2019年 11月 12日
第60回大阪眼科手術の会 その3 (1184)
MIGSのトラブルと対処法
福井県済生会病院 新田耕治
※iStentって、線維柱帯に小さな孔を開けるだけなので、要するにロトミーの切開範囲の非常に短くなったような手技。従って、基本的にロトミーの成績以下と予想されます。それ以外の新しい流出路再建型のMIGSは、全て線維柱帯を切開する手術だが、切開範囲の広い順にsLOT>谷戸式>カフーク/トラベクトーム>(昔のロトミー)>>iStent・・でしょうか。だから眼圧に関しては、あまり期待しないほうがいい手術では。コスパ最低?何かするなら、谷戸式が一番かも・・
iStent挿入時のトラブルシューティング
ビスコート塗布してその上に Hill Surgical Gonioprismを置いて手術されているようです。最初はシュレム管からの出血で見えなくなったり、粘弾性物質で出血を移動させたり。サイドポートから出血が邪魔・前房内エアバブルが邪魔。角膜にシワがよるので、粘弾性物質で眼圧上げてHill(Surgical Gonioprism)をのせる。シュレム管外壁を押してしまっていて前へ進まない。すくう感じで・・。色素が少ないと異なる部位(間違ってシュワルベに・・)に挿そうとしたことも。シュレム管断面は様々、高眼圧だと楕円で狭いかも。押し過ぎず、すくう感じで。 iStent リリース時の問題、外れたらつかみ直して、そーっと眼外へだし、一度リセットしなおして、再挿入(出血すると見えないので粘弾性物質入れて・・)。出血・粘弾性物質の吸引はI/Aで(吸引圧半分ぐらいでそーっと)
成績:眼圧は16.5⇒12.8(6M)、点眼数減少(チョット良すぎる感じ。6ヶ月だからかな)。合併症は少ない、出血も少ない。時にPAS形成(シュノーケルをおおう虹彩)するがヤグで対応。
有効性の予想(本当に予想可能なのだろうか・・?):iStent入れた付近の上強膜静脈のチェックでグレード2なら有効と予想(グレード2:明らかな層流)。(でも、これってステント入れた後の話だから、予想じゃないと思うけど、ステントを通して房水流量が増えると、集合管経由して上強膜静脈へ流れる房水が増えて、血液の流れと房水の流れが混じり合わない層流が見えるってこと?)。
シュノーケルに虹彩嵌頓⇒ヤグで対応(嵌頓するって事は水が流れているってことでは・・)。何度も嵌頓するようだと摘出することも。iStent鉗子を常備、抜去に使える。iStentを外して再挿入。(※ロトミー術後のようにピロカルピンを使えばいいような気もする・・)
iStentの次の一手:①点眼強化、②濾過手術(iStent抜去してExPRESS)(※①と②の間に、iStent追加とか谷戸・カフーク・トラベクトームなどで、より広い範囲の線維柱帯切開というのはないのだろうか・・)
ExPRESS
こちらの演者は、積極的に使っていて、濾過手術としては、レクトミーよりもこちらがファーストチョイス。核白内障おこしにくい(侵襲少ないから?)。50歳台までは、単独手術可能。60歳以上ならトリプルで?
手技は簡単だけど、術後管理が非常に大切。1週間入院がルーチンで、その間の目標眼圧6-9mmHg。10mmHg以上ならLSL。LSLは1日1本だけ。4mmHg以下でも前房深いなら経過観察で。過剰濾過(前房消失・高度脈絡膜剥離(←広角眼底カメラでフォローすると便利))なら再手術(direct sutureしていない)。自己マッサージ積極的に。特に退院後しばらくは要注意(1週間から数ヶ月)。この間に濾過量落ちてくるので。濾過胞限局化⇒再手術(ニードリングしていない)。
成績だが、NTGが良かった。日本のExPRESSは内径が小さいのもだけで、濾過量が少ないので、POAGよりNTGが成績良かったのかも。合併症は全ての項目でレクトミーより少ない。追加手術(濾過胞再建・ExPress抜去してレクトミー・過剰濾過対策とか・・)は結構多い。
※ExPress抜去術を詳細に紹介