2006年 08月 20日
後部硝子体剥離
網膜剥離の治療に入る前に、この疾患の引き金となる後部硝子体剥離について、少し説明します。
この図は、例によって、参天製薬のホームページにある眼科イラスト集から拝借しました。

後部硝子体剥離について
硝子体というのは、教科書(眼科診療プラックティス6(2006):3.硝子体の解剖)によれば、『約4mlの透明なゲル状組織で、眼球容積の80%を占める。コラーゲン線維の3次元構造に高分子ヒアルロン酸が絡みついて大量の水を保持している。・・・』
この硝子体ですが、子供の頃は、作りたてのゼリーのように、結構腰があり、プリンプリンしていて、上図の下半分のように、硝子体と眼球は同じ大きさです。加齢に伴い、シャブシャブの状態に変化していき(硝子体の液化といいます。水と線維成分に分離します。)、硝子体骨格は縮み、ついには、上図の上半分のように、網膜と離れることになります。この硝子体の後部が網膜と離れる現象を後部硝子体剥離といい、これが、無事すんなりと起れば、網膜剥離は発生しません。このときに、網膜と硝子体の一部に強い癒着があり(しばしばそれは格子状変性)、破れてしまうと(網膜裂孔の形成)、網膜剥離が発生し、放置すれば、網膜は全部剥がれてしまいます。
不幸にして網膜が破れると、裂け目を通って、色素が舞います。

これがあれば、要注意、非常に高い確率で網膜は破れています。
破れた網膜(網膜裂孔)とは、こんな状態です。

次の写真は、格子状変性の縁が破けたところです。


この段階で、発見されたら、網膜レーザー光凝固術のみで、治療可能で、網膜剥離への進行は阻止できるのです。