第434回大阪眼科集談会 その2 (1196) 特別講演

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特別講演

加齢黄斑変性の最新知見 本田茂 大阪市大

※短期間に2度目の聴講だから、少しは理解しやすいか・・・と思いきや難解理解困難・・^^; それでも2回目なので、若干洗脳されてきた気がする。①典型的加齢黄斑変性と②CSCPNVの疾患発生の分子生物学メカニズムが大きくことなる2つの潮流がある?①の流れは従来のドルーゼンを経由するパターンで、②の流れはパキコロイドを経由するパターン。①+②もあり?

症例:46歳女性。ドルーゼン(-)SRD(+)Pachychoroid + PEDOCT-ACNV(+)。抗VEGF数回したが無効、PDT併用してSRD(-)に。PEDも小さくなり、Pachychoroidも減少。たった1PDTしただけで・・

3種類のドルーゼン

1. soft drusen   ⇒通常の加齢黄斑変性

2. pseudodrusen ⇒地図状萎縮・RAP

3. pachydrusen  ⇒Pachychorod spectrum disease?

https://www.semanticscholar.org/paper/DISEASE-EXPRESSION-IN-NONEXUDATIVE-AGE-RELATED-WITH-Spaide/2c7ca4fe1db6a227516c0653558cd9ed237cdbac


1,加齢黄斑変性の病態解明第434回大阪眼科集談会 その2 (1196)   特別講演_f0088231_14285699.jpg

この病態は、ドルーゼン・慢性炎症・酸化ストレス・ブルフ膜障害・脈絡膜虚血・網膜色素上皮萎縮・CNVへと進むのだが、何故そうなるのか?

1. 加齢黄斑変性の検体の解析

2. 実験動物モデル(レーザー誘導脈絡膜新生血管)

3. 加齢黄斑変性患者さんの遺伝子解析(リスクアレルを探してくる)

ここでは遺伝子解析の話を。加齢黄斑変性と遺伝子多型に関する論文は、2005年から急増し、2013年にピーク。CFH遺伝子(2005年)HTRA12006年)が見つかり、一気に研究が進んだ。この2つは100%加齢黄斑変性に関わっている。 CFHは本来炎症にブレーキをかける役割。リスクアレル(+)だと、そのブレーキ減弱⇒慢性炎症⇒CNVへ?402H62Vの両方のリスク型があるとドルーゼン増えるtwo hit theory。アジア人は402Hが少ない、黒人は62Vが少ない。

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ARMS2 / HTRA1

10番遺伝子の近い位置にあり、異常は両方同時に起こりやすい。リスクアレルは、白人は20%、アジア人は40%以上。ヘテロで6-7倍、ホモで10倍以上の加齢黄斑変性発症リスクあり。アジア人の加齢黄斑変性に深く関わっている。

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l ARMS2はヒト・サルのみ存在。酸素ストレスに関与、細胞外基質形成に関与。ARMS2トランスジェニックマウス⇒何も生じない

l HTRA1⇒プロテアーゼで、TSP1抑制(CNVに関与)。HTRA1トランスジェニックマウス⇒CNV発生、ブルフ膜破壊、ドルーゼン(-) = 脈絡膜血管壁が薄い、ブルフ膜破壊。エラスチン層を破壊。バリア破綻・・・これってポリープ病巣の発生。つまりHTRA1が過剰だとポリープが発生。(ただHTRA1阻害薬を使えば、ポリープ発生を減少できるが、ポリープの治療には使えなかった。)

※加齢黄斑変性(722人の調査):CFH異常があるヒトは、早期加齢黄斑変性(ドルーゼン多数)多いが、(後期)加齢黄斑変性にならない。ARMS2異常は、早期加齢黄斑変性(ドルーゼン)増加しないが、(後期)加齢黄斑変性になりやすい。(※ARMS2異常のあるヒトは必ずHTRA1異常あり・・と考えていい。) ⇒ARMS2は、ドルーゼン作らず、CNV作る。ドルーゼン経由しないCNVを作る。

典型加齢黄斑変性とPCVARMS2遺伝子多型を調べると、典型加齢黄斑変性の方がリスクアレル高くPCVはやや低い。PCVにも異常血管網の大きいものと小さいものがあり、その特徴は図の如し。Type2PCVPSDに近い?

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脈絡膜血管制御 ①脈絡膜肥厚(pachychoroid) ②脈絡膜血管拡張・透過性亢進 ③通常のドルーゼン(-)、パキドルーゼン(+) ④アジア人多い。

脈絡膜肥厚・血管拡張

⇒メカニカルな障害 ⇒ 網膜色素上皮障害 ⇒SRD(CSC) ⇒CNV(PNV)、ポリープ(PCV)

※脈絡膜血管に関与する因子:CO2、ノルアドレナリン、NOPG、エンドセリン・・・・

GWAS(ゲノムワイド関連解析)で脈絡膜厚⇒CFHVIPR2

(※CFHは本来炎症にブレーキをかける役割)

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このCFHの結合部位にC3bがくっつく場所とADMがくっつく場所がある(このふたつは連携しているらしい)。ADMを活性化できない場合、(炎症起こす)C3bも抑えられず、脈絡膜は厚くならず、慢性炎症・CNV・加齢黄斑変性という流れになり、C3bが抑えられるとADMを活性化できて、ドルーゼンはなくて、脈絡膜血管拡張・網膜色素上皮障害・CSCPNV・・・へ。

機械的ストレスで何故CNVが発生するのか。そこでYAP/TAZ 分子転写共役因子の話に。(※これは臓器の大きさが決めたり、何故腫瘍の大きさは際限がないのか・・・に関わる因子らしい) 血管内乱流や外からの圧迫があると 脱リン酸化が起こり、YAP/TAZ 核内へ移動、転写を促し、CNV発生へ。これはVEGFを介さないCNVで、抗VEGF無効。またYAP/TAZ活性化すると血管内皮増加・平滑筋増加し、血管は成熟してくる(これも抗VEGFの効かない状況)。

※加齢黄斑変性関連疾患というか、CSC/PSD/PCVそして古典的加齢黄斑変性の発生メカニズムには、図のような流れがあり、右側の流れがメインのこともあれば、左側がメインの事も。また両方関与していることもある。

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個別化治療

症例提示54歳のCSCpachychoroid(+)1回の半量PDT pachychoroid1年以上減少。これはベルテポルフィンの薬理作用でYAP/TAZ抑制して血管内皮退縮。 早期にYAP/TAZ不活性化するとNV再発抑制

PCVIVAPDTが効く場合と効かない場合があるが、これはARMS2遺伝子多型が関連。GG/GT/TTの中でGGが脈絡膜厚い・視力いい・治療回数少ない・・(YAP/TAZ不活性化維持しやすい、つまり再発しにくい)。PDTのいい適応

Mol Vis. 2017 Jul 26;23:514-519

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5534487/figure/f1/

まとめ

tAMDは、CFHHTRA1の誤作動が原因で発症。

PSDとtAMDは分子生物学メカニズム異なる。同時発症の可能性もある。

③個別治療の可能性

質疑から

PDTの作用には実は①ベルテポルフィンの薬理作用(YAP/TAZを抑える作用)と②PDTの意図したメカニズムの2つがあるようだ。

※脈絡膜厚の見方:pachyvesselCCを圧迫しているかどうか。そこに小さなPEDがあるかどうか。あれば⇒CNV(これは機械的ストレスが原因だろう)。それとは別に存在するCNV with ドルーゼンは炎症のカスケードが動いている。

※エキサイトブログの投稿が不安定なので、今後ブログの掲載先を変更するかもしれません。

当面の間、もうひとつのサイトへ二重投稿します。

http://shirokitakoen.blogspot.jp/


by takeuchi-ganka | 2020-02-09 14:48 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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