
指名講演1「炎症性眼疾患における新規バイオマーカーの創出-古典的検査からオミックス解析まで-」
臼井 嘉彦(東京医大)
MCP-1。炎症性眼疾患で、これが関与しない疾患はないそうで、走化作用だけでなく、非常に多機能な液性因子。ただ、疾患特異性はなく診断には使えない。疾患特異性のあるマーカーは?
18疾患、531検体の前房水を対象に、28種類の液性因子をCBA法にて測定して機械学習(人工知能)で解析。全国調査の結果、眼内リンパ腫の眼内液の『 IL-10/6 > 1』は、細胞診や遺伝子再構成よりも重要らしいが、今回、30例の眼内リンパ腫のIL-10/6 > 1陽性率は80%ほどだった。ただ、28種類の液性因子の組み合わせだと、第1・第2・第3予測(ランダムフォレスト)が86.7、90.0、96.7%と高率。急性網膜壊死でも眼内炎でも、前房水さえ採取すれば、かなり高率で診断予測が可能に。免疫・サイトカインの専門家(毛塚教授)の予測より、遥かに高率に機会学習は予測可能だと(^^)
ぶどう膜炎(三大疾患)の診断(新しいバイオマーカーを求めて・・):①マイクロRNA(miRNA)は? 2565種類のmiRNAを網羅的解析。特徴的なmiRNAよりも、複数のmiRNAを組み合わせることで、AUC 0.9以上となる。②水溶性代謝物(メタボローム)の解析。3大疾患別のプロファイリングが可能。これも複数の代謝物の組み合わせで、AUCが0.9近くになる。③ベーチェットで特異的に変化していた謎の化合物Xの発見?
最難関の眼内リンパ腫:miRNAとIL10との複雑な関係あり。血清miRNAのクラスター解析すると、眼内リンパ腫・ぶどう膜炎・健常人に明確な違いあり。ランダムフォレストで11種類のmiRNAの組み合わせで、AUC0.87と中等度の予測が可能に・・。硝子体液のmiRNAで行うと、より明瞭なクラスター解析結果となり、36種類のmiRNA組み合わせで、AUC0.95に!硝子体の代謝物のクラスター解析も明瞭で、14種類の組み合わせで、AUC0.97に。(希望は、硝子体ではなく血液検査なのだが・・・)
特殊な検査ではなく、一般的な検査について:血液検査・肝機能・腎機能・BS・CRP・赤沈・抗核抗体・リウマチ因子・IgG/IgM/IgA、感染症の検査、ACE、可溶性IL-2レセプターなど・・。これにIL10、IL6などを加えて、クラスター解析。グループA(硝子体IL10低値、血清IgA高値、末梢血WBC少ない)とグループB(硝子体IL10高値、血清IgA低値、末梢血WBC多い)と分かれるが、グループBの生存率が明らかに低い。血清IgAが低いと生命予後低い・・?
雲をつかむような話をここまで聴いて、いっぱいいっぱいだが、ぶどう膜炎・眼内リンパ腫の臨床診断は、典型的で簡単なものもあるだろうが、難しい事が多い。そこで、何とか採血だけで、診断にたどり着くことができないか。非常に多くのマイクロRNAや水溶性代謝物(メタボローム)の中から、いつくかを組み合わせることで、かなり高いレベルの診断予測か可能となるかもしれない・・・・・・
最後に、眼窩リンパ増殖性疾患について。
①粘膜関連リンパ組織(MALT)リンパ腫 ②IgG4関連眼疾患(IgG-ROD)は類似していて、臨床所見も病理所見も類似。でも、①は放射線治療②はステロイドと全く異なる。一般採血項目をクラスター解析して、4グループに分類1)high IgG4, 2)high IgA, 3)lowリンパ球, 4)low WBC ・・・・血清IgG4低下が視力と関連。①と②をマイクロRNAでクラスター解析。組織でも血清でも大きな差があり。11種類のmiRNAの組み合わせで、AUC0.87。血液検査で、①と②が鑑別可能に?代謝物の解析は、組織は明瞭だが、血清はイマイチ。組織代謝物の組み合わせならAUC0.95だが血清だと0.75どまり。組織代謝物を見ると、MALTリンパ腫ではフォスファチジルコリン増加、IgG4関連疾患では多価不飽和脂肪酸増加(ω-6系(炎症増強)ω-3系(炎症抑制))。それぞれの疾患で増加する代謝物の代謝経路の中での位置づけが異なる。マルチオミックス解析して新たなバイオマーカーを見つける^^;
徐々に理解不能領域に。
※ぶどう膜炎の診断に、硝子体を切除して採取した試料で遺伝子検査、抗体測定、サイトカイン測定など行っているが、採血だけで、血液検査だけで、非常に多くの種類のmiRNAや水溶性代謝物(メタボローム)、或いは血液検査項目をクラスター解析して、組み合わせで診断にたどり着ける可能性があるらしい・・・