2020年 01月 11日
睫毛内反・眼瞼内反:眼科医が見ているものシリーズ その7 (1190)

前回、睫毛乱生・睫毛重生について書きましたが、今回は睫毛内反と眼瞼内反で、まつげが眼表面にあたるという意味で、その親戚のような疾患です。いわゆる『逆まつげ』です。睫毛内反は、小児や若年者にみられる先天性の疾患で、眼瞼内反は、壮年期以降にみられる退行性変性による疾患です。

1,睫毛内反
日本人小児内反症の98%がこれらしい・・。手術は、先天的にAnterior LER(これはLERの皮膚穿通枝のこと?)が脆弱なのが原因なのでこれを強化するのが目的。通糸法と切開するHotz法があるが、前者は再発が20%以上、後者は4-9%なので、後者を選択すべき。 いつも悩む事ですが、手術のタイミング。0歳で40%以上の有病率が、10歳越えると2%程度に。つまり10歳以上で睫毛内反があれば、自然治癒は期待できないので、手術に踏み切るべきだと・・。よほど重症でなければ、10歳まで待てばいいようです。ただ、睫毛内反があると、1D以上の乱視が多く(50%以上)あり、弱視もありうる(9%?)。こうなるとちょっと話が複雑ですが・・
※LER ( LowEyelid Retractors ) :下眼瞼牽引筋腱膜
※前葉(皮膚+眼輪筋)>後葉(瞼板+結膜)
2,眼瞼内反
睫毛内反は、先天性の疾患だが、眼瞼内反は加齢に伴う退行性変化で、中高年の疾患。
1) 垂直方向の緩み ⇐ LER弛緩 : lid retraction testやsnap back testで確認
2) 水平方向の緩み ⇐ 外嘴・内嘴靭帯弛緩 : pinch test 8mm以上で陽性
3) 眼輪筋の乗り上げ ⇐ 前葉・後葉の接着力低下:瞬目テストで確認

①Lateral tarsal strip(LTS):手技が難しい。
②Jones法:LER短縮に重点。再発10%程度。下眼瞼を瞼縁に沿って切開後、LERを露出し、瞼板から2~8mmの位置と瞼板下縁を3糸縫着する術式である。眼瞼筋膜(capsulo-palpebral fascia:CPF)を短縮し、後部LERのtensionを強くするのが狙い
③Jones法変法(柿崎法):LER前転。再発2%と良好。現在のスタンダード。LERは前部と後部に分かれ、平滑筋成分を含んだ後部が牽引の主体。LERの後部を同定し、LER後部→瞼板下縁→眼輪筋を縫着。
※通常②か③に外嘴・内嘴靭帯のタッキングや眼輪筋の短縮などが組み合わされるらしい・・
※まだ若手の医師だった時期(もう2-30年前だが)、睫毛内反や眼瞼内反の手術を行い、再発した経験がある。今は完全に形成外科の先生にお任せしています。