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眼瞼腫脹:眼科医が見ているものシリーズ その9 (1198)

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徐々に眼瞼のネタも残り少なくなってきたが、気になっているのが眼瞼腫脹。眼科には、しばしば『眼が腫れました・・』という主訴で患者さんが来院されます。この時何を考えるのか。系統的に考えるのは教科書的でつまらないのだが、そうしないと見落としてしまうので、若干そんな感じで。まず、基本的に結膜炎がないことを前提で考えてみる。

外傷があれば当然それによるものを考える。出血もあるでしょうし・・・。この場合、我々の関心は眼球にダメージがないかどうかに絞られる。

②全身疾患、特に腎疾患があって、特徴がなく、痛みもなく、慢性経過のびまん性の腫脹なら、それによるものを・・。この場合、初期には顔が腫れぼったい感じで、夕方になると足もむくんでくる。左右対称で、押しても凹みが戻らない。

③触ると痛いなら麦粒腫(涙嚢部が痛ければ涙嚢炎)を考えます。眼科では圧倒的に麦粒腫が多い。これにはマイボーム腺の感染の内麦粒腫と、睫毛の皮脂腺の感染の外麦粒腫がある。眼瞼全体が腫脹することもあるが、感染巣は発赤していたり、膿点が見えたりする。勿論痛みが強いのが特徴。原因となる感染巣が不明瞭で、眼瞼腫脹ばかりが目立つと、診断に苦慮することもある。涙嚢炎は、涙嚢部が発赤・腫脹するので、あまり鑑別に困ることはないかな・・

④頻度的には麦粒腫の次ぐらいに多いのが、虫刺症かも。刺されてすぐ現れる膨疹・紅斑で受診されることは少なくて、刺された後12日して、紅斑・丘疹・水疱が出てくることもあり(遅延型)、この場合、虫刺されが原因の腫れと思わないことも多く、注意が必要。時に、眼があけられないほどの高度の眼瞼腫脹のこともあり、この場合、麦粒腫やあるいは後述する眼窩隔膜前蜂窩織炎との鑑別が問題になりそうですが、ただ感染があると、次元の異なる痛みを伴う筈。眼瞼腫脹:眼科医が見ているものシリーズ その9 (1198)_f0088231_22112791.jpg


⑤全体的に腫脹していて痛いなら眼窩蜂巣織炎を疑う。この場合、眼窩隔壁より前方の皮膚の感染が1眼窩隔膜前蜂窩織炎(眼窩周囲蜂窩織炎)、眼窩隔膜より後方に及べば2眼窩蜂窩織炎と呼ぶらしい。眼窩蜂窩織炎は通常,隣接する副鼻腔(特に蝶形骨洞)の感染から波及するようだが、1)眼窩隔膜前蜂窩織炎は顔面局所または眼瞼の外傷,虫または動物による咬傷,結膜炎,および麦粒腫などの感染病巣の拡大によって生じることが多いようで、眼科医がしばしば経験するのは眼窩隔膜前蜂窩織炎。眼瞼がパンパンに腫れていても、何とか開瞼すると、眼球には異常がない。逆に眼球突出・眼球運動障害・視力障害があれば、眼窩蜂窩織炎で、これは重症かつ緊急の治療が必要。

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⑥突発性血管性浮腫(クインケ浮腫)が眼瞼に生じることもある。まあ眼瞼だけってことはないだろうが。この原因不明の一過性の浮腫をクインケ浮腫(血管性浮腫)と呼ぶが、ちょっと調べると様々な疾患が含まれているようです。C1-INH欠損による遺伝性(HAE)のものと、それ以外の血管性浮腫がある。後者はヒスタミンを介していて、アレルギー性(蕁麻疹を伴う)・ACE阻害薬による・物理的刺激・好酸球性・特発性など。数日で消失して、かゆみを伴わず、限局的、非対称、指で押しても跡が残らない。

⑦アレルギー性接触性皮膚炎:接触性皮膚炎には、刺激性とアレルギー性があるが、眼科においては、散瞳剤によるもの、治療に用いる点眼によるもの、化粧品によるものなどが多い。

まだありそうだがこのへんで・・・


by takeuchi-ganka | 2020-03-14 22:13 | Comments(0)

大阪市旭区にある竹内眼科医院です。開業医も日々勉強。


by takeuchi-ganka
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