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第20回大阪赤十字眼科フォーラム (1060)

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20回大阪赤十字眼科フォーラム

第一部

最近の大阪赤十字病院の話題 秋元正行 部長

初めて、大阪日赤に行ってきました。ミナミエリアだし、あまり関係のない病院って印象でしたが、今の部長が来られて、ちょっと気になる存在に。昨年は、年間3500件以上の手術が行われたそうです。件数よりも気になったのは、白内障やビトだけでなく、涙道・緑内障などジャンルが多岐にわたっているようです。

 最近の学会報告は、少し長い強膜トンネルを通したバルベルト手術、強膜内固定IOLiris captureしないように虹彩根部挙上縫着術、落下した水晶体を処理する為にパーフルオロカーボンは保険適応外なので、人工代用水晶体囊の考案、毛様体扁平部経由のIOL抜去+強膜内固定、tPAを用いた黄斑下血腫移動、谷戸式のロトミー、強膜内固定に代わる新しいIOL固定方法?など・・・。手術が楽しくて仕方ない雰囲気が伝わってきます。

第二部

角膜内皮治療の未来 同志社大学生命医科学部工学科 奥村直毅 先生

演者は、01年府立医大卒の先生のようです。

全層角膜移植が初めて行われたのは1905年ですが、これにかわる画期的な手術、角膜内皮移植のDSEKDMEKの登場は2006年です。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17102683) 始めたのは天才MellesGR氏。この後、この手技は急速に普及して、2011年には全層角膜移植の件数を越えたそうです。ただ、それでも、様々な問題があります。QOLの低さ?内皮が徐々に減少(10年で半減)、難症例にできない。ラーニングカーブの問題、手術時の内皮損傷、若い人のドナーが使えない?

日本では対象症例がレーザー虹彩切開術後が多いという特殊事情があるものの、世界的には圧倒的にフックス。培養角膜内皮シートを作成して、DSEKと同じ手技で移植。その次のステップは、培養した角膜内皮細胞を注射器で前房内へ注入して、うつ伏せするだけ。これにより手術侵襲が非常に少なくなった。人工材料も使わないし、完全な透明角膜が達成できて、マスターセルバンク化が可能。凍結して輸送も可能。角膜内皮細胞を前房内に注入しても、角膜裏面に接着できなかったが、Rock阻害薬を併用することで、接着力が強くなり、角膜内皮として機能して透明角膜に。最初ウサギの実験だったが、ウサギ角膜内皮は増殖する可能性があり、疑問は残ったが、その後サルで、ついで、紆余曲折を経てヒトで成功。大量培養にも成功して、ドナー1人から5001000名分作成可能。培養角膜内皮細胞50100万個入った溶液を前房に入れて、3時間うつ伏せ。(①内皮を剥がす ②トリパンブルーで剥がした部分を確認 ③内皮細胞注入(+うつ伏せ) この手技ならレーザー虹彩切開術後・フックス、外傷や無硝子体などの難症例でも可能。なるべく早く一般に提供できるために、①臨床研究 ②先進医療 ③治験から承認へ・・・やはり③。

アンメット・メディカル・ニーズ⇒いまだに有効な治療方法が確立されていない疾病に対する医薬品・医療への強い要望

(下記の図は製薬協のHPから拝借)

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水疱性角膜症は、左下エリア?何とか目薬で治せないか?

世界的には角膜移植の最大の原因であるフックス。細胞外マトリックス異常増加、内皮障害。原因は?

  1. 早期発見:ゲノム・眼科検診・リスク特定
  2. 発症早期:点眼・発症遅延阻止
  3. 発症後:再生医療・低侵襲治療

薬の開発(※エーザイのHPから拝借↓)

https://www.eisai.co.jp/company/business/research/research/images/index_img_01.png 

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創薬ターゲットを決めてから、臨床試験をへて承認発売にまでは、非常に長い道のりで時間がかかる。これからは、オープンイノベーションの時代。産学連携で、創薬する時代へ。欧米では、アカデミア・バイオベンチャー・製薬企業から開発はスタートする。アメリカでのバイオベンチャーはダントツでおおくて、世界を圧倒的にリードしている。ただ日本にはバイオベンチャーがない。アカデミアの出番。

https://kenyoshida36.wixsite.com/drug-discovery-blog/blank-1 

創薬ターゲットの特定:患者の角膜内皮・遺伝子解析・・・・⇒TGFβ

細胞外マトリックス増加

  1. 小胞体反応          グッタータ増加
  2. 小胞体ストレス         角膜混濁
  3. 小胞体ストレス応答
  4. 細胞死
  5. 角膜浮腫

※フックスの患者角膜内皮においては、タンパク質折りたたみ不全

※フックス角膜内皮ジストロフィではTGF-β増加⇒小胞体ストレス⇒細胞死へ。TGFβシグナル阻害で、治療の可能性が・・・

もうひとつの創薬がマススクリーニング

一からでは時間がかかるので、既に全身的に使われている薬800から10ほどが培養角膜内皮をレスキュー。

  • 再生医療⇒角膜内皮障害(これにしても、まだ早くて3-5年かかる?)
  • ROCK阻害薬⇒白内障術後内皮障害
  • p38 MAPキナーゼ阻害剤・Caspase1阻害・・・・⇒フックス


眼の形成治療―なんでもやりまっせ!

愛知医科大学 眼形成・眼窩・涙道外科 特任教授 柿崎裕彦

ビデオ中心で、鮮やかな手術を多数見せて頂きました。臨床家なのだが、マクロ的にもミクロ的にも解剖学的知識に裏付けされた科学的な手術手技で、楽しくてしかないって印象。

  1. 眼瞼下垂: 小切開(5-6mmOK)、エピなしを0.30.8ml(エピ入りだと定量しにくい)
  2. 重瞼
  3. 内反症
  4. 睫毛内反
  5. DCR8弁法・3弁法(再発(-)
  6. 眼瞼再建

ピットフォール

  • 霰粒腫:問題なのは脂腺癌との鑑別。50歳以上で再発するケースは、要注意。手術して組織を出すのがいい。ステロイドで長期に引っ張らない・。
  • 甲状腺視神経症:あまり眼球突出を来さないタイプ。4筋ともに圧迫して視神経を圧迫するとミゼラブルな結末も。
  • 眼窩腫瘍による視神経圧迫:視力と眼所見に乖離があれば、CTを。


by takeuchi-ganka | 2018-05-23 18:59 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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