第10回 Osaka Ophthalmology Forum その1(1061)
2017年 11月 08日

第10回 Osaka Ophthalmology Forum 2017/10/28
10年目をむかえるこのフォーラムは、気合の入った超有名講師陣を揃えた若干ヘビーな講演会でしたが、高橋先生が座長やコメンテーターをしているので、秋雨前線を台風22号が刺激して、怪しげな天候の中、出かけてきました。
教育講演
日本の免疫研究とその臨床応用 大阪大学・呼吸器免疫内科 教授 熊ノ郷淳
免疫に対する考え方が、大きく変貌していて中々ついていけない中、基礎知識が前提の話は辛い・・・。
自然免疫と獲得免疫がキーワード。我々は非常に多くの病原体に対応する為、限られた遺伝子を組み換えることで多様性を作り出している。免疫研究の先駆者達の功績を紹介しながら、その臨床応用の進化についてのお話。実は殆ど理解不能状態・・・・。自然免疫と獲得免疫に対する考え方の進化。その両者の関わり。様々なステップでの小さな発見の積み重ね、そして臨床応用へ・・・・。

講演中何度も出てきたスライドが、自然免疫と獲得免疫のスライド。似たような図をネットで拾ったので、それで復習(東京女子医科大学消化器病センター癌免疫療法チーム/一般に普及している免疫療法から)
※IL-6:もともと活性化B細胞を抗体産生細胞に分化させる因子として発見されたのだが、今では、多くの自己免疫疾患や炎症性疾患の発症に関わっていることが明らかになっている重要な因子。
※JAK-STAT経路:素人向け解説が中々見つからないので、禁断のウィキペディアから⇒『細胞外からの化学シグナルを、細胞核に伝え、DNAの 転写と発現を起こす情報伝達系。免疫、増殖, 分化、アポトーシス 、発癌などに関与する。 JAK-STATシグナルカスケードは主に3つの構成要素からなる: ①細胞表面の受容体、 ②Janus kinase (JAK)、③2つの信号トランスデューサおよび転写活性化(STAT)タンパク質である。JAK-STAT機能が損なわれたり、制御できないと、自己免疫疾患, 免疫不全症候群や悪性腫瘍などを引き起こされることがある。』という重要なシステムらしい。当然IL-6もこの経路を介して細胞に作用している・・・筈。
リンパ球の中でも免疫の司令塔的役割を担うCD4陽性Tリンパ球。このT細胞を制御しているのは、TCR(T細胞受容体)を介した抗原刺激シグナルと、補助シグナル受容体(活性型CD28)を介した補助シグナルによって制御されているが、この補助シグナルには、TCR伝達シグナルを促進する刺激系と、負に制御する抑制系がある。この抑制系の中にPD-1やCTLA-4などがある。ここに関わる(抑制)することで、免疫能を上げて癌治療に・・・。(⇒
http://www.immunooncology.jp/medical/visualization/05.html )
7年ほど前の自分のブログから
『自然免疫:マクロファージや白血球が病原体を貪食処理する原始的システムで、獲得免疫:T細胞、B細胞が関与して、自己・非自己を識別し、あらゆる病原体に対応する高度なシステム・・・・と、考えてきましたが、どうやら自然免疫は、それほど原始的なものではないようです。ショウジョウバエの真菌に対する防御に必須のタンパクTollの発見から、ヒトにおいて注目されているのが、Toll-like receptor(TLR)。自然免疫においても、微生物の持つ分子パターンを識別し、危険になりそうな生物がいるという緊急警報を宿主に伝えるのが TLRの働きのようで、10種類以上のTLRが自然免疫の担当細胞表面に存在し、人には存在しない病原体の構成成分(グラム陰性菌のリポ多糖、微生物 DNA、リポタンパク質、ウィルス由来の二本鎖RNAなど)を認識し活性化されるようです。TLRのような細胞膜受容体だけじゃなく、細胞質内にも RIG-I、MDA-5と呼ばれるRNAを認識する受容体がある?そして、それらが、さらに高次機能を有する獲得免疫系の活性化の誘導にも必須らしい?』
自然免疫:病原微生物のDNA配列を感知して自然免疫応答を引き起こすのは、Toll様受容体9 (TLR9)。病原微生物を闇雲に攻撃して貪食して、その抗原を提示してリンパ節でT細胞に伝えるだけが自然免疫の仕事ではない。ただ食い散らかすだけではなく、『実は基礎的な病原体のセンサーを備えており、時には敵のDNAまでをも感知するという高度な仕組みを備えている』。ブレイクスルーは、TLRの発見。現在11ほど見つかっているTLRがそれぞれ様々な病原体のタンパク質を認識しているのだが、TLR9は、病原体のDNAを認識する(TLR7、8はRNAを認識)。このTLRは、病原体に対してだけではなく、自己免疫疾患との関わりも。
2,セマフォリン、神経免疫代謝の話題
まあ、眼科の中のごく狭い範囲の事しかしらないので、セマフォリンと言われても・・・ピンとこない。セマフォリンとは?語源的には手旗信号の事らしいが、元は、『軸索の伸長方向を決定する神経ガイダンス因子の代表的分子』として知られていたが、現在20種類以上見つかっていて、神経系以外の様々な役割が分かってきた(免疫系・代謝系・・)。このセマフォリンをコントロールすることで、『① 花粉症、アトピーなどのアレルギー疾患 ② 関節リウマチ、多発性硬化症などの自己免疫疾患 ③がんの進行阻止 ④不整脈 ⑤交通事故時の神経損傷の再生 ⑥高齢化に伴い増加している骨粗鬆症』など様々な臨床応用が期待されている。
さらには、mTORシグナルとの関係も・・・(さっぱり理解不能だが・・)。
※特許検索から『骨髄腫治療用の医薬組成物の有効成分の提供。 ヒトインテグリンβ7の20~109番目のアミノ酸残基からなる領域にエピトープを有する抗体』の中に、『骨髄腫細胞およびその前駆体に特異的に結合することを指標にスクリーニングを行ってMMG49抗体を得た。そして、斯かる抗体がヒトインテグリンβ7の特定の領域に結合することを確認し、斯かる抗体の抗原認識部位を用いて作製したCAR-T細胞が、骨髄腫の治療に非常に有用であることを見出した。また、MMG49抗体のエピトープが、ヒトインテグリンβ7の20~109番目のアミノ酸残基からなる領域に存在することも明らかにした。』という文章が・・このCAR-T細胞治療は最強・・
https://www.google.com/patents/WO2017026331A1?cl=ja
※いずれにしても、眼科の勉強会でこの話はきつい・・・

