2017年 04月 07日
眼瞼痙攣?ベンゾジアゼピン眼症? (1011)

眼瞼痙攣
言い訳から入るが、どうも、この病名がダメなのかもしれない。痙攣(けいれん)という文字は、ピクピクするか、ギューっと閉じてしまう状況を想像させてしまう。そうでない状況なのに、こんな病名が付いているのなら、専門家以外には診断困難だし、病態がイメージしにくい。この場合、軽瞬・速瞬・強瞬という3種類の瞬目を行わせて誘発できれば診断可能? 先日、集談会で非運動性眼瞼痙攣などという不可思議なタイトルの発表を聞いたのをキッカケに、少し勉強してみた。
新聞や神経眼科学会において、若倉先生は、眼瞼痙攣の中には薬物性が約40%もあり、ゾルピデム、エチゾラム、ブロチゾラムが上位3位の被疑薬で、この場合、羞明、疼痛、霧視などの感覚過敏症状が前面に出て、眼瞼運動異常は目立たないものが多く、むしろ「ベンゾジアゼピン眼症」として認識すべき・・・と提唱されていたが、私のようなごく普通の眼科クリニックには、眩しい・痛い・ごろごろする・霞む・・・なんて、症状の中高年はたくさん来院されるので、その中に、「ベンゾジアゼピン眼症」がいくらか含まれていたのではないか・・・とドキドキしている。実は、2-3思い当たる事もあるのだ。ただ、診断が確定したら、薬剤を減量中止する必要があるのだろうが、もともと依存性の高い薬剤だけに、そのハードルはかなり高そうだ。チョット中止してみるだけで、効果があるのだろうか・・・
睡眠導入剤には、ベンゾジアゼピン系と非ベンゾジアゼピンがあるらしく、ベンゾジアゼピンの方が安全(?)らしい。ベンゾジアゼピン系薬物は、『ベンゾジアゼピン系薬は脳内のGABA受容体に存在するベンゾジアゼピン結合部位に作用することでCl-の流入を促し、脳の働きを抑える。これによって、催眠作用を引き起こす』らしい。GABAに存在するベンゾジアゼピン受容体(結合部位)は以下のごとく。
- ω1受容体(α1受容体) ⇒睡眠作用
- ω2受容体(α2、α3、α5受容体)⇒抗不安作用・筋弛緩作用
比較的新しい非ベンゾジアゼピン系は、ω1受容体(α1受容体)に作用するので、睡眠作用はあるが、ふらつきはない?つまり、効果の副作用のバランスが良くて、使いやすい薬剤として登場したようです。少し高いようですが。
藥全体を眺めてみると・・
ベンゾジアゼピン系
超短時間型(一般名/商品名/半減期)
- トリアゾラム ハルシオン 3
短時間型
- エチゾラム デパス 6
- ブロチゾラム レンドルミン 7
- ミタゾラム ドルミカム 1.8~6.4
中間型
- フルニトラゼパム サイレース/ロヒプノール 7
- ロルメタゾパム ロラメット/エバミール 10
- リルマザホン リスミー 10
- エスタゾラム ユーロジン 24
- ニトラゼパム ベンザリン/ネルボン 27
- クアゼパム ドラール 36
長時間型
- フルラゼパム ダルメート/ベノジール 65
非ベンゾジアゼピン系
- ゾピクロン アモバン 4
- ゾルピデム マイスリー 1-2
- エスゾピクロン ルネスタ 5
更に新しい薬物も登場している。
- メラトニン受容体作動薬(商品名:ロゼレム) 2010年
- オレキシン受容体拮抗薬(商品名:ベルソムラ) 2014年
話は戻るが、若倉先生が槍玉に挙げていた3つの薬物、ゾルピデム、エチゾラム、ブロチゾラムは、短時間作用型の薬剤で、使い安いのだろう(ゾルピデムは、非ベンゾジアゼピン系)。羞明、疼痛、霧視などの感覚過敏症状を不定愁訴と片付ける事なく、ベンゾジアゼピン眼症の可能性を求めて、慎重に対応していこうと思っています。