2020年 07月 26日
周辺部角膜浸潤 (1223)

カタル性角膜浸潤とも呼ばれるが、一般開業医がしばしば遭遇する疾患の一つ。
本論に入る前に、なんでカタル性と呼ぶのだろう。カタルというのは、古い概念で、ラテン語のcatarrhusから来ているようですが、カタル性というのは、通常炎症性疾患で、粘膜に損傷はなくて、漿液性の滲出が著明な場合に使うようです。ただ、カタル性結膜炎なら理解できるけど、カタル性角膜浸潤は本当にカタルなのだろうか・・・。誰か教えて下さい。



本論に入りますが、この疾患を感染性角膜疾患と混同していたら、眼科開業医はつとまらない^^; 通常、角膜と眼瞼縁が接触する角膜の2時・4時・8時10時の角膜周辺部に好発する。ただ角膜輪部と病変の間には必ず透明な部分が存在する。教科書的には、眼瞼縁に存在する主としてブドウ球菌そのもの或いは菌体外毒素(抗原)と角膜輪部血管由来の抗体が複合体が形成し、それにより炎症が惹起される・・・と説明されています。だからこそ、2時・4時・8時・10時の角膜周辺部の眼瞼縁が接する場所で、浸潤病巣が好発するのでしょう。浸潤病巣全体ではなく、一部に上皮障害(フルオで染まる)を伴うことが多い。輪部血管由来の抗体と複合物が作られた局所でのみ炎症が生じるので、輪部と病巣の間には、必ず透明なスペースが存在し、炎症は局所にとどまる。結構強い痛みを伴うので、発症後すぐに受診されることが多い。診断に間違いなければ、治療は簡単で、通常ステロイド点眼と抗菌剤を出しておけば、翌日には痛みは消えて、1週間も経過すれば、僅かな混濁を残して治癒することが殆ど。
問題は、①周辺部角膜浸潤に似ているが感染の場合と、②何度も再発する場合だろうか。
①のよく似た病巣が感染病巣である場合は大きな問題となる。ただ十中八九というか、経験では百中九九ぐらいは、感染ではないのだが、教科書的には、緑膿菌による病巣で、非常に類似した所見を呈するケースが紹介されていて、写真を見る限り見分けがつきにくい。グラム陽性菌感染の初期も類似した所見ではないだろうか・・。周辺部角膜浸潤は何度も再発する疾患で、初回でなければ、以前の病巣の名残(淡い瘢痕)がいつくか見られことがあり、問診でもそのような既往があれば、感染ではないと確信できるので、最初からステロイドを入れるのだが、そうでなければ、最初は抗菌剤のみで様子を見ざるをえない。ただ、この場合しばらく痛みが続くので、患者受けはイマイチ・・^^; ただ、少しでも感染が疑われたら、ステロイドを入れずに抗菌剤のみで経過をみる必要がある。
②の何度も再発する場合だが、その都度の対応は、診断に迷うことはないので、ステロイドと抗菌剤でいいのだが、再発を少なくするか無くすることは難しい。本当に何度も何度も再発するケースがある。抗原抗体複合体が炎症を惹起するので、ステロイドを入れ続ければいいのかもしれないが、見かけ上治癒している状態で、いつまでもステロイドを継続しにくいので中止せざるを得ず、中止すると再発することが多い。抗原の供給を止めればいいので、アイシャンプーで眼瞼縁をきれいにすることが正攻法だろうが、これもそう上手くはいかない。時に抗菌剤を長めに使うこともあるが、いつまでも使う訳にいかないし、中止すれば元の木阿弥かも。ただ、あまり効果的とは思えない対策を色々している内に、再発しなくなることが殆どで、どれが効いたのか・・・・・。個人的には、アイシャンプーが一番お勧めだと思ってます。