術に関しても、トップランナーなので、当然多焦点眼内レンズについても先頭を走るのかと思っていたら、モノビジョンへのこだわりもあるのでしょうが、導入にはかなり慎重で、石橋をしっかり叩いておられました。多焦点IOLを多数入れている、この分野のトップランナーの発表は、この手術のいいところばかりを強調される事が多いのですが、実は満足が得られないケースも多いのです(10%程度?)。井上眼科の徳田先生のインタビューも紹介されていましたが、満足を得られなかった多焦点IOL眼患者が多数押し寄せ、不満を山ほど聞かされ、多数のIOL交換術を行っている徳田先生は、かなり懐疑的な立場なようです。

結局多焦点IOLの適応に関しては、角膜乱視1D以内、不正乱視がない、他に眼疾患がない・・・などの患者側要因もさることながら、患者さんの性格(真面目すぎない・容認性)、多焦点IOLへの理解、患者さんのライフスタイルなどが大きな問題のようです。

実際に術者がそれらの要因を読みきる事が可能なのでしょうか。少し前に挿入したIOLが1万眼を超えた術者にして、現在あまり多くない多焦点IOL数が、その問題点を物語っている気がします。勿論、ピタッとハマれば最高なのでしょうが。素晴らしい講演有難うございましたm(_ _)m


by takeuchi-ganka | 2017-04-05 19:05 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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