眼科スタッフ教育講座 近視進行のメカニズムと近視進行抑制治療 その1 (1114)
2019年 01月 17日

近視進行のメカニズムと近視進行抑制治療 森本壮 大阪大
- 疫学
- 近視進行メカニズム
- 近視進行抑制治療
近視は、屈折近視と軸性近視に分類される。強度近視-6D以上、最強度近視-10D以上・・・。 -8D以上の近視に病的近視が多くなる。病的近視とは網膜病変の為に矯正視力不良。この近視が一番の問題。
生活環境は、時代の変遷とともに変化して(スマホ・パソコンの普及)、近視になりやすい環境になっている。世界的にも、近視人口は爆発的に増加している。特にアジアの国々では、1950年代20%程度だった近視が,現在80%程度に。Myopiaboom! https://www.nature.com/news/the-myopia-boom-1.17120
アジアだけではなく、世界中でも起きている。予測では、30年後世界人口の50%が近視(2倍に)、強度近視も10%(10倍)に。これによって経済的生産性損失・近視矯正による損失は莫大なものに。
日本でも、当然近視人口は増加している。多治見スタデイ(近視41.8、高度近視5.5)でも久山町スタデイ(37.7、3.6)でも明らかに。また、近視発症の低年齢化も。台湾で、1983年に11歳と言われていたが、2000(年には8歳。シンガポールでは7歳で18%が-6D以上!
強度近視のリスクとは。軸性近視では網膜が伸展され限界を超えると萎縮して、緑内障・黄斑変性・網膜剥離のリスク大に。強度近視は、日本の失明原因の4位(2005年)。
眼底写真:Tessellated(豹紋状),peripapillary diffuse chorioretinal atrophy(PDCA), Laquercracks, Pachy Atrophy, Myopic CNV, Macular Atrophy

緑内障発症の危険因子でもある。PDCAが関与。-6D以上になると、10~15%⇒34~39%へと飛躍的に増加する。近視性網脈絡膜萎縮、近視性視神経症以外にも、固定内斜視(Heayeye syndrome: HES)。眼軸が長すぎると、筋円錐の上直筋・外直筋の間に脱臼してしまうことも。
病的近視による重大な眼合併症をへらす為にも、近視進行抑制治療が必要となる。眼窩容積の発育(増大):3歳と7-12歳で大きくなっている。この7-12歳の時にきっかけがあると近視へと?この時期が問題?6-7歳で近視になり始める?高度近視のリスクも・・
近視の発症・進行の要因
1,遺伝因子:両親との近視でない小児との比較。片親が近視の小児は2倍、両親が近視の小児は5.7倍近視になりやすい。
2,環境因子:促進要因:過度の近業作業、都市部での生活、高いIQ、学歴、抑制要因:屋外活動時間(1日1時間長いと13%減少)
※近視感受性遺伝子も見つかっている。ゲノム解析が進んでいて、GWASで多数報告されている。将来は、簡単に血液検査で、近視になりやすさを簡単に調べる事ができて、やりやすかったら、精力的治療を?
※屋外活動(抑制要因) vs 近業時間(促進要因)。意外と前者の関与が大きい。
※遺伝要因―環境要因:両親が近視でも屋外活動が多くなると、近視進行はある程度抑えられる。
※屋外活動は意外と大きな要素らしい。
近視発症メカニズム
屈折説(俗説):近業が原因の過緊張(毛様筋)がきっかけで近視になる・・・?
この説に基づく治療として
- 望遠訓練(D7000:http://www.woc.co.jp/product/d7000.html )
- 超音波治療(フタワソニック http://home.h05.itscom.net/futawa/futawa_03_fsonic_201202.html )
- ミドリンM点眼
- 低矯正眼鏡
・・などが現在でも行われている。屈折説には科学的根拠が乏しい(ない)。
※ミドリンM:仮性近視と診断して、点眼治療するクリニックが今でもかなり存在している。
※低矯正眼鏡信仰?実は近視進行を早めている(軽度近視の未矯正も同じ)。
科学的根拠のある説明 (どちらも遠視性デフォーカスだが・・)
1,調節ラグ説(中心網膜において)
近業時の調節ラグ(調節不足)が長時間持続すると、(網膜像のボケを解消するため)眼軸長延長⇒近視化
2,軸外収差説(周辺部網膜において)
近視眼を眼鏡で矯正すると、中心網膜にはピントがあうが、周辺部網膜では網膜後方に焦点がくる(遠視性デフォーカス)。これが眼軸延長の引き金に。サルの子供の中心網膜を光凝固しておいても(調節ラグが生じない)、眼軸延長が生じた。