第122回 日本眼科学会 サブスペシャリティーサンデー5 その11(1058)
2018年 05月 18日

SS05-4
角膜痛覚過敏 田川 義晃(北海道大)
面白そうなタイトルじゃないので、一瞬帰ろうかと思ったのだが、帰らなくて良かった。非常に興味深い内容の講演を最後に聴くことができました。
長い間眼科医をしていると、しばしば遭遇するのが、愁訴(痛い・異物感・乾燥感・・)が多いが、それに見合う所見がないか乏しいケース。勿論、自分が所見を見落としている可能性もゼロではないのだが、そうでないケースが結構多い。キズもなければ、異物もないし、大丈夫ですよ。何もありませんよ・・・・と言っても、簡単には引き下がってくれない。そもそも解決していないのだから・・・当然。ただ、Cochet-Bonnetの角膜知覚計でも、異常がない事もあり、つまり知覚は正常だとすると、痛覚過敏!?
痛みを受容するメカニズム:TRPチャネル ( transient receptor potentialcation channel:侵害受容器) 27のうち3つが眼表面にあり、痛覚はTRPV1が代表的レセプター。
他覚所見と不釣り合いな症状があり、点眼麻酔を行うと、VASの改善は75%以上。乾燥感は改善するが、異物感と痛みはわずかで、羞明は全く改善しない。点眼麻酔が無効なのは、末梢神経の感作が続いて、中枢神経も感作が継続しているから?(侵害受容器の感受性亢進+中枢ニューロンの反応性の亢進?)
Functioanl MRI :痛みを感じているかどうかをMRIで調べる方法。痛み関連脳領域の活性化の有無を調べる。ドライアイでも、全身性の疼痛と同じ所見(+)。
神経障害性疼痛(帯状疱疹後、糖尿病・・・)では知覚は低下していて、疼痛が亢進。中枢側の過剰興奮状態。ドライアイにおいて、角膜神経の密度が低下・走行異常。ドライアイでも侵害受容器の感受性亢進が継続し、中枢側も過剰興奮状態?
※軽微に見えるドライアイでも、慢性的な角膜表面への障害によって、神経密度の低下や走行異常があり、痛みの侵害受容器の感受性は興奮が継続しているだけでなく、中枢側も過剰興奮状態が継続している。『眼がゴロゴロする、乾く、くしゃくしゃする、痛い・・・・』ってのに、何も異常がないドライアイに出会ったら、非常に軽微でも、ドライアイの治療を継続しつつ、このメカニズムについてお話をするしかない?しっかり治療すれば、侵害受容器の感受性興奮はおさまる?
※どこか別の場所の講演では、ムコスタ点眼が痛覚過敏を抑制できる可能性について話されていたようで、痛覚過敏が疑われたら、積極的にムコスタを含めたドライ治療をすればいいのかも。
