睫毛乱生:眼科医が見ているものシリーズ その6 (1189)
2020年 01月 06日
このマニアック過ぎるブログは、もともと学会行っても3日で忘れてしまうアホな自分のために、医療情報の備忘録から始まったもので、一般の患者さんにとってはあまり役に立たない事が多く、今頃になってそれを若干修正しようと思っています。ありふれた疾患の解説を試みようと思いますが、実はこれが難しいのですが・・。難しい理由は、建前に終始すると簡単だけど味気ないし、本音を書くのは若干ためらわれる微妙な部分もあるもので・・・。さて・・
以前(もう9年ほど前)身近な疾患に関する解説を順番に書いてみようと思ったのだが、5回で終了してしまった。以下5項目につなげて、『その6』から
1. 麦粒腫(ものもらい・めばちこ):https://takeganka.exblog.jp/15280254/
2. 霰粒腫:https://takeganka.exblog.jp/15336993/
3. マイボーム腺機能不全:https://takeganka.exblog.jp/15382518/
4. ウイルス性結膜炎:https://takeganka.exblog.jp/15808323/
5. 細菌性結膜炎:https://takeganka.exblog.jp/15849355/
眼科医が見ているものシリーズ その6:睫毛乱生

似たような疾患に、睫毛内反・眼瞼内反症があるが、ここでは、睫毛乱生について書くことにする。こんなテーマに真剣に取り組むのは初めてかもしれない^^;
睫毛(まつげ)の生える方向が内側を向けば、角膜・結膜を機械的に障害して、痛み・流涙・視力障害などの原因となり、高齢者に多い。厳密には、睫毛の一部が眼表面に向かって生える本来の『睫毛乱生』と、マイボーム腺開口部付近から睫毛が生える『睫毛重生』(先天異常?)があるらしいが、臨床上は、あまり区別することなく、角膜表面に向かって生えていて、角膜結膜上皮障害を引き起こすようなものは『睫毛乱生』と呼んでいる。一般に『さかまつげ』と呼ばれるものの代表かな。
対処方法は、基本的に強い不快感や上皮障害が発生していたら、抜去するのがほとんどなのだが、その重症度と手術の難易度を天秤にかけて、重症度が高度であり、患者さんの希望が強ければ、当然手術適応となる。以前は睫毛電気分解しか方法がなくて(知らなかっただけかも)、これが麻酔が結構痛くて再発も多かった印象があり、開業してからほとんどすることがなくなってしまった。ただ、我々が知らない間に、眼形成再建手術が進化していて、睫毛乱生にも幾つかの観血的手術方法があるようです。
睫毛電気分解以外に、①U字縫合(Hotzの変法のようなもの) ②部分切除 ③眼瞼分割法による睫毛列切除などがあるらしいが、どれも一長一短ありそうで、今抱えている患者さんに簡単にお勧めできる手技はあまり多くないかもしれない。