2019年 04月 02日
第5回KCS その1 (1136) 角膜の勉強
第5回KCS
Kansai Medical University Cornea Seminar
1,重症角膜真菌症の経過 関西医大総合医療センター 松山育夫
角膜真菌症は、珍しくて診断がつきにくい事も多い。特徴的所見:所見のわりに流涙・眼脂少ない。主病巣と上皮欠損の大きさの比率が、細菌感染と異なり、上皮欠損の大きさが比較的小さい事が多い。酵母菌と糸状菌で大きく異なる。怖いのは糸状菌。酵母菌⇒進行緩徐、炎症所見乏しい。高齢・DM・局所ステロイド・免疫不全・・・などが背景。カンジダが殆ど。境界鮮明・円形でブ菌様・・。糸状菌⇒hyphate ulcer(白色・灰白色の境界不鮮明が病巣)。強い炎症、実質破壊前に前房内に波及(endothelial plaque)。ステロイド点眼禁忌。土壌・植物の外傷が契機。
症例1:65歳女性。続発緑内障でステロイドと緑内障点眼で加療中。炎症悪化?ステロイド強化すると充血悪化。角膜潰瘍・浸潤・前房蓄膿。典型的な酵母菌感染。フルコナゾールで治癒。
症例2;69歳男性。早期の真菌感染症例。充血・流涙で眼科へ行って、境界不鮮明な浸潤と充血あり真菌感染疑い紹介。ピマリシンとレボフロで治療開始。ちょっと良くなったけど、娘病巣出現。その後掻爬・点眼継続して治癒。2回目の塗抹で、ファンギソーラ染色で菌糸の一部が見つかり、糸状菌らしい。
症例3:75歳男性。ちょっと悲惨な症例。基礎疾患あり(ハンセン氏病様顔貌、閉瞼困難?)。唯一眼に角膜潰瘍。眼痛・充血・視力低下あったが、年末発症なので、我慢してしまい、初診1月7日。近医でレボフロとフルメトロン処方。野江病院経由で大学へ。毛様充血・角膜浮腫・上皮欠損・実質浸潤・実質融解・前房蓄膿・・・肺炎球菌感染?(※この時点で、私的には諦めそうな感じ)治療に反応しないので、糸状菌感染を疑い治療開始。ピマリシン・ミコナゾール入れた後、ペニシリウム検出されたので、ブイフェンド投与。実質融解して、虹彩膨隆してきた。保存強角膜移植したが、視力改善しない。前房内に真菌病巣再燃。・・・・・・最終的に眼球摘出。
- 真菌は基本的に多剤耐性と考えておいたほうがいい。
- 市販薬としては、ピマリシンしかないので(細胞毒性強い)、基本自家調整薬が必要。
- 塗抹・培養が必要(未治療で)
- 糸状菌感染は早期であっても治療困難な事あり。
※真菌検出率は低いが、立派な病巣で塗抹にして、何も見つからない時は真菌も疑え・・と。細菌なら何も見つからないことはありえない・・・らしい。
※真菌感染を疑ったら、何もしないですぐに角膜外来へ紹介しろ・・と言われるが、緊急に外来受診をすすめるのに、角膜外来は紹介できないので、通常一般外来だし、外来表みても、誰が角膜の専門家なのかわからない、頻度的には角膜浸潤・上皮欠損があっても、真菌感染でないことは圧倒的に多く、本当に困って送るのは、年に1回もない。それでも、一応常に真菌感染も念頭に置きながら、なるべくステロイドは使わないようにして、抗菌剤で経過を見つつ、ちょっと経過が怪しいなと感じた時に専門家に送るしかないのだろう。公開されている外来表に専門が何か書いといてくれると紹介しやすいのですがね。特に若い先生は何が専門か全くわからないし・・。