大阪眼疾患セミナー その1 (1116)
2019年 01月 23日

大阪眼疾患セミナー
1,緑内障診療ガイドライン第4版改訂のポイント 近畿大 野本裕貴
03年に最初のガイドラインが出て、06年・12年と改訂され今回が第4版。Minds 『EBM普及推進事業Minds(マインズ)は、厚生労働省の委託を受けて、公益財団法人日本医療機能評価機構が運営する事業』 『Minds診療ガイドライン作成マニュアル』を参考として、国際的に標準的な方法となった「エビデンスに基づく医療」の考え方を重視して作られたのが、第4版のガイドラインのようです。したがって、『本ガイドライン中に言及されたエビデンスに関して、以下の「推奨の強さ」と「エビデンスの強さ」を提示してある。』
【推奨の強さ】
- 強く推奨する
- 弱く推奨する(提案する)
【エビデンスの強さ】
- A(強):効果の推定値に強く確信がある
- B(中):効果の推定値に中程度の確信がある
- C(弱):効果の推定値に対する確信は限定的である
- D(とても弱い):効果推定値がほとんど確信できない
※例えば、レーザー虹彩切開術のレーザー設定は2C。つまりガイドラインにかかれている条件には、さほど強い根拠はない?術後管理は2D。つまり信用しなくていい?客観的ではあるのだろうが、頼りにしていいのか悪いのか?
主な変更点
- 小児緑内障(childhood glaucoma)の分類と診断基準を新たに設けた.
- 新しい点眼薬(Rho キナーゼ阻害薬,配合点眼薬)を追記.
- SLTやMIGS,新しいインプラント手術などを追記.
- Preperimetric glaucoma の訳語として,「前視野緑内障」 の名称を追記.
- 原発閉塞隅角緑内障における水晶体摘出術の意義と注意点をフローチャートと本文に追記.
- 緑内障の病型別治療については,代表的な病型に関して,従来よりも具体的な記載を加えた.
- 眼底三次元画像解析装置,特に光干渉断層計を用いた緑内障診断の意義に関する記載を加えた
第4章 緑内障の治療総論 緑内障治療の原則
1,治療の目的は患者の視覚の質(quality of vision) と生活の質(qualityof life)の維持 2,最も確実な治療法は眼圧下降 3,治療できる原因があれば原因治療 4,早期発見が大切 5,必要最小限の薬剤で最大の効果 6,薬物,レーザー,手術から選択
7,個別化治療の選択 8,進行速度の減速 9,危険因子の評価
7・8・9が新しく追加された項目。
7,『治療に際しては,眼圧レベル,眼底変化と視野障害の程度,治療による効果,患者のQOL,余命,危険因子の有無などを考慮して選択する(1A)』
9,リスクファクターとして記載されているものは、
- 高眼圧:ベースライン眼圧が高い,経過中の平均眼圧が高い,眼圧変動が大きい・高齢
- 家族歴
- 陥凹乳頭径比(cup-to-disc ratio:C/D比)が大きい,視神経リム面積が小さい
- 乳頭出血
- 乳頭周囲脈絡網膜萎縮(parapapillary atrophy:PPA) β域が大きい
- 角膜厚が薄い
- 角膜ヒステレシスが低い
- 眼灌流圧が低い
- 拡張期・収縮期血圧が低い
- 2 型糖尿病
- 落屑症候群
- 薬物アドヒアランスが不良
アドヒアランス
『アドヒアランスは医師とともに患者も治療方法の決定過程に参加したうえで,その治療方法を自ら実行することを指すものと定義される.』 つまり、客観的状況を患者さんに説明して、治療選択肢も患者さんに提示して、患者さんにも参加してもらいながら、治療方法を決定し、点眼治療を選択したなら、点眼治療を実行してもらうのだが、これって、若干絵に書いた餅的・・・。頭痛があって、薬を飲めば頭痛が治る事がわかっていると、多くの患者さんは薬を飲むだろうが、この超慢性疾患においては、眼圧を下げると5年後10年後の視野データの悪化が抑制されると医師が力説しても、点眼したからと言って、自覚的には何が変わる訳でもなく、むしろ充血したり、睫毛が伸びたり、眼が落ち窪んだり、ゴロゴロしたり・霞んだり・・・。医師の「眼圧は少し下がっているね・・、視野はあまり悪くなってないです・・OCTデータもそれほど変わりません・・・」という言葉だけを便りに、患者さんは点眼のモチベーションを上げる必要がある訳で、点眼の継続に大きなハードルがあることは間違いない。高いアドヒアランスが期待できる患者さんは決して多くない。それでも、我々は患者さんに点眼の必要性を理解してもらう努力を続け、患者さんに毎日欠かさず点眼する確率を上げることが重要なことは間違いない。患者さんが見えにくいと感じた時は、末期的状況で、それから頑張っても(頑張らないよりずっといいのだが)、その進行を止められない事が多いのだから。この点においても、目薬は、点眼回数が少なくて、さし易くて、さし心地が良くて、副作用がなく、値段も安い点眼がベストだろうが、現実は甘くない・・?

それにしても、若い眼科医は少し可愛そうかも。私の場合、30年以上前、緑内障点眼が3種類しかなかった時代から治療に関わり、少しずつ増えて現在の状況になったので、新薬が出るたびに、それがどんな薬剤でどんなポジションになるか決める時間的余裕があったので、一応それぞれの点眼のイメージはできているので、数は多いのだが、実はそれほど多いとは感じていないのです。今どきの眼科医は、いきなり多種多様な緑内障点眼に出会ってしまうのだから、困るだろうなあ・・・。
観血的手術
ろ過手術
- 線維柱帯切除術
- チューブシャント手術(プレート(-)):EX-PRESS
- チューブシャント手術(プラート(+)):アーメド・バルベルト
- その他のろ過手術
※海外では以前から様々なシャント手術が行われていたようだが、日本ではなかなか普及しなくて、コンベンショナルなトラベクレクトミーが主流だったのだが、ここにきてEX-PRESSがその座を奪いつつあり、なかなか普及しなかったチューブシャント手術も普及しつつあるようだ。
流出路再建術
- 線維柱帯切開術
- 白内障手術併用眼内ドレーン(istent)
※かつて、天理病院の永田先生が広めたトラベクロトミーしかなかったのだが、最近は、それを古典的ロトミーと呼び、トラベクトーム・カフークや谷戸式フックで前房側から行う術式がメインになりつつあり、今後、効くかどうか怪しいiStentに代表される眼内ドレーンが広がる事が予想される。
※手術に関しては、シャントや眼内ドレーンが記載。眼内ドレーンは、iStentだろうが、『早期ないし中期の開放隅角緑内障患者で白内障を合併している症例が,我が国では適応として認められている(1A).』らしい。1Aなのか・・。適応狭くて、コスパを考えると、ロトミーinternoの方が1Aじゃないのだろうか。この狭い適応を拡大解釈して、iStentを入れまくる不届き者が出てこないことを祈ります。
病型別治療
- NTG:ブリモニジンの視野維持効果(+)?(2B)
- PPGをどうする?危険因子(+)なら治療へ
- 閉塞隅角緑内障の治療として、レーザー虹彩切開術とPEA+IOLが同等の扱いに・・。
- 緑内障は眼圧を下げることで視野進行を遅らせることは確実(UKGTS)。ただ、日本人ではNTGが多く、UKGTSより眼圧低いケースが多い。CNGTSではNTGでも低くすればOK。LoGTSでは、ブリモニジンに視野維持効果(+)。
※このブリモニジンの視野維持効果に期待を寄せる医師は多いようで(私も・・)、売れているらしい。PPGというけれど、通常の視野検査で明瞭な異常が検出されないだけで、他の所見が緑内障なら、治療しない・・・という選択肢はチョイスしにくいなあ。


