第8回関西Glaucoma Update(最終回)その2 (1029)
2017年 06月 20日

1,強度近視眼における視神経異常 東京医科歯科大学 講師 吉田武史
強度近視と言えば、眼軸長が異常に延長して、視神経も網膜も脈絡膜も変形・変性して、視機能が崩壊していく・・・。その過程に介入することはできず、ただ見守るだけと思っていたので、それほど興味もなかったのですが、OCT、とりわけSS-OCTが起爆剤になって、高度近視による眼球変形の詳細が比較的簡単に見える化したのと、眼軸延長抑制への試みが本格化したのとあいまって、急速に注目が集まっています。私も注目してしまいました。
強度近視眼における視神経乳頭所見は、様々なバリエーションががあり、視神経乳頭を見て視野異常の形は推定困難であり、これが診療を難しいものにしている。眼軸26.5mm以上、-8D以上の強度近視眼をみると、眼球は過度に進展されて、後極部の形態は不規則なものになり、①脈絡膜新生血管 ②網脈絡膜萎縮 ③黄斑部牽引による分離症、加えて緑内障様視野欠損がある。しかも様々なパターンの高度の視野欠損が。この原因に緑内障の関与は?(つまり治療の可能性は?)。特徴としては、視神経乳頭の見た目より重大な視野異常があったり、中心付近の感度低下だったり、進行が速かったり、若くてもadvancedだったり・・・。OCTでも評価困難。強度近視の20%に視野欠損があり、5年以上で74%も進行する。緑内障に対する考え方は通用しない。
1)視神経乳頭
傾斜・蒼白・広くて浅い陥凹、コーヌス、バリエーションが大きい・・⇒視野異常の予測困難
1,視神経乳頭形状
- 円形:視野異常は軽いケースに多いし、視野異常予測しやすい。
- 楕円(垂直・水平・斜め):視野欠損多く、その形も予測困難。垂直で32%、斜めで25%視野異常(+)
2,大きさ:眼軸が長くなると乳頭面積広い。乳頭面積と視野異常の程度は相関。
3,陥凹:これも視野異常の形予測困難。
※眼軸の延長に伴い、視神経乳頭が伸展し、構造が崩壊して、視野欠損に・・。20年30年と経時的に見ていくと、視神経が様々な方向に進展されて、変形していく様子が観察される。
2)病態は?
- http://takeganka.exblog.jp/24455100/
- http://takeganka.exblog.jp/24536666/
- http://takeganka.exblog.jp/24547779/
視神経乳頭下方(だけでなく様々な方向にも)にある三ヶ月様のオレンジ色の病変で、脈絡膜内の空洞で、強度近視の5%にあり。時のICCのエッジで網膜内層欠損・神経線維層が断裂すると視野欠損に。ある程度進行した止まる感じ。眼圧の関連なし。※ http://www.nature.com/eye/journal/v27/n5/full/eye201316a.html
②Acquired Pits in the opticdisc area and the conus area(ピット)
en faceで見るとよく分る。上下極に多くて、強度近視の16%にあり(乳頭内に33%、コーヌス内に67%)。深さは様々で、神経線維が断裂すると視野欠損に。頑張っても見えなくて、OCTでのみ見つかる事も多い。
③lamina cribrosa defect
強度近視でなくてもあり。緑内障では、乳頭出血・リム消失・ピット・RNFL欠損・・・関連。ただ、視野異常は予測困難。
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3947348/
⇒視野欠損(+)の高度近視にも通常の緑内障にも、ともにlamina cribrosa欠損多い。
④ridge
視神経乳頭耳側横の隆起(ridge)で乳頭黄斑繊維束が障害(菲薄化)。中心付近に視野欠損。眼圧下降しても進行する。
※高度近視眼の視野測定を行って異常が見つかったら、そこから逆算して、視神経に異常がありそうな場所を何度も何度も探るようにOCTを行う。水平・ラジアル・5ラインなどを駆使して・・
3)眼圧下降は意味がある?
眼圧下降にエビデンスなし。病態は多種多様で、眼圧依存かどうか不明。ただ、中には有効なことも・・・
※ローティーンでも悪化する眼に、Ex-pressを行って良好な成績だと。平均眼軸29.1mmの17眼に手術して、25.2mmHgが、6ヶ月後9.9mmHgに。合併症も少ない。
4)治療は?
眼軸抑制こそ最終兵器?線維芽細胞を強膜上に移植(テノン嚢下注射 の感じで・・)して、強膜を強化。眼軸抑制効果40%。
Establishmentof novel therapy to reduce progression of myopia in rats with experimentalmyopia by fibroblast transplantation on sclera. Shinohara K, J Tissue Eng Regen Med. 2017 Apr 11.