第353回大阪眼科集談会(その1)

大阪の夏最後のイベント、なにわ淀川花火大会のある、異常に暑い日に、第353回大阪眼科集談会がありました。大阪の5大学とその関連病院が演題を持ち寄るミニ学会のようなものです。14題の演題があり、2題目終わり頃から11題目まで聞いていきました。印象を少しばかり。
※今年の花火大会、西の風の為、毛馬方面からの観覧は最悪だったようです・・・。

2、阪大眼科におけるフックス角膜ジストロフィーについての検討(大阪大)

 殆ど口演は聞けなかったので、コメントできませんが、私のような開業しつつ、それほど多くない白内障手術を行う眼科医にとって、或いは、時々レーザー虹彩切開術をする眼科医にとって、気をつけなければ墓穴を掘りかねない疾患と理解しています。この疾患は、初期病変は日常診療でもしばしば見られる corneal guttataと呼ばれる角膜内皮側にぶつぶつとした隆起したものですが、これが徐々に融合拡大しながら、全体に広がり、徐々に正常内皮機能が失われます。
 簡便な内皮細胞検査機器が普及した現在では、知らずに手術してしまうことは皆無と思われるが、内皮保護テクニックが進んだ今でも、内皮細胞が1000以下のこのケースには、あまり手を出したくないものです。

3、先天性鼻涙管閉塞症の治療方針の検討(大阪医大)

  比較的多いこの疾患の治療は、鼻涙管へのブジーですが、この操作は、ブラインド操作なので、若い医師や若くなくても慣れない医師にとっては、なかなか嫌なものです。ただ、必ずしも、このブジーを行わなくても、保存的治療で治ることがあるので、検討されたようです。治療方針としては、

  ①抗菌剤点眼+涙嚢マッサージ
  ②通水検査+涙嚢洗浄
  ③ブジー
  ④涙管チューブ


などがありますが、①②の保存的治療で、60%は治るのだそうで、残りがブジーの対象になるで、それで80%以上が治癒し、これで駄目なら、シリコンのチューブを留置するか、DCRを行うことになるようです。
この発表のポイントは、保存的治療が可能な症例がかなりある。手馴れた医師なら、最初から全例ブジーでもいいでしょうが、そうでない場合、先ず保存的治療をやってみる価値があるということでしょうか。
(涙道疾患の専門家なら、最初から全例ブジーかもしれませんが、一般的には、なかなかそうは行かないので・・・)
といっても、①は完全に保存的治療ですが、②はなるべく上涙点を使い、その涙点を拡張した上で、直の1段針(23G程度?)を涙点・涙小管・涙嚢へとゆっくり進め、そこでブジーの要領で針を立てる。多分この間にかなり排膿が見られ、その後、加圧して水を入れて洗浄・・・・と言われていたようです。鼻涙管下方にあって閉じていると思われる Hasner弁を金属のブジーじゃなく、水流で開けようとしているようなものでしょうか。だとすれば、半保存的治療? この鼻涙管は、20%程度に下方で屈曲があるとも言われていて、金属ブジーを真っ直ぐに強引に推し進めると、仮道を形成してしまうことがあると言われています。そこで、安全策として、この半保存的治療は、60%以上治るなら、一度は検査を兼ねてやってみる価値があるように思います。
※ この治療を行う時期の問題ですが、1歳になると、力も強く、押さえつけてするのも危険です。生後まもなくだと、自然治癒やマッサージだけで治る可能性も高く、ブジーの適応はないと思います。6ヵ月過ぎると、自然治癒の可能性は低いので、積極的治療時期というのは、このあたりでしょうか。

4、霰粒腫に酷似した類表皮嚢腫の3例(大阪市大)

  非常にありふれた疾患、霰粒腫ですが、今でも、多くの眼科医は、瞼結膜側から切開して、粥状の内容物を鋭匙でかき出すというのが一般的と理解していますが、この発表は、結膜側からの切開では駄目で、皮膚切開すべきであるという主旨のようでした。
発表は、霰粒腫に酷似した類表皮嚢腫でしたが、中には、酷似した悪性腫瘍もあり、切開を結膜側からやっていると、術中所見から、『これは霰粒腫じゃない!?』と気づきにくい。だから、悪性腫瘍であっても、診断が遅れてしまうと・・・・・・・??
術前に霰粒腫に酷似していて他の疾患だと判断できないとして、術中に悪性だと気づくことができるか? 例えば、マイボーム腺癌。多くの眼科医は、一生遭遇しないままではないでしょうか。それほど稀な疾患を、皮膚側から切開すれば、術中所見で、違いを把握して、術式変更可能でしょうか・・・
眼科マイクロサージャリー(第5版)では、熊谷先生が書いておられますが、患者さんが、皮膚切開による傷跡を憂慮されること、結膜切開による明らかな弊害を経験していないという理由で、結膜切開されている。また、最近、井出眼科の三戸先生は、あたらしい眼科20(12):1631-1634,2003で、皮膚側切開が原則にすると述べられている。たかが霰粒腫、されど霰粒腫?
では、どうすればいいのか迷うところでうすが、先ず、霰粒腫の概念を理解する。
貯留嚢胞ではなく、被膜もない。組織学的には脂肪肉芽腫であり、瞼板内に限局している場合(Type1)と、瞼板前面が破壊され、眼瞼前葉を含む眼瞼全体に炎症が及んでいる場合(Type2)があることを理解すべきである。つまり、Type2は、Type1が増大し、瞼板前葉を破壊し、炎症が眼瞼前葉に及んでいるので、抗生物質の点眼・軟膏・内服に時にステロイドも加えながら、先ず消炎し、その後、切開して、内容物を取り除く。目的は、内容物つまり脂肪肉芽腫を取り除くことなので、被膜のように見えるのは、正常瞼板組織が変化であり、とらなくていい。腫瘍と根本的に違う。もし、この被膜のようなものに包まれた粥状物という、嚢胞構造が見られないときは、腫瘍を疑い、特に40歳以上の場合は、必ず病理組織標本を出すようすべきと思います。更には、結膜側から切開するとき、Type1なら、前葉を鋭匙で破壊して、医原性にType2にしないように注意して・・・。結局、結膜側からかな。


5、虹彩分離症にプラトー虹彩症候群を合併した1症例(大阪大)

  虹彩分離症は、虹彩実質が分離して、索状に前房内に浮遊する状態で、50%に緑内障を合併すると言われいている。下方に多い。稀な疾患で、乏しい臨床経験の私は、まだ1例しか見たことありません。
  プラトー虹彩は、閉塞隅角緑内障を発症することがあります。提示されていたUBMは残念ながら、毛様体の突起部付近が映っていないように見えました・・・。
プラトー虹彩は、虹彩の根部の付着形状が、Spaethの分類のS型で、その形態を毛様体の突起部の前方への移動(回転)が演出していて、私の経験では、前房深度は通常2.2mm前後なので、いつも軽度の瞳孔ブロックも加わることで、隅角は更に狭くなり、時に慢性型、稀に急性型の原発閉塞隅角緑内障を引き起こすことがあります。
いつも後輩には、言っていることですが、もし、閉塞隅角緑内障に手術をするなら、線維柱帯を被う高さの周辺虹彩前癒着(PAS)が周辺虹彩前癒着がどの範囲にあるのかを示さないといけない。 所謂PAS ratio です。これが、50%を超えて、70、80となってくると、房水流出抵抗が上がり、眼圧が上がりだすわけで、これこそが原発閉塞隅角緑内障に手術をする根拠だと思います。もし、このPAS ratio が低いのに、眼圧が上がっているなら、所謂combined mechanism を考えないといけない。(開放隅角緑内障の要素が加わるという意味)
狭い隅角の緑内障と閉塞隅角緑内障は違う。いくら狭くても器質的PASがなければ、開放隅角緑内障だし、かなり広いように見えても、PAS ratio が高ければ、閉塞隅角緑内障です。
ロトミーのトリプルで眼圧が下がったこの症例は、いったいどんなタイプの緑内障だったのだろうか。
この写真は、自験例の典型的なプラトー虹彩です。
第353回大阪眼科集談会(その1)_f0088231_16235394.jpg

by takeuchi-ganka | 2006-08-07 16:25 | 学会報告 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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